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ある日ある時、突然耳が聞こえなくなる。そんな病気があります。本当にその瞬間まで耳に何の異常も無かったのに、いきなり耳がヘンになるのです。これを突発性難聴と称し、現在までのところその病因は不明です。恐らくは内耳の神経に異変が生じたものと考えられていますが、実態は良く判っていません。
耳の聞こえが悪くなるのと同時に、めまいを伴うこともあります。これは内耳の病変が蝸牛だけに止まらず、三半規管などめまいに関係する前庭に及んだものと推測されます。 めまいと難聴を来す疾患に先に述べたメニエール病がありますが、メニエール病のめまいは何回も繰り返すのに対し突発性難聴のめまいは再発しません。
加えて突発性難聴では、耳鳴りや耳閉感(耳の塞がった感じ)を伴うことがあります。 突発性難聴で重要なことが2点あります。
一つは治療開始時期で、発症してから1週間以内に治療を始めないと、非常に聞こえは回復しにくくなります。ですから突然耳の聞こえが悪化したら、躊躇せず耳鼻科医へ相談して頂きたいと思います。
もう一つは鑑別診断で、突発性難聴のような急激な聞こえの悪化を来す疾患の中に、聴神経腫瘍などの脳腫瘍の存在することです。ですから突然聞こえが悪化した場合には、MRIなどで脳腫瘍の可能性を検査することも重要なのです。
主な突発性難聴の治療として、@ビタミン剤や代謝改善剤の投与(点滴や注射、内服など)、Aステロイド剤の使用(点滴、注射、内服)、B高圧酸素療法、などがあります。 ステロイド剤はとても良く効く薬剤であるだけに、気を付けないと副作用もあるものです。しかし現時点では、突発性難聴の治療には欠かすことのできない有効な薬ですので、細心の注意を払いながら使用します。
ですから医療機関でこの薬をもらったら、決して自己判断で服薬を中止したり、うっかり通院を忘れたりすることの無いよう、心がけて頂きたいと思います。
高圧酸素療法は、大きな酸素タンクの中に入って気圧を上げた状態で酸素を吸入する治療で、血中の酸素飽和濃度が高まり内耳のダメージを受けた神経に酸素が多く送り届けられるようになります。
これは、内耳の神経に酸素を送り込んでいる血管(内耳動脈)の循環不全が、突発性難聴の原因の一つと考えられていることを根拠とした治療法です。他の治療法同様、発症してから1週間以内に開始されることが望ましいのですが、それは余り時間が経過すると循環不全による内耳神経細胞の酸欠状態が不可逆となり、治療効果が期待できなくなるからです。
高圧酸素療法では体力的にも時間的にも負担のかかることがあり、専門の施設に入院して処置を受ける場合が多いようです。多忙な方では、止むを得ず外来通院で対応することもありますが。
突発性難聴では繰り返しますが、初期の治療がすべてを決定します。耳が変だと感じたら、早めに耳鼻科医にどうぞ。
聴神経腫瘍により、突発性難聴みたいな急性の難聴が発生する、と先に述べました。こうした聴神経腫瘍による突発性の難聴は、以前は稀と考えられていました。けれども最近は、CTそしてMRIの普及により比較的多数発見されるようになりました。ちなみに私のクリニックでは、開院以来9年間に6万人の受診者がありましたが、それらのうち突発性難聴の形で発症した聴神経腫瘍は3例でした。
聴神経腫瘍で急性の難聴を来すのは、腫瘍が内耳動脈を圧迫し内耳の神経にダメージを与えるからであろうと、現在は考えられています。
なおCTとMRIの普及以前には、聴神経腫瘍は比較的大きく成長してから発見されたのですけれど、近年のこれら高度先進医療機器の発達で小さな聴神経腫瘍も、見つかり易くなりました。このためごく初期の聴神経腫瘍では、すぐさま摘出するのではなく少し経過を観察してから、ガンマナイフなどで対応することも多くなりました。つまり以前と異なり、開頭せずに治療することもできるようになったのです。
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