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咽頭異物

本来なら体内にあり得ない物体が体の中に存在する。それを”異物”と言います。

なんでもラテン語では、異物のことを「コルプス・アリエヌム」とか呼ぶのだそうで、あり得ない物質(ラテン語でコルプス)が体内に存在していることを意味しているのだとか。そんな冗談を真顔で教えてくれた人も、昔はいたものです。

冗談はともかくこの異物、のどで言うならば魚の骨を飲み込み損ねて引っ掛けた、そんな状況です。

咽頭異物と呼ばれるそれは、やはり魚の骨が一番多いようです。中でもウナギの骨など、つい本体と共にうっかり飲み込んでしまいそうな、小さな骨がポピュラーです。もちろん、”所変われば品変わる”と言い古されて来たように、地域によって事情は異なります。例えば信州などでは、イナゴの足をのどに刺して耳鼻咽喉科へ来る子も少なくない、と言われます。その背景としてイナゴを佃煮にして食べる習慣が、これらの地域には根強いと聞きました。

こうした食物を食べた後でのどが痛くなったら、当然咽頭異物を考えます。ただしその際、のどの痛みが一番ひどいのはどの部位なのか、確認してください。のどの左右どちらかに痛みが偏っていれば、異物は扁桃に突き刺さっている可能性があります。また真ん中に痛みが強ければ、異物は舌根部か下咽頭部に刺入しているものと、想像されます。

ところで、痛みがあってつばを飲み込んでもつらい、そんな場合すべてに異物が残っているとは限りません。異物がのどに傷だけ付けて、胃の中へ入ってしまった疑いもあるからです。指にトゲが刺さったときと同じで、トゲが抜けた後も痛い。そういうことは、咽頭異物の場合にもあります。ですから、のどに骨を引っ掛けたと思ってせっかく耳鼻咽喉科へ行ったのに、すでにのどには傷しか見当らない、などという骨折り損も結構あるのです。おまけにのどから出血を見た場合でも、局所に血豆(血腫)だけ残して、肝心の骨はとっくにおさらばしていたりさえします。咽頭異物でのどから血が出ても、必ずしも深刻に心配する必要はなさそうです。

咽頭異物の変わりダネに、餅があります。軟らかい餅が、のどに引っ掛かるのです。特にお年寄りなどでこんな状態になったら、窒息死の危険もあります。お年寄りによっては、軟らかい餅をまるで蕎麦のように、噛まずに啜り込むことを無上の楽しみとする方がいます。すると時には、啜り込まれた餅がのどに止まらず肺の中の気管支分岐部にへばりつきます。のどの餅なら未だ取り出すこともできますが、気管支分岐部の餅は手が付けられません。即、死亡に繋がります。お年寄りの軟らかい餅は、その危険性について十分に注意を払ってください。

餅では、義歯がそれに刺さったまま飲み込まれ、義歯だけのどに残り刺入していることがあります。時には食道内部に義歯が入り込み、内壁に突き刺さることだってあります。やはり餅は咽頭異物として特殊で、しかもかなり危険な性質を持っています。どうぞ気をつけてください。

なお、まさかと思うようなものが咽頭異物となることもあります。薬剤のPTP包装などもその一つです。つまり、これもお年寄りに多いのですが、錠剤の入ったプラスチック包装を、内容を取り出さずにそのまま服用するのです。食道異物となることもあり、とても危険なものです。

このPTP異物については、どうしてそのまま服用するのか、当初は理解できませんでした。それについての解釈で、これがすべて当たっているかどうかは判らないのですけれど・・・ 。

内服薬のカプセルには、腸溶錠という種類があります。これは胃で酸化されることの無いよう、胃では溶けず腸に到達して始めてカプセルが溶け、内包された薬剤が奏功するしくみです。このカプセルをわざわざ開けて、中身だけ服用しようとするお年寄りがいるのだそうで、それは何となく想像できます。それを予防しようと、カプセルは開けていけないと強調し過ぎると、今度はPTP包装をそのまま飲み込もうとするお年寄りが出て来るのだそうです。

ウソではなさそうなのですけれどもね。

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