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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

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スギ花粉症を追って(1) [1ページ2ページ3ページ4ページ]
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院長は京都大学大学院非常勤講師として年に1回京大で講義を担当しています。
今回は11月30日に行われた講義の内容の一部をお目にかけます。


今や日本人の国民病と言われる花粉症。予備軍も含め日本人の60〜70%の人がこれに悩まされているとも伝えられ、ほったらかしにできない病気です。

なぜってこれにやられたら、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりがおさまらなくなって、眼だってくしゃくしゃになってまるでお岩さん状態。

やっと訪れた遅い春だというのに、恋も語れなくなってしまいます。

なお国民病とは言っても、花粉症の原因はところによって違います。

日本全般に多く見られるのはスギ花粉症ですが、関東より西ではヒノキ花粉症も多発します。北海道ではシラカバ花粉症ですし、東北の岩手県ではカモガヤ花粉症がすごく目立ちます。

そう言えば欧米で花粉症と言うとき、その原因はスギではありません。

ヘイ・フィーバーと呼ばれる米国の花粉症はブタクサによるもの、英国のヘイ・フィーバーの原因はカモガヤです。


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英国・サフォーク州の光景
英国・サフォーク州の光景
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どうして地域によって花粉症の病態がこんなにも、違ってくるのでしょう。

その原因を探るとき、世界で初めて花粉症という病気の発見された英国の歴史がわれわれに考えるヒントを与えてくれます。

なぜならこの英国は、国全体に森林が少なく彼の地の花粉症の原因カモガヤの、生い茂り易い牧草地がはるばると広がっている国なのです。

ロビンフッドの活躍したシャーウッドの森、伝説の妖精の潜むオークの大木たち。

そんな木々の追憶の中にある英国ですが、なぜか今では森林は国土全体の面積の9%にしか見られません。それどころか現在の英国は、国土の45%が牧草地と化しており、この広さは世界一と伝えられます。

そしてこんなひろびろとした牧草地には、英国の花粉症の原因であるカモガヤが、いたるところに繁殖しているのです。

毎年初夏には、それらを牧草として家畜に与えるべく、子どもの背丈ほどもあるロールに作成し、サイロの中へ保存するのです。

当然その時期英国は、国中がカモガヤの花粉で溢れんばかりです。

実際このシーズンに英国をドライブすると、花粉がもうもうと舞い上がり、それを吸い込んだ人がどんな思いをするのか、容易に想像できるのです。

英国で世界初の花粉症が発見されたのは、決して偶然ではなかったのです。

それにしても英国では、どうしてそんなにもカモガヤの繁殖する牧草地の面積が、広がってしまったのでしょう。

英国が大英帝国として世界を制覇した、その歴史を紐解くとき、こうしたなぞが理解できます。

読者の皆さんにはしかし、大英帝国の軍艦の建造に、一隻あたり樹齢百年以上のオークの大木が、二千本は必要だったという事実をお伝えするだけで、十分でしょう。

ギリシャ、ローマ、スペイン、ポルトガルと、世界の海を制覇していた国が、没落するのには共通の理由があります。

軍艦製造のために国内の木々を切り倒してしまい、新たな軍備が不可能となってしまうのです。


この点、英国は恵まれていました。国内のオーク材はまだ消耗され尽くしていませんでしたし、北米からも、木材の搬入は可能でした。これからの木材がどんなに英国を救ったか、それはナポレオンのためにオランダやポルトガルがヨーロッパから姿を消したあの時期、英国だけが国境を守り切ることができた事実を思い浮かべても、容易に理解できます。

けれどもその豊かな木々も、やがて使い尽くされ資源が枯渇します。

そのとき、世界を制覇していた大英帝国では何が起こったでしょう?

そうです。産業革命が起こったのです。

それまで木材を材料としていた軍艦は鋼鉄の船に変わり、それを動かす動力も大木を使用したマストではなく、コークスを燃料としたそれとなります。


この故に、英国はそれまで以上に7つの海を駆け巡り、世界の大英帝国であることが可能だったのです。

その痕跡が、英国における9%の森林面積と、45%の牧草地となりました。そして牧草であるカモガヤが大量に繁殖し、全土に花粉を撒き散らします。

それこそが、英国で世界初の花粉症の出現した、最大の原因だったのです。
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関連リンク: 用語集 花粉症
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