3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

雑誌Tarzanに 院長が取材協力した記事が 掲載されました!!

2001.No342(1/10,24号)掲載 

「鼻とアレルギーの今どきの話」

太古の昔から生物の繁栄を支えてきたのは、他ならぬ鼻。その感覚器を侵す現代特有のトラブルとは?

/取材協力・三好彰

サメは血の匂いを頼りに食料を探し、サケは故郷の川の水の匂いを目印に帰還する。ウナギの赤ちゃんは母親の乳首の匂いに反応してミルクにありつき、雌ブタは雄ブタのフェロモン臭に似た香りのトリュフを、地中深くから見つけ出す。

鼻という感覚器官は、生きていくうえで実に大事な役割を担っている。最もベーシックな機能は、もちろん呼吸。吸い込んだ空気を温めたり加湿したりする。だが、なんといっても嗅覚が鼻の最大の機能だろう。

来るべき危険を察知したり、遠くの獲物の匂いをキャッチしたり、ときには生殖行動を促す異性の匂いを嗅ぎ取ったりする。生物の繁栄は嗅覚あってこそのものなのだ。

では、我々はどうやって物の匂いを感じ取っているのか。まずは、その仕組みを知ることから始めよう。

広大なる鼻のアナ。匂いを感知する場所は?

空気の入り口に当たるのは皮膚で覆われている鼻前庭。その奥は粘膜で覆われた鼻腔となる。この粘膜エリアは想像以上に広い。鼻中隔という中央の骨を境に、左右に分かれた鼻腔は、薄い軟骨によって、それぞれいくつかの小部屋に分かれている。

さて、空気中にはさまざまな匂いの分子である化学物質が漂っている。これらは吸気の流れに乗って、鼻腔に入り、粘膜の上に着地する。が、どこにでも着地すれば、匂いを感知できるかといえば、そうではない。

左右の鼻腔の一番上の天井に当たる部分に、親指の先くらいの大きさの嗅上皮(嗅粘膜)がある。そこには、薬1000万個の嗅覚受容細胞(嗅細胞)が詰め込まれている。匂いの分子は粘膜の粘液に溶けて、嗅細胞から伸びた嗅毛と呼ばれる繊毛にキャッチされる。

そこで取り込まれた匂いの情報は電気信号に変えられ、嗅細胞から嗅神経を通り、嗅球と呼ばれる部分を経て、脳へと送られる。一部は大脳皮質の嗅覚野へ。一部は、本能を支配する大脳辺縁系へ。

五感のうち、大脳辺縁系へダイレクトに情報が送られるのは、嗅覚のみ。いい匂いでリラックスしたり、悪臭に嫌悪感を覚えたり、匂いが食欲や性欲に深く関わっているのは、このためだといわれている。

消臭流行りの昨今、現代人はこの鋭敏な感覚器の能力を、十分使いこなしているかどうか。チト、疑問。

無害なはずの花粉が原因?鼻アレルギーの正体とは。

日本人の鼻アレルギーは、70年代半ば、急激に増加したといわれている。その代表格がスギ花粉症。ある日突然、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状に襲われ、一度なったら最後、毎年春先には辛い目を見る。

鼻アレルギーの第1号患者が現れたのは、60年代前半。それが40年あまりで"国民病"ともいわれるほど蔓延した。まさに、鼻にまつわる深刻な現代病といえるだろう。では、花粉ごときで、なぜこんな症状が起こるのか?

鼻アレルギーの症状は免疫システムの過剰反応。

ヒトのカラダには、体内に侵入した外敵から身を守るシステムがあらかじめ備わっている。風邪やあらゆる感染症と闘う免疫システムだ。

免疫反応の対象になる異物を抗原、異物を攻撃する兵器を抗体という。花粉の成分の中の抗原がカラダに侵入すると、IgEという特定の抗体がつくられる。この物質は、粘膜に広く分布する肥満細胞という免疫物質にくっつく性質がある。

抗体をくっつけた肥満細胞が粘膜上で抗原である花粉と出くわす。すると化学反応が起こって、肥満細胞中のヒスタミン、ロイコトリエンといった物質が放出される。ケミカルメディエーターと呼ばれるこれらの物質が、神経を刺激したり直接血管に働きかけ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりを引き起こすのだ。

だが、よく考えてみてほしい。花粉やハウスダストが原因で死ぬ人間はいない。鼻アレルギーは無害の物質に対して過剰反応した結果、カラダに負担をかけているようなもの。なぜ、こんなことになったのか?

考えられる原因は諸説あるが、そのなかのひとつに食生活の変化があげられている。

免疫細胞の材料となる動物性タンパク質や脂質を多く摂ることで、確かに免疫力は高まった。が、闘うべき細菌は減多にカラダに入ってこない。ヒマを持て余した免疫細胞が本来害のない物質を外敵と見なし、攻撃するようになったというものだ。

同時に、住環境や道路事情などの変化によって、抗原とみなされる物質は増える一方。結果的に鼻アレルギー患者は年々増え続けるというわけである。

現在のところ、決定的な治療法は確立されていない。点鼻薬、内服薬、患部となる鼻の粘膜を除去するレーザー手術など、症状によって段階的に治療法を試していくという状況だ。

だが、治療の研究は各方面で続けられている。たとえば2000年発売の医科用新薬《アレグラ》は、これまでの内服薬のように眠気を起こす作用がなく、話題を呼んでいる。

ただし、こうした薬は花粉シーズンの少し前から服用しておかなければ、意味がない。さらにシーズン中は継続して薬を服用することを心がけること。もちろん、専門医にそれぞれの症状に合った薬剤を処方してもらうことが基本である。

花粉に限らず、特定の抗原に、いつアレルギー反応を起こすのかは誰にもわからない。来年の春、突如、くしゃみ、鼻水、鼻ずまりに襲われる可能性だってあるのだ。21世紀、強力な治療法や薬が登場するまでは、自力で可能な限り予防と対処を。

 
関連リンク: 用語集 アレルギー性鼻炎
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