3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

アーノルド・キアリ奇形


前回は、突発性難聴に良く似た症状で発症した聴神経腫瘍の症例についてお話しました。

このように中枢神経(つまり脳のことです)疾患に、難聴のような末梢神経(この場合は耳です)の症状が関わると、一見理解し難い病態を呈することがあります。アーノルド・キアリ奇形という先天性の奇形なのですが、小脳の一部が頭蓋骨からはみ出て圧迫され、平衡障害が発生する病態です。

この疾患も非常に稀な、めったにお目にかかることのない病気なのですが、それでも忘れる訳にはいきません。実際、約5年前に私のものを受診した51歳の男性も、そんな思いを新たにさせられた珍しいケースでした。

この男性は、その年の2月に右の耳が突然聞こえなくなり、地方の耳鼻科を受診しました。当然その耳鼻科では、聴神経腫瘍を疑って、脳外科に紹介しました。脳外科も聴神経腫瘍を考え、内耳道(聴神経の通り道)を検査しましたが、異常ありませんでした。

この方はその後めまいが出現したために、わたしのクリニックを訪れたのです。初診時のめまいの検査では、脳の疾患を疑う所見は認められなかったため、私も不思議に思いながら経過を見ていました。なおこの方は、経過観察中にめまいの発作で脳の専門病院を訪れCTを撮影していますが、その際も異常なしと言われています。

ところが経過中に施行されためまい検査では、垂直性眼振と呼ばれる小脳近辺の病変で特徴的なめまいの所見が出現するようになりました。

こうして何回目かの脳外科受診でMRIが実施され、小脳の一部が頭蓋骨からはみ出しているのが判明、アーノルド・キアリ奇形が発見されました。アーノルド・キアリ奇形は、壮年になってから症状がはっきりすることも多いので、発見が遅れがちなのです。

後から考えるとこの方は、もともとアーノルド・キアリ奇形が存在しており、そこに突発性難聴を合併したためにめまいと難聴が併存する形となった訳です。脳外科の検査も、耳鼻科と同じく聴神経腫瘍が中心で奇形は目標にされていませんでした。このためある程度症状が進行するまで、奇形は発見されなかったのです。

いかに珍しい病気であっても、常に用心を怠るべきではないという、とても良い教訓でした。
 
河北新報 週間るぽ 北部版 第145号 1998年11月16日
関連リンク: みみ、はな、のどの変なとき (エピソード11参照)
症状用語索引 詳細用語もご利用下さい。
症状用語索引 めまい
トップページへ もどる