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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
知っておきたい医学の知識Q&A
   
Q
ストレスが原因で耳が聞こえなくなるストレス難聴は、子どもがかかりやすい病気だと聞いたことがあります。本当なのでしょうか。また、ストレス難聴について教えてください。  
     
三好 彰先生

 

A.ストレスに関する難聴の種類

ストレスに関連する難聴には、いくつか種類があります。第一のタイプは、精神的・肉体的ストレスのために実際に内耳に病的変化が生じて聞こえが悪化するもの。第二のタイプはストレスに対する心理反応として、聞こえが悪くなるものです。この第二の場合、耳自体の機能は低下していないことが少なくありません。最近小児に多いストレス性難聴として注目されているのは、第二のタイプの難聴です。

さて、第一のタイプの難聴の代表として、低音(障害)型突発難聴があります。この場合には、過労・不眠・精神的ストレスが誘因となって、聞こえが悪化します。症状としては、耳がふさがった感じ(耳閉塞感)や低い(低音域の)耳鳴りが主症状であって、自分の声が大きく聞こえる自声強聴や換気扇の音などが強く響く聴覚過敏を伴うこともあります。早期の耳鼻科受診で良くなることが多いのですが、稀に難治のこともありますし、ごく一部にはメニエール病に移行して長期化するものもあります。その意味では、症状があまりひどくないからと放置すべきではありません。このタイプの難聴では、被験者に音を聞かせて合図させ聴力を確認する聴力検査(標準純音聴力検査)でも、音を聞かせて被験者のそれに対する脳波を確認する他覚的聴力検査でも、聴力悪化を明確に把握することができます。

 

機能性聴覚障害とは

一方、第二のタイプの難聴は精神的ストレスのために、実際には音が聞こえているのに音刺激に対して反応しないタイプです。別名を、機能性聴覚障害とも言います。成人で稀に生じることもありますが、最近話題になっているのは小児それも学校児が、学校健診で発見される第二タイプの難聴です。それらの中にも、実際はいくつかのサブタイプに分かれるものと推測されています。

  1. 学校健診の場が喧しい環境下にあって、検査結果の信頼性の薄い場合。
  2. 子ども自身の集中力の不足のために反応が不正確であったり、子どもが検査の意味を良く理解できておらず、的確な反応が返って来ていない場合。

誰が見ても明確なストレス下にある子どもの、ストレス性難聴は確かに存在します。けれども大人から見れば些細な変化しか見当たらないのに、当人にとってはさけて通れない巨大なストレスと受けとめている、そう考えるしか理解する方法がないケースも実存します。大人から見れば些細なストレスとは、例えば担任教師が替わったとか、クラス替えがあったとか、そんなストレスです。この場合検査結果では、全員ではありませんが、特異な結果の見られることがあります。ほぼ全員に観察されるのは、聴力検査での域値上昇つまり聴力像の悪化と、それにも関わらず他覚的聴力検査で正常反応を示すことです。そして奇妙なことに、眼科で視野検査を実施すると「らせん状視野狭窄」と呼ばれる、視野(見える範囲)の狭まりが検出されます。

この、自覚的な聴覚域値上昇と視野の狭まりは、考えすぎかもしれませんが、現実世界を認知したくない子どもの感情の身体言語として理解することも不可能ではありません。こうした子どもの心理機制を検出する目的から、箱庭療法などの心理療法が応用されることもありますが、臨床心理士の領域となります。ここでは耳鼻科医は、難聴の発見と確定診断そしてその後の聴力の変化のフォローを担い、教育関係者サイドは子どもの周辺環境の整備に全力を注ぐこととなります。ここで言う周辺環境に、家庭内の調整の含まれることは言うまでもありません。

 

ヒステリー性難聴と詐病

話は戻りますが、第二のタイプの大人のストレス性難聴では、いわゆるヒステリー性難聴と詐病とを区別せねばなりません。両者とも純音聴力検査で聴力像は悪化しており、それにも関わらず他覚的聴力検査では正常値を示します。後者では例えば、交通事故とその賠償が背景に存在することがあると言われます。前者は現代では見かけることは稀で、すでに伝説的疾患となっています。類似疾患として、20年くらい以前はヒステリー性失声を稀ならず見かけたものですが、これも最近はめったに見かけなくなりました。

ヒステリー性難聴やヒステリー性失声の減少には、社会精神病理の変貌が指摘されており、これも興味深いテーマです。これらを簡単にまとめますと、以下のごとくとなります。

  1. ストレス性難聴にはいくつかの種類がある。
  2. ストレスで内耳に病的変化の生じるものが一方に存在する。
  3. 他方、機能性聴覚障害とも称されるものも存在する。
  4. 成人のそれには、ヒステリー性難聴と詐病とが存在する。
  5. 小児の機能性聴覚障害には、健診のミスや集中力欠如以外に、子ども特有のストレスから難聴を呈するものが確実に存在する。
  6. その場合、他覚的聴力検査が正常で、視野検査でらせん状視野狭窄の見られることがある。
  7. これに対しては心理的アプローチの必要となることもある。

最後に、ストレス性難聴についてまとめた医学コミック(図)を、ご紹介させて頂きます。このコミックは、当院のHP(http://www.3443.or.jp/)でも閲覧することができます。ご参考までに。

 
関連リンク: 用語集 索引 難聴

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