6.結 び
本稿では杉花粉症をアレルギーの側面から臨床的に如何に把え、診断し、治療するかの要点を概観した。特に1996年実現した診療科“アレルギー科”における本症の位置づけについても1969年その口火を切らせて戴いた立場から診療担当医が本症に如何に対処すべきか幾つかの問題点を指摘した積りである。
これまで私が講演を担当した際フロアから筆者がそばアレルギーと杉花粉症をもちながら何故自身で減感作療法を実行しないかとの質問を何度か受けたことがある。そばアレルギーの場合これによって死に至るほど重篤なアレルギー反応を惹起するが、そば抗原の除去回避が完全でさえあれば他のすべての治療も薬物も不要である。そしてそば抗原はわれわれの知る最も抗原性の強烈なもので、現在提供されているそば抗原の患者さんへの注射(負荷)は極めて危険と考えているので、筆者は本症診療時にもin
vivoの検査はすべて避け、抗原の除去回避に徹するよう指導している。一方杉花粉症の場合筆者は診療経験から減感作の臨床効果が喘息に比し乏しいことを知っていて自身の本症発症以前既に患者さんへの杉花粉による減感作は勧めないことにしていた。
しかしこのようにそばアレルギーにおける減感作が危険を伴うこと、杉花粉症に対し減感作が効き難いことをもってこの治療法を止め、捨て去ってよい理由とは考えない。何故なら冒頭の項で触れたような歴史的経緯を顧みるとき、20世紀初頭アレルギーの概念が確立した時代から花粉症に対する減感作療法が機縁となってこのアレルギー免疫学的治療が発展を遂げたのであって、この事実を21世紀の研究者、臨床家、そして患者さんも決して忘れてはならない。
筆者は代表的・型アレルギーである杉花粉症で減感作の臨床効果の乏しいのは何故なのか――使用抗原が不適切ではないのかと疑うと共に、賢明な研究者、臨床家は根源にまで遡って検討し直し、20世紀後半、特にIgE発見を契機として著しい発展を遂げたアレルギー免疫学的知見とテクニックをフルに生かして素晴らしい成果を挙げ、臨床面での発展を期すべきであると考える。そのためにも“国立アレルギーセンター”創設が必要で、これまでの閉鎖的学閥支配を排し、全国的な視野に立った独立機構とし、臨床面は勿論、学際的研究のやれる中枢として速やかに実現さるべきである。
文 献
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