3443通信 オンライン  



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ピアストラブル
原始信仰とピアス
エピソード1「床屋さんと瀉血」
自立心とピアス
自分たちでピアシングすると
その他のトラブル

エピソード2「ピアスの白い糸」
エピソード3「ピアス霜焼け事件」
トラブルの処置

外耳道異物
子供が耳穴におもちゃを入れたとき
昆虫が耳穴に入り込んだとき
水泳の耳栓が取れなくなったとき

子供の急性中耳炎
エピソード4「急性中耳炎と鼓膜切開のときの子供への説明」
エピソード5「急性中耳炎と髄膜炎」

耳の痛みや痒みを引き起こす2,3の疾患について
大人の急性中耳炎
子どもの外耳道炎
大人の外耳道炎
先天性耳瘻孔
外耳道ヘルペス
外耳道湿疹
エピソード6「耳痛と蜘蛛膜下出血」

耳が聞こえない
大きな声なら大丈夫?(難聴)
高齢化社会と老人性難聴
老人性難聴と補聴器
老人性難聴と滲出性中耳炎
エピソード7「難聴者の孤独な心理」

滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは?
小児の滲出性中耳炎
老人の滲出性中耳炎
成人病年齢の滲出性中耳炎
滲出性中耳炎の治療
滲出性中耳炎と水泳
エピソード8「中耳炎ワールドの冒険

慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎
慢性中耳炎
真珠腫性中耳炎

めまい
ぐるぐる回る(回転感の強い)めまい
ふらふらする(動揺感・浮動感が強い)めまい
立ちくらみ様のめまい
つまづく、ころび易い、まっすぐ歩けない、など平衡失調型のめまい
エピソード9「診断に苦労しためまいの症例」

耳鳴り

突発性難聴
エピソード10「突発性難聴の形で発症した聴神経腫瘍」
エピソード11「アーノルド・キアリ奇形に合併した突発性難聴」

騒音性難聴
職業性難聴
音響性外傷
エピソード12「ロックコンサートでめまいを起こした女子大生」

外傷性鼓膜穿孔

耳の検査
画像診断
聴力検査
平衡機能検査

 

 


めまい

エピソード9「診断に苦労しためまいの症例」

めまいはここに述べたように、いくつかの自覚症状のグループです。このためもあるのでしょう、原因疾患が複数存在するめまいでは、その解明に手間取ることが少なくありません。私たちも、小脳・脳幹疾患に精神性疾患を合併しためまい症例で、適正な診断に至るまで苦労した経験があります。

この症例は約20年前、私の派遣されていた総合病院の耳鼻咽喉科を、 精密検査のために訪れた当時55歳の男性でした。

この方は数年前から目の焦点の合わない感じがあり、眼科を受診しましたが異常無しと言われています。同時期受診の脳外科では、脳動脈硬化症との診断でした。それに加えて5年前からは左眼瞼下垂が出現し、4年前から性欲低下、1年前から立ちくらみと足元のふらつきがあります。

このために、一過性脳虚血発作の疑いとして私の派遣病院の内科に入院していました。耳鼻咽喉科受診はめまいについての、精査が目的でした。

耳鼻咽喉科受診時、鼓膜所見正常・聴力検査正常でしたが、ABR(後述しますが、聴性脳幹反応のことです)で左T−X波間隔の延長が見られました。これは脳幹部の障害を意味する所見です。しかも眼振検査と言って眼球の観察によるめまい検査では、下眼瞼向きの異常な眼球運動が確認されています。これも、小脳から脳幹部にかけての病変を示唆する結果です。なお、そのとき撮影されたCTでは、W脳室の拡大と両側小脳の萎縮を思わせる画像が得られました。

加えてCMI(自覚症状のチェックリストでことに精神症状の把握に使用される)はW領域を示し、MAS(不安尺度の問診表)でAが46と、強いうつと不安を呈しました。 私はうつ病の存在と何らかの中枢神経疾患との併存を考え、抗うつ剤の内服を行なうと共に、後者について脳神経内科を紹介しました。

抗うつ剤は著効を示し自覚症状はほとんど消失しましたが、脳神経内科では数々の自律神経失調症状と小脳から脳幹部の症状から、OPCA(オリーブ・橋・小脳萎縮症)の疑いと診断されました。同科では入院の上、TRH(サイロトロピン分泌ホルモン)筋注療法が実施されましたが効果無く、私の投与した効うつ剤のみが有効でした。さすがにOPCAの診断名に疑問が持たれ、再度精密検査がなされることになりました。その結果、左側椎骨動脈造影で左側後下小脳動脈の下方偏位が見つかり、この方は アーノルド・キアリ奇形であることが判明しました。

アーノルド・キアリ奇形とは、小脳と脳幹とが頭蓋骨の大後頭孔へ嵌入してしまう奇形で、成人後になってその小脳・脳幹症状の出現する病気です。

つまりこの方は、アーノルド・キアリ奇形による中枢神経症状と、うつ病による自律神経失調症状が合併していた訳です。その結果、CTの所見と併せてOPCA疑いの診断が下されることになったのです。

なおCTの所見は、アーノルド・キアリ奇形による水頭症と小脳の下方への偏位によって、脳室拡大や小脳萎縮のように見受けられたことが、後刻確認されました。

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