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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 

名医のつぶやき 花粉症をあきらめていませんか?


そもそも、花粉症とは何か

花粉症に限らずある異物(抗原)がはじめて体内に侵入したとき、自分と同じか違うかを鑑別する。“非自己”と認識すると、免疫担当細胞でその抗原に反応する抗体(スギ花粉症にはスギ花粉に特異的な抗体)がつくられる。そして、二度目にその抗体が体内に入ってきたときは、抗体の動きでそれをすみやかに排除しようとする。花粉症の場合で言うと、鼻やのどの粘膜で抗原(花粉)と抗体が結合する(抗原抗体反応)。このとき、粘膜に多数存在する肥満細胞が破れ、なかに蓄えられたヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が放出される。ヒスタミンは「くしゃみ」や「鼻水」、ロイコトリエンは「鼻づまり」を引き起こす。

花粉症のつらい症状は、これら科学伝達物質によるもの。ヒスタミンやロイコトリエンをいかに抑えるかが、症状軽減の鍵を握る。

さて、花粉に対する抗体を持っているからといって、すぐに花粉症を発症するとは限らない。個人差はあるが、発症するかどうかは、過去にどれだけの花粉を吸ったか(積算曝露量)で決まる。昨日まで、花粉症を発症していなかった人でも、ある限界を超えたとき、突然、鼻水・くしゃみに襲われることになる。子供は花粉症になりにくいとよく言われる。積算曝露量の問題なのだから、生きてきた時間が短い子供が発症しにくいのは、当然のことである。

今年の1月末、日本気象協会が今春の花粉飛散を予測した「大量飛散であった2005年に比較すると、全国的に大幅減少し、二割前後のところが多くなる見込み」とある。しかし、油断はできない。去年大量に花粉を吸っている為、今年発症するケースも考えられる。大量飛散した1995年の翌年96年も患者さんの数が減ることはなかった。

 

花粉症は遺伝するのか

花粉症は遺伝するのか-良く聞かれる質問である。花粉症をはじめとするアレルギー疾患は遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って起こる。経験的に言うと、花粉症になる人は、家族にアレルギーのある方が多いようだ。家族にアレルギー体質の人がいるということで、花粉症を発症するか気になる人は、血液検査を受けるといい。花粉に特異的に反応する抗体の数値を調べると、花粉症予備軍の人はその数値が高くなる傾向がある。「近く発症する可能性が高い」という程度の予測は立つ。

何度も言うが「アレルギー疾患は、遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って起こる」。家族は同じ場所に暮らし、ほぼ同じ食べ物を食べて生活している。家族の誰かが花粉症なら、ほかの家族は非常に発症しやすい環境にあるということ。遺伝的要因も否定はできないが、生活習慣の影響が大きいと考えるべきである。

「あやしい」と思ったら、どうしたらいいのか

花粉症なのに、風邪だと思い込んで内科に行く方がいらっしゃる。すると、総合感冒薬を出される。そのなかには抗ヒスタミン剤が入っている。アレルギーの引き金となるヒスタミンが抑えられるため、一時的に花粉症の症状が治まるが、花粉症を根本から治療したわけではないので、またすぐに症状が出る。花粉が飛ぶ時期に鼻の症状がひどいようなら、耳鼻咽喉科に行くようにしたい。

もうひとつ、勘違いしやすいのが花粉以外のものが原因となって起こるアレルギー性鼻炎。多いのが、ダニやハウスダストによるもの。ダニが原因であれば、一年中、症状が現れるが、花粉症は季節性の病気だから、花粉の飛散時期にしか現れない。

話はややこしくなるが、花粉症の季節が必ず「春」かというとそうではない。花粉症の原因になる花粉はスギやヒノキだけでなく、60種類もある。たとえば、ブタクサというキク科の植物の飛散時期は8〜11月である。花粉症=スギというイメージは強いが、そうとは限らないことも頭にいれておこう。

 

症状が出たら、どうしたらいいのか

冒頭で述べたように、花粉症は抗原抗体反応である。つまり、抗原である花粉が体内に侵入しなければ、何も起こらない。まずは、花粉が飛びまわる時期に外出を極力控えるというのが第一。晴れた日、風の強い日、気温の高い日、雨のあがった直後などは特に注意が必要だ。

外出するときは必ず眼鏡やマスク装用を。衣服は花粉の付着しにくいすべすべした生地のものが望ましい。帰宅したら、パンパンと花粉を払い落とす。衣服から花粉を落としやすくするスプレーが人気のようだ。念を入れるなら、衣服を掃除機で吸うといいが、排気口から撒き散らすタイプもあるので要注意。

また、花粉が飛散する時期の布団干しも考えもの。日中、布団がたっぷりと花粉を吸い込み、夜間に花粉症を発症することも。持ち込まれた花粉を破れにくくし、アレルギーのもとになる物質が放出されないようにするスプレーも良く売れている。とにかく、家に花粉を持ち込まない努力を怠らないことだ。

生活習慣の改善だけではなんともならない人には、抗アレルギー剤の服用が効果的である。予防的役割であって、いったん出た症状をやわらげるものではない。薬の効果が出るのに二週間程度かかるため、シーズンに入ってからでは遅い。飛散時期が早まることも考慮して、飛散時期の一ヶ月くらいまえに耳鼻咽喉科で処方してもらうのが理想的だ。

一回の診察で三ヶ月分出せるので、忙しい人も一度の通院でかなりの期間をカバーできる。ちなみに、抗アレルギー剤は90日分で4,500円程度(三割負担)になる。

花粉症の症状が出てしまったら、抗ヒスタミン剤を服用するといい。花粉症の症状のほとんどは、肥満細胞から放出されるヒスタミンによるもの。予防的な作用はないが、いったん起きた鼻症状を速やかに治めるには最適の薬。副作用について心配される方も多いが、今の薬は改善されており、連続使用しても特に問題はない。ただ、緑内障や前立腺肥大のある人、抗うつ剤を使用している人、高齢者や妊婦、小児が服用する場合は注意が必要だ。

抗アレルギー剤と抗ヒスタミン剤の併用でも楽にならない場合は、即効果が期待できるステロイド薬を一時的に使用することもある。ただ、点鼻薬はともかく注射で使用する場合、副作用が大きく、あくまで一時的な処置である。一回の注射で一シーズン効果が持続するケナコルトというステロイド薬がある。花粉症の症状は抑制されるが、副腎皮質の働きもストップしてしまう。副腎皮質の機能が十分に戻らない可能性もあるので、当院では使用していない。

 

症状が重い人はどうしたらいいのか
症状が重く、より根本的な治療が必要な人には、レーザーで鼻粘膜を軽く焼く手術をおすすめする。費用は1万円程度(三割負担)、効果は一年間持続する。鼻粘膜を焼くというと恐いが、火で鼻の中を焼くわけでないし、鼻の機能が失われるわけでない。安心してやってもいい。

花粉症の症状の内、一番つらいの鼻づまりだ。くしゃみや鼻水はレーザー治療で対処できるが、鼻づまりには効果的な治療法がなかった。そこで、ソムノプラスティという治療法を推奨している。慢性の炎症を繰り返すと鼻粘膜は繊維化してしまう。鼻づまりの原因となるタコのようになった鼻粘膜は外科的に削るしかなかった。ソムノプラスティは、鼻粘膜の表面には害を加えず、その内側だけを壊して腫れた部分を小さくできる。鼻づまりの改善の秘策である。費用は1万5000円程度(三割負担)、効果は1年ほどである。鼻づまりが治ると、いびきにも効果があるので、一考を。

 
関連リンク: 用語集 花粉症

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