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アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎の治療

先に少し予防的治療について触れましたが、ここではアレルギー性鼻炎になってしまった人、あるいはその発作に悩まされている最中の人の治療を取り上げます。

アレルギー性鼻炎の治療は大きく分けて、アレルゲンに目を向ける原因療法(「クサイ臭いは元からたたなきゃダメ!」というやつです)と鼻症状に着目する対症療法とに分類されます。

原因療法として、一つには減感作療法があります。これはきわめて簡単に述べれば、アレルゲン(アレルギー反応の原因となっている抗原)を少しずつ体に投与し、体をそれに慣らそうというものです。この目的で現在は、アレルゲンのエキスをごく微量注射し、徐々に注射量を増加する方法がとられます。この治療法が成功すれば、もちろんアレルギーの症状はとても軽くなります。ただ最大の難点は、週1〜2回の注射を何年か続けねばならないことです。忙しい現代人には少しキツイな、という感じもします。それに季節性のアレルギー性鼻炎、つまりスギ花粉症などでは、シーズン以外には症状が出ないので、治療の意欲が薄れがち、との現実も無視できません。逆にダニやHDのアレルギーでは、住環境の整備で家族全員がアレルギーから解放されます。それなのに、減感作療法では受けている人ただ一人改善して来るだけで、他の家族のアレルギーは全員粛々と進行して行くとの矛盾もあります。

また転地療法に代表されるような、原因となっているアレルゲンを隔離するやり方もあります。もちろんこの方法は、誰にでも可能という訳ではありません。けれども例えばダニやHDのアレルギーで、住環境を整える、まめに掃除機をかける、天気の良い日には布団を外で干す、それだって立派な原因療法です。もっともこの際注意して頂きたいのは、ダニやHD以外に花粉に対するアレルギーのある方の場合です。晴れた日には花粉の飛んでいることも多いので、そんなときに部屋の換気を良くしようと窓を開け放ったり布団を干したりすると・・・ 。そうです、花粉が部屋や布団に入り込み、夜になってからアレルギー性鼻炎の発作に悩まされることになるのです。その時・その状況に応じた判断も、それは重要なのでしょう。

また布団干しは日の高い時刻に行い、遅くとも午後3時頃には布団をしまう必要があります。それ以降ですと、気温が下がり相対湿度が上昇しますので布団は湿り、却ってダニが生息し易いようになります。

対症療法として、内服による方法と点鼻薬(鼻の粘膜に直接塗布する方法です)とがあります。

内服薬は現在、抗アレルギー剤と呼ばれる薬が主流で、それに抗ヒスタミン剤というアレルギー症状を抑える薬、それに時によってステロイド剤が併用されます。抗アレルギー剤というのは、アレルギーの化学反応を抑制する作用を持つ薬剤のことです。この抗アレルギー剤は、継続して服用すると効果が高まりますし、花粉症ではシーズン前の内服で予防的な効果が確認されています。シーズンに入ってから飲み始めるとやはり後手に回るようで、効き目は少し薄らぎますけれど。その意味でこの抗アレルギー剤、通年性のアレルギー性鼻炎では普段から、季節性のアレルギー性鼻炎ではシーズン前から、内服しておくと良いようです。

ところで抗アレルギー剤にまつわるエピソードを1つ。南天という植物から開発された抗アレルギー剤は、むかし魚料理に必ず南天の葉を添える習慣があった、その事実にヒントを得て成分の研究が始まった、と言われます。魚の痛むのが早かったいにしえ、食中毒を防ぐ先人の知恵だったのだろう、という訳です。

むかしの人は偉かった、のでしょうね?

抗アレルギー剤とともに良く用いられる薬に、抗ヒスタミン剤があります。この薬剤はアレルギー性鼻炎の臨床症状を直接引き起こす、ヒスタミンという物質の作用を妨げるもので、速効性があります。したがってアレルギーの予防作用はありませんが、一旦発症した鼻症状を速やかに治めるには最適です。それに、以前は抗ヒスタミン剤と言えば眠くなるものがほとんどでしたが、最近は眠気の生じないタイプが主流となっています。こうして抗アレルギー剤と抗ヒスタミン剤の併用で、アレルギー性鼻炎のほとんどはかなり楽になるようです。

ただ、余りにアレルギーの症状のひどい場合には、副作用覚悟でステロイド(副腎皮質ホルモン)剤配合の抗ヒスタミン剤を、一時的に使用することもあります。この薬はすごく効き目が強いので、頓服薬として短い期間のみ服用します。長期に使用すると、ステロイドの副作用が心配です。他の抗ヒスタミン剤に較べ、眠気がひどいという問題点もありますし。

内服薬以外に、点鼻薬の使用もお勧めできます。点鼻薬には、鼻粘膜収縮剤(鼻づまりを改善する薬)・抗アレルギー剤・ステロイド剤などがあり、症状に応じて処方されます。なお、点鼻薬として使用されるステロイドは、内服薬とは異なり体内に吸収されにくいタイプです。副作用も目立ちません。長期的な使用はともかく、アレルギー症状のひどい時期に効果的に活用すべきかと思われます。

アレルギー性鼻炎に対する手術も、最近盛んになって来ました。これは例えばごく弱いレーザーで鼻粘膜の表面を焼灼し、アレルギー反応の場となっている感作された鼻粘膜の一部を刮げ落としてやります。すると、その粘膜が再生し再び感作されるまでアレルギー発作が生じにくい訳で、効果は約1年間有効とされています。お仕事などの都合で、通院や服薬の難しい人にお勧めです。

またアレルギー性鼻炎の内服治療は、症状のうちくしゃみ・鼻みずには効果が期待できますが、鼻づまりにはさほど効かないという傾向があります。こんな場合に、ソムノプラスティという高周波療法が役に立ちます。これは鼻粘膜表面ではなく、内部に端子の先端を挿入して熱を加えそこの組織を破壊するもので、破壊された組織が脱落することにより鼻粘膜の腫れが無くなります。レーザー手術では術後しばらく鼻粘膜にかさぶたが付き不愉快なのですが、ソムノプラスティではかさぶたが発生しません。手術直後から鼻が快適、という利点があるのです。日本に導入されて間も無い機器なのですが、近い将来全国に普及すると予想されています。

話は変わりますが、妊娠中にアレルギー性鼻炎発作のひどくなる女性のいることが、経験的に知られています。この性差のアレルギーへの関与は、その機序がまだ良く判っていません。ただ、男性と女性とでアレルギーの表われ方に大きな差のあることは明らかなのです。実際私たちは北海道白老町において、3520例に対して性差を検討したことがありますが、全体のスクラッチテスト陽性率が37.9%、男子生徒1720例の陽性率が44.1%、女子生徒1800例の陽性率が32.0%と、性差は極めて明確です。そしてこの性差は、女性の妊娠など体内の内分泌環境の変化時に、より一層人体に影響を与えるようです。お腹が大きくなってから突然アレルギー性鼻炎の発作がひどくなった女性を見ると、苦しそうで本当に気の毒です。それに困ったことに、妊娠中は薬剤の胎児への影響が心配で、余り薬は使えません。内服薬を使用せず、局所処置で経過を追うことになります。ですから通常のアレルギー性鼻炎以上に、体調のコントロールや生活環境の整備に、注意を払わねばなりません。なお、減感作療法は妊娠中も継続できるとされています。これまで減感作療法を受けて来られた方は、主治医にご相談ください。

また、先に触れたソムノプラスティは局所麻酔だけで処置が可能ですので、妊娠中のアレルギー性鼻炎の鼻閉解消には応用可能かと、予測できます。

その実用化に向けて、努力したいと思っています。

ところで、アレルギー性鼻炎に併存することもあるアレルギー性結膜炎ですが、やはり花粉によるものとダニ・HDによるものがあります。鼻と目と当時に症状の出現するのは、花粉が原因であることが多いようです。ダニやHDは床に落ちていますので、鼻で息を吸い込むときに一緒に鼻内に入り込みますが、目には入って来ません。それに対して花粉は空中浮遊物質ですので、鼻と同時に目の中にも入り込んで来ます。ですからダニやHDでは鼻症状と眼症状が併発しにくいのに、花粉では同時に発作を生じ易いのです。

この場合、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりに加えて、目の痒み・涙・目やにが出現しますから、とてもたまりません。こうした結膜炎には、アレルギー性鼻炎に対するマスク同様、花粉予防目的の眼鏡(ゴーグル)があります。通常の眼鏡の上から使用したり、くもり止め加工がしてあってマスクと併用しても曇らないタイプのそれも、市販されています。試用をお勧めします。

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