3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
わたしの好きな眼球観察
 
さつきさんの憂鬱
詳しくは、このコミックをご覧ください⇒めまい・五月病がテーマの医学コミック
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院長のめまいに関するエッセイが
「眼科と経営」誌No.93 2007年4月号に掲載されました。

「眼球を見るのが商売だ」と、耳鼻科医のわたしがそう言ったら、読者の皆さんはびっくりなさるでしょうか。

たしかに耳鼻咽喉科の仕事はそもそも、耳・鼻・のどの診察です。だからと言って決して、眼球についてまったくの門外漢というわけではありません。

耳鼻咽喉科医が耳・鼻・のどを診るのは、一つにはそれらが上気道の一部であって、相互に空間でつながりあっているからです。さらに、耳鼻咽喉科には「コミュニケーション医学」という側面があって、五感のうち触覚以外の感覚を担当しています。五感を担う重要な器官が耳・鼻・のどであるということが、つまり二つ目の理由です。それゆえに、12脳神経のチェックも耳鼻科医の大切な任務なわけです。

ことにわたしの好きな神経耳科学、すなわちめまいを扱ったり、12脳神経の機能検査で脳の状態を推察しようという耳鼻科学では、眼球にまつわる検査が欠かせません。当然わたしは、耳鼻咽喉科の診察室で毎日眼球をのぞいていることになります。

もっとも眼球の観察の仕方は、眼科医の皆さんとは少し異なるかもしれません。視野や視力の確認だけでなく、「フレンツェルの眼鏡」と称する特殊な眼鏡を赤外線カメラに接続し、テレビ画面に眼球を拡大して映し出します。そしてその動きを注意して記録するのですが、神経耳科学ではめまいのときの眼球運動をとくに大事にしています。

なぜならめまいではからだ全体が揺らぐのと同時に、特定の方向に向かって眼球がリズムをもって反復運動をします。これを眼球振盪あるいは眼振と呼んでいますが、めまいの種類や原因に特有の所見が得られるのです。

ですから、めまいの診断ではこの眼振をいかに目ざとく見つけるかが、すべてを左右します。そして、見事に眼振から特殊な疾患を見つけ出したときの満足感といったら、とても形容できません。わたしは眼球の観察に、のめり込みそうです。

もしもわたしの診察室をご覧になって、眼球が大きくテレビ画面に映っていたとしても、びっくりしないでください。神経耳科学から足を抜けなくなった耳鼻科医の、日常診療の一光景に過ぎないのですから。




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