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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
1月15日の出版記念パーティより、愛知医科大学耳鼻咽喉科教授・愛知医科大学附属病院副院長 稲福 繁先生の講演をご紹介いたします。


「耳のはたらきと病気について」

 

愛知医科大学耳鼻咽喉科教授・愛知医科大学附属病院副院長

稲福 繁 先生

私と前の司会者・中山先生は、今、司会をされている瀧本先生の弟子であります。弟子の中でも、私は不肖の弟子で、中山先生は優等生でした。恩師の司会で、こういう講演会をするのは初めてです。とても緊張しております。この会の主催者である三好先生とは一昨年、中国にアレルギー性鼻炎の調査に行ったときに、先生の研究グループに同行させてもらってからのおつきあいです。最初にお会いした際に、三好先生からいろいろ、長時間の授業を受けました。実を言いますと、教授になってから2時間以上もの個人授業を受けたのは、初めてです。三好先生の造詣の深さ、医学だけでなく他の分野でも広い知識と見識を持ち、かつ出てくる文献の多さにはびっくり致しました。

本日は、ご招待いただき、有り難うございました。

前の講演の阿部先生が耳の機能について説明されましたので、その部分は省略したいと思います。 図1をご覧下さい。外から、外耳道・鼓膜があって、奥に蝸牛があります。鼓膜から蝸牛へ音が伝えられて聴こえるのです。蝸牛の横に三半規管というものがあります。この部分は平衡を司っています。蝸牛の中に毛のある細胞:つまり毛細胞というのがありまして、これが振動を感じて聞こえるのです。病気を起こすと、毛が無くなったり、変性したりして聞こえなくなるのです。毛が全くなくなる例もあります。突発性難聴という病気があって、聾になっている方がおりますが、多分、毛細胞は全く消えてしまうと思います。老人性難聴も毛細胞が徐々に無くなって行きます。(図2,3)正常の耳ではきれいに三列に並んでいるのですが、次第に無くなって行くわけです。この部の病気は、とても治しにくい病気です。三半規管は平衡を司っています。皆さんには平衡感覚というのがあるのですが、この三半規管に働いているからです。内耳の中には蝸牛と三半規管、さらに顔面神経があります。この3つの機能や病気を耳鼻咽喉科では扱っている訳です。

一般的に耳鼻科の医者は何をやってるかということですが、図の外側から、病気について説明します。


図1

図2

耳の前に小さい穴がある、この付近が何回も腫れるということがあれば、ぜひ耳鼻科に相談してください。先天性耳漏孔という病気です。中に袋があって、膿を持つ、こういう病気があります。子どもさんに多く、膿を持つと痛がります。抗生物質が必要です。

外耳道の病気から説明します。外側から初めていきます。

耳鼻科の外来をしていますと、耳に異物を入れて取れなくなったと言って来る患者さんもいます。写真は、4歳くらいの子どもが両耳にビーズを沢山入れて、耳が痛いと言って来ました。この方はパチンコ玉を入れて取れなくなって来院しました。両耳に入れてあるのです。入れた理由を聞きますと、「パチンコをしていたら、軍艦マーチがうるさくて、パチンコ玉で耳栓をした」と言うのです。この方は中学校の教頭先生で、私がいつも健診に行っている学校の先生でした。取れなくなったということで、電話をもらい、珍しいので耳の写真をとらせてもらうように頼みましたら、恥ずかしいから顔だけは隠してくれとおっしゃっていました。さて、寒いところでサーフィンをやってる方には、外耳道に骨腫が出来る方がおられます。徐々に大きくなって、聴こえなくなります。大きくなって、鼓膜が見えなくなってる方もいます。こうなると、骨を削って取ってあげるしかありません。取ると鼓膜がきれいに見えて、聞こえるようになります。

外耳道が湿疹状になって痒がる人もいます。綿棒か何かでかくものですから、外耳道炎になってしまいます。これは軟膏など治療が必要です。

具体的に耳の病気のことをいいます。急性中耳炎というのは、鼓膜が真っ赤になって腫れあがるんです。皆さんは中耳炎というと、たいていプールに入って中耳炎になったとかいいますが、実際には違います。耳鼻科医は、中耳炎の患者さんは鼻とのどを見ます。鼻とかのどから、耳管を通して、耳へつながって感染する、つまり鼻水が出て、鼻を強くかんだりして、膿が耳の中に入って感染するのです。感染して鼓膜が真っ赤になるわけです。耳鼻科に受診しますと、鼓膜を見て中耳炎と診断して、耳だけでなく鼻とかのども治療するのです。鼻やのどを治療しなければ、中耳炎は絶対に治りません。単に耳だけの治療では治りません。ですから、鼻とか喉の治療が一番大事なんです。鼻やのど、風邪のときに中耳炎が起きるということを、頭の中に入れておいてください。

耳と鼻やのどの全体図を見るとわかりやすいです。図1のように鼻、喉があって、耳管があって耳につながっています。唾を飲みこむと、鼓膜がぽこっと動きます。唾液を飲み込むたびに、耳管が開いて空気を出し入れする、圧力の調節をしているのです。つまり外界の圧力と中耳の中の圧力が同じようになっていないと、鼓膜が動くはずがありません。空気が入りすぎても、出すぎてもだめです。病気になったときの注意点を言いますが、鼻炎があったり、鼻水がいっぱいあって、強く鼻をかみますと膿が耳へ行きますから、皆さんが風邪を引いたときは片方ずつ軽く鼻をかむようにしないといけません。いきおいよく、ちーんとかむ人がいますが、あれは威勢がいいように見えて、耳鼻科医から見ると危険です。中耳炎を起こしてしまうことで、耳鼻科にとってはお得意様になりますね。中耳炎の時に耳鼻科医が鼻や喉を一生懸命治療するのはこれらの訳があるからです。

この子は、治療して薬をやったところですが、真っ赤になると白く膿が溜まって、こういう風に鼓膜がふくれあがってきます。

中耳炎がひどくなると、耳の後ろまで腫れ上がってきます。こうなると、手術せざるを得ません。いま、司会をして下さっている瀧本先生からは、耳の後ろまで腫れ上がると、早めに耳の後ろを切って膿を出せ、躊躇するなと、強く教えられました。夜の7時8時から手術をしたこともありました。耳の後ろだけなら対策もし易いですが、中耳炎から脳炎にもなる場合もあります。躊躇せずにやりなさいと言うのはこういう理由があるからです。

スキューバダイビングで耳の空気抜きが出来ないと中耳炎みたいになります。20mくらいもぐると、激痛がするそうです。急に上に上がりますと、潜水の病気にもなりますので危険です。耳の空気抜きが出来ていなくても駄目です。耳管に病気のある人は、20mももぐってはいけません。急性中耳炎が長引くと、鼓膜に穴があいて慢性中耳年になります。膿が出てしまって、鼓膜に穴ができてしまうんです。鼓膜に穴があきますと、こえも悪くなります。鼓膜の穴は、現在では簡単に治療できます。ご相談下さい。

前に講演された阿部先生は、このような鼓膜の手術を400例もしたそうです。驚きました。鼓膜がにきれいになって、聴こえがも良くなります。

子どもさんの耳の病気で滲出性中耳炎というのがあります。中耳の中に水がたまってしまうのです。急性中耳炎の治療が上手くいかない場合に起こります。薬を飲んで炎症を抑えてしまう、その後、中耳に水が溜まったままの状態になる、これが滲出性という中耳炎です。水が溜まると、振動が悪くなりますので、音が聞こえません。


座長の瀧本 勲先生

このような場合は、鼓膜から水を抜くか、鼻の中に管を入れて、空気を入れます。これをカテーテル処置といいます。治療の一環で、この治療法をぜひ受けて下さい。子どもさんの場合は、このような管を使わず、のどのほうから中耳へ空気を入れます。簡単にできます。それ以外の治療法として、鼓膜を切って、中の水を抜きます。抜いても何回も水が出る場合は、鼓膜にチューブを入れておきます。そうすると、中耳から外耳へエアーが抜けますので、鼓膜の中と外側の圧力差がなくなります。水も貯まらなくなります。もちろん、この治療を受けても、鼻と喉の治療は大切です。

中耳炎を放っておくと、真珠腫性という中耳炎になります。非常にひどい病気になります。骨がくずれます。これが一番多く、一般的には大きな病院で手術を行います。真珠腫性中耳炎から髄膜炎になる方もいます。三半規管の骨を破壊するとめまいを起こします。顔面神経を圧迫すると、顔面神経麻痺を引き起こします。これらは非常に大事な病気で、恩師に一生懸命教えていただいたのは、この手術です。

お見せしているスライドはカビが生えている外耳道炎ですが、中をよくみると、カビが一杯あって、臭いものがでてきます。この耳漏を全部とってみると、奥の骨に破壊があり手術になりました。中耳炎を放っておくと、骨を崩すような、骨が破壊されるような病気になる、これが真珠腫です。

先の講演・阿部先生の言われた感音難聴ですが、どこが病気を起こしているかと言うと、内耳から奥が病変部位です。聴神経、蝸牛、これらの病気が感音難聴です。鼓膜を見ても異常はありません。聴力検査をして、レントゲンを撮ります。レントゲンでも見にくい場所です。老人性難聴というのは、蝸牛から聴神経の病気です。もちろん、脳の中も多少は病気になってるかもしれません。これらは薬は効きません。補聴器しか方法はありません。しかし、補聴器でさえ使いにくい場合がありますので、補聴器店で直ぐ買うのはまずいでしょう。耳を診て、聴力検査をして、補聴器の指導をしてもらいながら補聴器を購入する、それで良いでしょう。補聴器は20万位もしますから。


稲福 繁先生

進行性難聴と言う難聴があります。この難聴は、徐々に聞こえが悪くなっていきます。老人性ならいいのですが、これが20、30〜40歳代でも悪くなる場合があります。今の医学でも原因はわかりません。何とか悪化をくいとめようと、循環改善剤や、ビタミンB1などのビタミンを中心に薬を出しています。今の医学ではこれしか方法はありません。年に数回の聴力検査を行いながら、薬を減らしたり、悪化したら点滴をしたり、こういうふうなことをやりながら経過観察をする、そう言う努力をして、聴力の悪化をくい止めているのです。

突発性難聴という病気があります。この病気では、ある日突然、聴こえなくなります。この場合には、必ず片方の耳だけで起こります。ロック難聴と言うのもあります。本当にロック難聴と言うものあるのかと思って、実際にロックコンサートに行ってみました。あのコンサートでは100デシベルくらいの音がして、隣の妻とも会話が出来ませんでした。2〜3時間のコンサートでしたが、私は30分も我慢できなくて、途中で帰ってきました。若い人だと、蝸牛はダメになりにくいかもしれませんが、耳が聞こえなくなる方もいます。 ウォークマンで難聴を起こす場合もあります。これらの病気は発症してから、2週間以内に受診すると、元の聴力に回復します。この病気では、痛くも痒くもありませんが、早く治療を始めるべきです。忙しいと言って1カ月も放置すると、治療を受けないと治りません。人間、耳は一生使うわけですから、片方だけあればいい訳ではありません。人生では何が起こるかわかりません。交通事故も多いですから。突然聴こえなくなったら、必ず早めに、出来たら一週間以内に受診してください。

メニエール病という耳の病気もあります。この病気では、蝸牛と三半規管が一緒に傷害が起きます。先ほど、阿部先生が言われたように、これはストレスで、間違いないと思います。内耳に水が溜まるようなことがおきます。睡眠をとる、ストレスを少なくするのも大事です。水分とか塩分を制限してください。汗を流して運動をしてください。めまいがするから、運動は無理かもしれませんが、自分で汗を流して水の代謝をよくすれば、、めまい発作を少なくすることが出来ます。病院では、点滴をします。普通の水の点滴をする場合もありますが、脱水剤の点滴もすることが多いです。

内耳道の中に腫瘍ができるときもあります。聴こえが悪い、めまいがするときに、レントゲンやCT、MRIを撮ります。聴神経から腫瘍ができる方は、結構あります。

三半規管だけのめまいもあります。良性発作性頭位性めまい症など、いろいろなめまい疾患があります。寝返りをうったら、ぐるぐるまわったりするのは頭位性めまい、、風邪を引いたあとにめまいがひどいと言う場合は前庭神経炎でしょう。早めに病院に来ていただくと、この原因が脳なのか内耳なのか、すぐわかります。めまいには、脳と内耳から起こるものがあります。脳溢血や脳梗塞などは命にかかわる病気ですが、内耳だとめまいはひどいですが、命にはかかわりません。これを判別するにはCTやMRIではなく、眼振という眼の動きを見ると分かる例が多いです。三半規管で起こるめまいは、命にはかかわりません。小脳や脳幹で起こるめまいは、命にかかわります。これらの鑑別の仕方は、耳鼻科医が得意です。こう言いますと、内科や外科の医者は怒るかもしれませんが、耳鼻科医はこの三半規管がどちらへ動くのか、眼がどう動くのかを見る手段があります。脳外科の先生などにとって神経学的に症状がはっきりしなければ、めまいはわかりにくいものです。しかし、小脳や一部の病気では、最初から手足が麻痺することはあまりありません。平衡神経をやっている耳鼻科医は、この三半規管がどういう機能をもっているのか、どういう検査が必要なのか分かっています。三半規管の病気と脳の病気の鑑別は、明確にできます。愛知医大では、めまいの患者さんは年間千名くらい紹介で来ています。自分で来ている方もいますが、600〜700名は紹介患者です。内科、外科からの紹介が多いのですが、耳鼻科医が判別できるから来ているのです。


左から瀧本勲先生、阿部隆先生、院長、
中山明峰先生、稲福繁先生
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顔面神経というのが内耳・中耳にあります。これが病気になりますと顔が曲がります。顔面神経が脳から出てきて、耳の中を通って耳介の下へ出てきます。よって、中耳炎でも麻痺する場合があります。中耳炎が無くても、顔面神経単独で麻痺する場合もあります。これを鑑別するのも耳鼻科医が優れています。経過を見る機会があるからです。例えば、耳の中に発疹ができながら、顔が曲がります。また、交通外傷で耳を骨折した場合でも麻痺します。湿疹がなくても麻痺する場合があります。これがどこの病気かを、耳鼻科医は判別できています。治療方針も耳鼻科では確立している病気です。

耳鼻科一般で、耳鼻科医が何を注意しながら患者さんを診ているか、ということでお話しを申し上げました。まとまらない話でしたが、これで終わりにしたいと思います。

 

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