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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

 

本出版記念講演会

4月22日に、コミック「さつきさんの憂鬱」出版を記念してホテルメトロポリタン仙台において180名を超える参加者を迎えて講演会が行われました。

今回は、愛知医科大学耳鼻咽喉科助教授中山明峰先生の講演です。


『どうして目が回るんだろう?』

愛知医科大学耳鼻咽喉科助教授 中山明峰先生


1.車のバネと耳との関係

名古屋は東西に発達した街で、東名高速を使い車で来ると東側から、新幹線ですと西側から入ることになります。この東側にあるインターの近くすぐのところに愛知医大があります。この近辺では今、万博の会場を一生懸命作っています。愛知といって忘れてはならないのは、もう一つありまして、それはトヨタではないかと思います。トヨタの車は非常に快適でありまして、まったく揺れません。他の車とどこが違うかと言えば、トランスミッションというタイヤを支えているバネが非常に優秀だと聞いています。このバネが何をしているかと言えば、例えば車がまっすぐに走っている時に道がへこんでいると、タイヤが伸びてくれれば、その上に乗っている車の人達は、沈まなくてすみます。車体だけがまっすぐに行き、タイヤだけが伸び縮みしてくれるという素晴らしい効果なんです。そうしますと、乗っている人間は常に快適に揺れなくてすむ。

めまいを起こすということは、平衡感覚がおかしくなることを言うんです。平衡感覚とは何かといいますと、今の車のバネに似た原理であります。私達の耳の中にはセンサーがありまして、このセンサーによって私達の頭が右に回転した、下に沈んだなどいろんな情報を脳みそに入れながら、大きく二つの現象として体に表すことをするわけです。その一つが目玉を動かすことと、もう一つは脊髄に行って体、手足を動かす。例えば、電車に乗っていて急ブレーキかけられると、電車に乗っている人達が全員、電車が傾いた方向と反対方向に倒れるんです。どうしてそういうことをするかというと、電車と同じ方向に傾けば、倒れてしまう。

このセンサーは動きをキャッチして体に違う方向に倒れると、あなたは倒れなくてすむよ、というように、私達の体の中にも先程の車のトランスミッションと似たような素晴らしい機能が入っています。

2.耳の中のカタツムリと石?

今日の「どうして目が回るんだろう?」ということの結論を言いますと、この反射がどこかでおかしくなってしまった場合に目が回るわけです。体が傾くことをお話しましたが、目も大事な役割をしてまして、もし私達の目が頭と同じ動きをしているとすれば、私達が歩くたびに頭が上下するわけですから、見てる物が全部揺れるんです。ところがそれでは困るわけですから、先程の車と全く同じ原理で、もし頭が沈んだ時に目玉が上に行くような動きをすれば、私達が見るものはいつも安定して見える。気持ち悪くならなくてすむ。耳の中というのは、よくカタツムリが入っているという言い方をしますね。カタツムリというのがあって、この反対側にはゼンテイきというのがあります。ゼンテイキというのは名前はややこしいですが、この中にジセキキと三半規管が出てきます。不思議なことにカタツムリというのは小学生でも知ってますし、三半規管は皆さんもご存知のはずです。ところがこのジセキキというのはあまり聞かれない。それからゼンテイキという名前も聞かれない。この理由はなぜかは申し上げませんが、実を言うとこのジセキキは非常に大事な役割で三半規管と同じような役割をしているんです。今からジセキキが何をしてるかについて簡単に申し上げますが、実は今申し上げたセンサーは家電に付いているスイッチだと思っていただければ良いと思います。この上に重石として乗っている石があれば、私達が前のほうへ進んだ時に、この石は重力に引っ張られて下に沈むわけですから、このスイッチが締められるようなかたちをとるわけです。これが体がまっすぐ動いたんだな、ということがわかるような仕掛けになっているわけです。

耳石が地球の重力に反応しながら、私達が動きを感じるのと、少し原理が違うんですが、この石で言いますと、もし私が回転したらその石はスイッチの真上にあるから動きません。そうすると、私達は回転する動きをキャッチするセンサーが必要になってきます。人間というのは三次元の世界に住んでいますから、三次元をあらわすセンサーが必要なんです。そのために三つの半規管があって,XYZ軸という三つの次元を感じることができる。これはどうなっているかというと、半規管のほんの一部なんですが、半規管の根元にある神経細胞で、頭が回ると水がぐるぐる回る。その水が回るとこの神経細胞を刺激するという装置になっているわけです。

3.めまいは過去から来る?

今から10年前に私がアメリカでやった仕事なんですが、実際の本物を皆さんにお見せしますが、ジセキキがそれぞれ皆さんの耳の中にあり、これが揺れることで私達は体が動いていることが分かるんです。この石を取りますと、下に神経細胞があり、実にきれいに一列ずつ並んである。この神経細胞がちゃんと方向を教えてくれるんです。ところが、例えば耳に悪い変なクスリを使ったとします。ここにいらっしゃる方の中に、以前結核を経験されてる方はいらっしゃると思うんですが、当時の結核剤というのは耳にとってすごく悪いということを知らずに、たくさん使われてその後、難聴、それからめまいが残る場合がある。これが結核剤を使うと先程お見せした一列に並んだ毛が乱れてきて、それごと吹っ飛んじゃうということが起きます。場合によっては、毛が一本しか残らなくなってしまいます。年をとってくると残念なことにこの毛は結んでいるものが緩んできます。ですので、これでわかりましたようにスピードを伝えるセンサーが、年をとったり、クスリを使ったり、いろんな要素によって毛が緩んだりして、動きをうまく体に伝えなくなってくる可能性が出てくるんです。次に、これは半規管なんですが、半規管は先程申し上げたような、上にゼラチンがあってゼラチンが揺れることによって、神経を動かす。横から見ますと、この半規管の神経細胞は、下に神経の繊維が一本一本並んでいる。すごくきれいな細胞。一つの細胞につき一本のコードがあって、ここから頭の方に伝達される。実はこれは年のとったねずみの半規管を見ると、この真ん中のところの毛が抜けているんです。真ん中の毛というのは、速い回転に対して感じる細胞なものですから、ねずみは年をとってくると速い動きに対してキャッチができなくなってくるという問題が起きてくる。年配の方が、速い乗り物やエスカレーターに乗ろうとするときに、タイミングが合わなくて転んでしまう。それから抗がん剤によっては耳に悪さをする場合がある。スプラチンという抗がん剤をやってみたところ、ごそっと抜けました。実は耳の中にいっぱい悪さをするクスリも含まれているんです。まだ細かいことはわかっていませんが、もしかして抗生物質がなる場合もあります。

それで、我々はどうしてめまいを起こすか?というのは、場合によっては5年前、10年前、30年前に遡って考えていかないといけない場合がある。

では、私達医者がどうやってあなたがたの現象をキャッチするかといいますと、目玉が動くわけですから、一生懸命目玉を見るわけです。じゃあ、どうして目玉が動くかという原理を説明しますと、簡単に言いますと、人間の平衡感覚はモーターボートがあって二つの出力があるわけですが、運転している人が正常であれば、このモーターボートは真っすぐに行きますよね。もし、片方のエンジンがダメになってくると、曲がってくる。でも、運転している人がしっかりしていれば、曲がったモーターボートを元に戻し、最終的には行きたい所に行くことが出来る。ところが、頭の方に問題があると、今度運転がすっちゃかめっちゃかになって行きたい所に行けなくなる。なぜ、私達が目玉を見るのかというのは、そこにあります。エンジンが2個しっかりしていれば、真っすぐに行きます。耳の悪い方の場合、頭の方がしっかりしていれば、ふらつきながらも最終的には目的地に着きます。これが運転者が酔っ払った場合というのは、目玉は好き勝手にあちこちに飛ぶんです。でも、目玉というのは、目玉を支えている筋肉によって固定されていますから、そんなに好き勝手に動きませんが、それなりの違うパターンを見ながら、私達は勉強するわけです。片耳のゼンテイ神経の炎症を起こした時にはこんなに目玉が動きます。ですので、この人の見ているものは全部揺れている。耳から来ているめまいというのは、無理をすれば歩けることは歩けます。しかしながら、非常に苦痛で場合によってはひどい症状を起こし吐きまくるわけですから、一般的に頭の方を心配してしまうんですが、必ずしも頭だから症状が悪くて、耳だからどうってことないということは全くありません。

4.ぐるぐるまわる訳

最近、耳鼻科の間で大きなトピックスとして私達の教科書を塗り替えたような知識があったわけです。非常にショッキングなことが起きて、私が医学部の時、それから医者になった時に覚えさせられた知識が本当ではなかったということで、ちょうどアメリカにいた時に、その新しい説を見つけた先生と親しくなって、この病気にしばらく取り掛かっていました。この病気は特徴として、朝布団から起きたら天井がぐるぐる回る。この一言で決まるようなものなのです。実は患者さんが来た時に、朝ぐるぐる回ったというと、まずこの病気である可能性が非常に高くなってきます。先程申しましたように、ジセキキというのは上に石が乗っているわけです。この石は真っすぐに動く加速度を感じてくれているんです。この隣で半規管というのは、ぐるぐる回る速度を感じてくれています。こちらで感じる細胞とこちらで感じる細胞は別なものでありまして、にもかかわらず、この石というのは時々剥がれて取れてここに引っ付きにくるために起きる症状なんです。詳しい話は時間がありませんので省略しますが、実は私が医者になった頃に、しゅくの人という、それこそ世界で認められている耳の神様の先生で、大学の教授なんですが、この先生は実はこの病気はここで石が剥がれて、ここに引っ付いちゃったという説を立てたんです。これはずっと長い間信じられていて、今でもこうだと書いてある教科書もあります。ところが、当時から皆が疑問に思っていたことがありまして、こういう患者さんというのは朝起きて、すぐに回るのではなくて起きてから4秒くらいしてからぐるぐる回りだす。そうしますと、もしこの石がここに引っ付いちゃったとしたら、これは頭を揺らすたびにここの神経を刺激するもんですから、めまいがしてしょうがないはずですが、なぜか数秒間の謎がある。そこで、実はそうじゃなくて、石が飛んできたわけではなくて、石がぐるーっと回ってここに石が詰まっているんだよ、という説を立てた先生がいらっしゃって、これは20年くらい遅れて出てきたんですが、この先生は実は開業医でありまして、ものすごくまめに患者さんを診ていて、その説では絶対おかしいと言って新しい説を立てたんですが、残念ながら誰も相手にしなかったんです。ところが、この先生の説がやっと認められだしたのが、先程の先生が亡くなられる直前くらいから、どうもこの説は正しいらしいよ、という説が出てきたんです。仮説というのは、誰がどんな仮説を立ててもいいわけですが、その先生は仮説を立てただけではなくて、この石がここに詰まっていれば、こっちからこっちへ追い出してしまえば、この病気は一発で治してしまうんだよ、というショッキングな発表をされたんです。これが、医者が疑いながらも一人やって二人やって三人やってるうちに、どうも本当らしいよ、というので今は爆発的に世界中で認められて、昨年は我々の平衡学会というのは、世界で一番権威があるのはバラニー学会というんですが、その学会でバラニー賞という最優秀の賞を取られて、どうもこの説は嘘の説では無さそうだということがわかりました。実はこの先生は唯一一回だけ日本に来たことがありまして、2000年に我々愛知大学でやった学会に当時は石川先生にも来ていただきまして、秋田大学からも演題を出してもらいました。この説は2000年に至っても90%以上効果があるという報告がされています。ただ、問題も生じてきています。場合によっては、再発を起こしているんじゃないか、というもので、これは私がいま取り掛かっている課題でして、この再発は評判がいいのと悪いのと出てきているのかと検討をしているところです。

5.アメリカの最新事例

昨年秋に、先生のところに遊びに行った時の新しい報告を今から最新の情報をお見せします。これは実は先生が非常に有名になられた後に、先生が自分の趣味で作られた機械なんですが、人間のカプセルを乗せて頭を三半規管と同じ方向に好き勝手に動かせる物を作ったんです。眼鏡をかけていて、この眼鏡は瞬時に目玉が動くことを見せているわけです。先生の最終的な夢は、この目玉をコンピューターへ情報を入れて、そうすることにより椅子に乗っていればコンピューターが勝手にめまいを治してくれるというものを作ることです。この先生はもう73歳でいまだに現役で頑張ってらっしゃるんです。

ある患者さんの症例なんですが、先生と一緒に去年アメリカの学会に出した患者さんのこともお見せします。カプセルを乗せた患者さんを倒します。倒して1秒、2秒、3秒、4秒、ぐらーっとくるんです。これは良性発作性とはいえ、めまい症の恐ろしいところです。中でジセキが揺れているだけの話ですが、患者さんにとってはたまったものではありません。

ここでお分かりいただきたいのは、耳の中にはいっぱい病気があります。瞬時にして治せるものと訳がわからなくていろんなコンビネーションが混ざってくるものがあります。

5.ゴッホと耳

今日は時間もあまりありませんのでこれ以上申しませんが、耳鼻科の病気でもう一つ有名な話にメニエルという病気があります。メニエルというのは我々の外来に来ている患者さんの10%あるかないかの病気なんです。ところが先生によっては来る患者来る患者100%メニエルと付けられる場合があるんですが、もし出入りしている患者さんがその病院に行って全てがメニエルになっていれば、もう1軒相談された方がいい場合があります。なぜそういうことを申し上げるかといえば、アメリカと日本にも一人いらっしゃるんですが、ゴッホはメニエルだったという論文を書かれたんです。ところが、当時はメニエルという知識が全くなかったので、ゴッホはどうも耳をえぐって切り取れば病気が治るんじゃないか、と思い耳を切り取ってしまったんです。ところが、こういう天才の人間に誤った治療をしてしまったらば、自殺に至らせてしまうという怖い病気でもありますので、是非本当にこういう病気を理解した上で治療してくださる先生のところに行っていただきたいと思います

7.車のバネと耳との関係

それから最近私が興味をもってやっていること、そして三好先生が書かれた「五月さんの憂鬱」についてですが、春というのは憂鬱になる方が実に多いんです。フロイトというのは、有名な精神科の先生ではあるんですが、私もずっと前から一つ抱えていた問題は、めまいの患者は治したつもりでいたのにいつまでたっても、まだ頭が重い、ふらふらする、ということを言われます。これはめまいは一つのきっかけでその方のキャラクターにもよりますが、今まで溜まっていた憂鬱なことを引っ張り出してしまう可能性があるんです。フロイトは神経内科の医者でありましたが、ちゃんと神経を一本一本調べることができる医者だったんですが、ある日自分がめまいをしたんです。ところが自分の体を検査していたら、どうもこれは脳の病気ではないということが分かっていた時に、少しずつ精神科について勉強しだし、最終的に自分の精神的なところに由来すると言われたんです。耳鼻科は全てのめまいを理解していたわけではないということに、ある日目が覚めて患者さんを見るときは、病気を見るだけではなく人を見なければいけないということをやっと大先輩達が言ってくれたことに目覚めまして、そのことについて調べていきたいと思
います。



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