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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

編者の一言

1.アレルギーからみた正しい治療のあり方

花粉症を含めてすべてのアレルギー疾患発現の根底には抗原による生体の感作があり、治療を考えるに当ってこのことを十分に理解する必要がある。

生体が感作性物質(アレルギー誘発物質、抗原)に曝露を繰返していると、免疫応答として体内にこれに対応する抗体を生ずるようになり、抗体は1つあるいは複数の臓器に存在する肥満細胞(マスト細胞ともいう)の表面に固着してアレルギー発症の準備が完了する。このような状態をわれわれは感作と呼んでいる。一度感作が成立した生体に同一の抗原が再び作用すると、新たに侵入した抗原と上記肥満細胞に固着した抗体とが反応(抗原抗体反応)を起し、肥満細胞から顆粒が出され、それに伴って種々の化学物質が遊離し、これらが周囲組織に作用してアレルギー反応を惹起する。したがって感作されていない人はたとえ抗原に曝されても全くアレルギー症状が惹起されることはないし、アレルギー患者でも原因となる抗原は1人1人違うので、たとえある抗原には感作され敏感に反応を起す人でも他の抗原には全く無反応であるというのは日常茶飯事である。例えばそばアレルギーがあってそばに対しては重篤な反応を起す人でもハウスダストに感作されていなければこれに曝露されてもアレルギー反応は皆無である。

しかしある抗原に感作されアレルギー症状を起す人は抗体を作りやすい(抗体産生能の亢進)ため、日常生活環境内に存在する別の感作性物質に曝露を繰返していると、これに対応する抗体も作られるようになって重複感作が成立することがある。例えばハウスダストで喘息を起す人が杉花粉に感作されることは屡々みられる。もう1点は臓器における抗体の固着する肥満細胞の分布が1人1人異なるためにアレルギー症状の発現する臓器に差異を生ずる。同じハウスダストによるアレルギーであっても気管‐気管支に症状を起し喘息となるかと思えば、鼻粘膜に作用して鼻アレルギーが主症状となる人もあるし、両方が同時に惹起されることも少なくない。花粉症においても花粉が付着しやすい鼻粘膜、結膜あるいは皮膚症状の頻度は高くても、多量に吸入されると喘息発症がみられる。筆者1)自身杉林が多く、多量に杉花粉の飛散する大分に赴任して6年目から杉花粉症に罹り、古稀を過ぎた現在も春杉花粉飛散期にきまって症状が顕われ、本症が決して若者に限るものでないことを体験している。その初年度、筆者52歳の時職業アレルギー調査のため大分県内椎茸栽培地を巡回中、偶々開花最盛期の杉林を通り、依頼講演の際使用する目的でカメラを構え、同道知人に石を投げて貰って花粉飛散状況をスライド写真撮影したのであるが、直後鼻・結膜症状、そして喘息症状を来し、下山して約2時間でやっと軽快した。その後定年を迎え移住した埼玉県でも毎年杉花粉飛散季節になると決って鼻・結膜そして皮膚症状に悩まされている。しかし杉花粉による喘息症状はその後1度も経験しないことから、通常空中に飛散する程度の杉花粉曝露では症状は鼻・結膜あるいは皮膚に限られそれ程重篤にはならないとしても、濃厚曝露があれば下気道症状をも来たしうると考えるべきである。したがって杉花粉症もそばアレルギーや職業アレルギーなどと同様にやはり全身のアレルギーとして把握することが必要である。そして最近発症の低年齢化が指摘されることも考慮して、本症を従来のように耳鼻咽喉科あるいは眼科の診療対象として簡単な検査と対症療法のみを行うのではなく、1996年よりわが国では医療法改正が行われ、診療科として“アレルギー科”が認められた2)ので、これを標榜する施設で、アレルギー専攻担当医によってアレルギー全般の視点から花粉症の診断、そして原因抗原をめぐる対応を軸に治療することが正しいあり方と考える。

さてアレルギー反応を起す原因抗原はわれわれの生活環境内に多数存在するが、これによりもたらされる反応は決して均一ではなく幾つかの型があり、パターンがある。クームスら3)は最初に述べた肥満細胞に固着する抗体(感作抗体、レアギンとも呼ばれるが、5種の免疫グロブリンA、G、D、M、EのうちIgEに属すると考えられるのでIgE抗体ともいう)が主役を演ずる反応は抗原が作用して15〜30分といった短時間内に惹起されるので即時型(レアギン型、IgE型)アレルギーとして一括し、I型に分類した。気管支喘息、鼻アレルギー、結膜アレルギー、消化管アレルギー、蕁麻疹、アナフィラキシーショックなどの大部分はこのような反応と考えられる。

しかしこのほかにも抗原と血液中の免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンM(IgM)および補体(血液中の酵素系)が一緒になって複合体として作用しアレルギー反応を起す場合があり、抗原曝露後4〜5時間で症状が顕われ、7〜8時間でピークに達する比較的徐々な経過をとる。クームスら3)の・型アレルギーはこのような反応で、真菌や有機粉塵などによる気管支喘息、あるいは過敏性肺(臓)炎と称するアレルギー性肺炎などがこれに属する。

一方リンパ球のうち胸腺由来のTリンパ球(T細胞ともいう)が抗原に感作され、再び同じ抗原と反応することによりTリンパ球からリンフォカインが放出され細胞浸潤を来し、肉芽腫様の病変を起す・型アレルギー反応もあり、この場合は抗原曝露から24〜48時間後にピークに達するので遅延型またはツベルクリン様反応と称することもある。クロームによるセメント喘息など一部の気管支喘息、アレルギー性接触皮膚炎がこれに属するが、結核病変やツベルクリン反応もこの範畴に入る。(なおクームスら3)の・型アレルギーは細胞の抗原成分または細胞表面に付着する抗原と免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンM(IgM)が反応し、補体の関与もあり、細胞障害ないし融解を起すもので、溶血性貧血や血小板減少性紫斑病などが該当するが、われわれの実施しているアレルギー診療とは直接関連がない。)

さて上記クームスら3)の・型アレルギーに属し、レアギン(IgE)の関与する気管支喘息において、抗原曝露後15〜30分で症状が発現する即時反応をみる場合(筆者4)は・型アレルギーのうちアナフィラキシー様反応anaphylacticの意味でIAと区分している)のある一方、近年抗原が作用し数時間して顕われる遅発〜後遅発反応、あるいは一旦即時反応が改善した後に再発症する所謂2相性反応を来すもののあることが注目された。このことについて研究5)6)の結果、気管‐気管支の粘膜に好酸球(ギムザ染色で多数の赤く染まる顆粒を有する白血球)や好中球(同じ染色で顆粒を認めない白血球)といった細胞が集まって(細胞浸潤)、一種の炎症反応の状態になっていることが明らかにされた。そしてこのような炎症の結果、気道の上皮が剥れ、迷走神経の末端が露出すると気道の平滑筋が刺戟に対し容易に収縮する――言い換えると気道が過敏な状態となり喘息症状が慢性化したり重症化するという考えが出され(筆者4)は・型アレルギーのうち気管支炎bronchitisを考えるべきものという意味でIBと区分する)、ステロイド吸入療法導入の根拠とされることになった。アレルギー疾患における炎症の考えは喘息以外の、他のアレルギー疾患でも検討されているが、炎症反応関与の有無、程度が患者さん1人1人のアレルギー症状に差異を生ずる要因とはなり得ても、アレルギーの根底にある抗原そして抗体といったアレルギー機構の存在を否定するものではないことを患者さんも、診療担当医あるいは研究者も十分認識しこのことをふまえて予防ないし治療方針を樹てる必要がある。特に原因抗原によってもたらされるアレルギー反応の型あるいは症状のパターンが均一ではない点に留意すべきである。

すなわちそばによるアレルギーや職業に関連する喘息の過半数はクームスら3)の・型アレルギーに属し、即時反応に終始するIA型パターンをとるものの典型と考えられるし、花粉症もIgEが関与し、症状の消長が空中花粉飛散に時期を同じうすることからこれらと同じ範畴に属すると理解してよい。一方気管支喘息を惹起する抗原として頻度が高く、広く知られるのがハウスダストでこれに抗原性を付与するのがだにの虫体と排泄物で、クームスら3)の・型アレルギーを来すことは異論ないが、屡々炎症反応による遅発〜後遅発反応を来す(筆者のいわゆるIB)。そこでこれを抑えるために肺機能の改善を目的としてピークフローを指標にステロイドの吸入を続けることが喘息治療の本筋であると短絡的に考え奨められる風潮にあるが、筆者の診療経験からすればハウスダストによって即時反応のみをみて遅発〜後遅発反応のないケース(IA)も珍しくない。中田5)もハウスダストによる吸入誘発テストで即時反応のみのものが71%存するとしている。したがって抗原により惹起される反応の違いを無視しすべてを均一のものとして気管支喘息、さらにはアレルギー疾患を炎症としてだけ捉えることは妥当でない。このような理由でアレルギー疾患の治療に際してはその反応の型ないしパターンまで考慮したアレルギー機構に基づく(抗原、抗体を軸とする)治療こそが重要であり、ステロイドを含む対症薬物療法のみに頼るならば、これらを際限なく使用しなければ日常生活に支障を来すことになり、ひいては薬物による副作用ないし生体への影響を招来することになる。

とはいえ、すべての疾患と同様、アレルギー疾患による苦痛が著しいほど速やかにこれから解放されたいというのは患者さんにとって最も切実な願望であることは当然で、薬物による治療が敢然と実行され症状を抑えることが差当って重要な対応であることはいうまでもない。しかし症状が軽減できてもなお存続する場合、あるいは繰返し発現する場合は日常生活に支障のない程度に維持管理して難治化〜重症化を防ぐと共に、できるならば再発のない状態をもたらすことも亦極めて重要と考えられる。ではどうするか――以上述べた視点から、杉花粉症を含めアレルギー治療に当っての組立ての原則を正しく理解し、患者さんも診療担当医も相携えて予防〜治療の実効を挙げることが必要となる。そのためにあるべき対応の概要を次項に示す。

編者の一言

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