(1) 前庭神経炎

    1. 解剖・生理・病態
      • 蝸牛症状や中枢神経症状を伴わないめまい発作で、大きな発作は通常1回だけである。温度眼振検査では、一側もしくは両側の反応低下や消失を示す。
      • 前庭神経節や前庭神経の急性ウィルス感染が、その原因として疑われているが、確証は未だ無い。
    2. 治療
      • 時間の経過と共に軽快することが多く、発作がひどくともさほど心配することは無い。めまい全般に対する治療で、症状の軽減を図る。

(2) 聴神経腫瘍

    1. 解剖・生理・病態
      • 内耳道内を通過する聴神経(前庭神経と蝸牛神経)そして顔面神経のうち、前庭神経の神経鞘から発生する良性腫瘍。
      • 内耳道から、頭蓋内の小脳橋角にかけて進展する。発育は緩慢で、このためめまいや顔面神経麻痺は発生しにくく、耳鳴・難聴を初期症状とする。
      • 発育するにつれて小脳橋角に存在する脳神経、すなわち三叉神経・顔面神経・外転神経・舌咽神経・迷走神経の症状が出現、小脳の症状も明確となる。
      • 近年はCTやMRIの普及で発見が早く、重篤となることはまず無い。それ以前には、脳室を圧迫し頭蓋内圧亢進(IICP)のために、末期には脳幹障害で死に至ることもあったとされる。
      • 温度眼振検査で患側の高度反応低下や反応廃絶が見られ、聴力がさほど低下しない時期でもABRにてT−X波間隔の延長を認める。難聴の形は後迷路性で、補充現象は観察されず、Bekesyの自記オージオメトリではV型もしくはW型の出現が見られる。
      • 語音弁別能も、純音聴力検査の域値に比べ悪化していることが多い。
      • 注意すべきは、突発性難聴と同様の急性感音難聴で発症する聴神経腫瘍症例の存在することで、これは緩慢に発育していた聴神経腫瘍内部の血管が破裂し、急激に腫瘍径が増大するために起きる現象と理解されている。
      • 耳断層X−Pで、患側内耳道の拡大の見られることが多いが、未だ小さな腫瘍ではこの所見は明確でないこともある。
      • CTでは、像影剤の使用が必要となることもある。
      • MRIが現時点では、聴神経腫瘍の検出に非常に有用である。
    2. 治療
      • 巨大化してから発見された聴神経腫瘍では摘出手術が、現在でも必要である。ただし、近年はごく小さな段階で腫瘍の発見されることも多く、ガンマナイフで対応したり、あるいは経過観察も一つの方法と考えられるようになって来た。

(3) ワッレンベルグ(Wallenberg)症候群

    1. 解剖・生理・病態
      • 椎骨動脈の分枝である後下小脳動脈の閉塞によって急激に生じる、以下の症状。
      • めまい・嘔吐・回旋性眼振・病側への激しい転倒傾向・障害側の軟口蓋と声帯の運動障害そして味覚障害・障害側顔面の感覚異常・Horner症候群・他側の半身の感覚異常
    2. 治療
      • 後下小脳動脈閉塞の原因となっている、梗塞や出血に対する処置。

(4) 小脳障害

    1. 解剖・生理・病態
      • 小脳の循環障害や血管芽腫など血管の豊富な腫瘍では、激しい回転性めまいを生じる。小脳に頻発する血管芽腫は後下小脳動脈を栄養動脈とすることが多く、脳室の狭窄からIICPを生じて早朝頭痛と共に悪心を伴わない嘔吐を起こし、その後頭痛は軽快する。
    2. 治療
      • 小脳病変に対する治療。

(5) Arnold-Chiari 奇形(症例1症例2

    1. 解剖・生理・病態
      • 小脳扁桃が大後頭孔に嵌入(ヘルニア)する先天異常で、成人期以降に小脳を中心とした症状が出現する。
      • 垂直の動揺視とゆっくり進行する歩行時の不安定が存在し、小脳性失調と下眼瞼向き眼振が認められる。
      • MRIで小脳の大後頭孔嵌入が観察され、後下小脳動脈の大後頭孔より下への偏位が脳動脈造影で確認できれば、診断は確実である。
    2. 治療
      手術的に治療する。

(6) 機能性難聴

    1. 解剖・生理・病態
      • 聴覚系に器質的病巣の無い難聴。他覚的聴力検査では異常が検出できないが、自覚的域値の上昇がある。
      • 難聴により利益を得ようとする詐聴と、心因性難聴とに分類される。
      • 心因性難聴は近年学校における聴力検査の普及に伴って増加し、心理的ストレスが背景に存在するものと理解される。
      • ABRなど他覚的聴力検査にて、診断される。
    2. 治療
      • 心理的背景が明確な場合には、その除去を試みる。
      • ただし小児の場合、聴力検査が下手なだけのこともあるように感じられ、原因となる要因の明確化できないことも多い。


外耳疾患 中耳疾患 内耳疾患 後迷路または中枢性疾患
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