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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
全薬ジャーナルNo.231 耳のトラブル

耳とひと言でいう場合、耳介つまり耳たぶのことを指すことが多いと思います。しかし実際には、耳は耳介をはじめ、外耳と中耳そして内耳とから成っています。

これら耳のパーツは、耳の機能すなわち音を聞くこと、および体のバランスをとることに関わっています。ですから耳のトラブルでは、聞こえが悪くなったり体のアンバランスが生じたりといった症状が出現します。また、顔面神経という顔の表情を司る神経が耳の中を走行していて、耳の病気で顔が曲がることもあります。

ここでは耳のパーツごとに、そのトラブルについて解説します。

1 外耳のトラブル

(1) 外耳道炎
 耳の皮膚を引っ掻いて、傷が付くことがあります。そこに細菌感染が生じて耳介がひどく腫れ、とても痛むことがあります。抗生物質を内服して、耳に触らないように心がけます。背景に耳の湿疹が存在して、ついつい耳を掻いてしまうことも原因となります。

(2) 外耳道ヘルペス
耳介もしくは外耳道にポツンと小さなできものができて、ひどく痛むことがあります。時には、できものがはっきりしないうちから強い痛みを生じ、頭の表面まで走るような痛みがひびくことがあります。ヘルペスウイルス感染で、三叉神経痛が生じた状態です。場合によってはこのヘルペスの感染が内耳に波及し、めまい・耳鳴り・難聴と顔面の麻痺を生ずることもあります。この場合には、早期から十分な治療を行う必要がありますので、早めの耳鼻科医受診を忘れないようにしてください。

2 中耳のトラブル

(1) 中耳炎

【1】急性中耳炎
風邪のときなど、のどから鼓膜の内側のスペース(中耳腔)に細菌感染が生じ、スペース全体が膿で充満してしまうことがあります。すると鼓膜が外側へ向かって強く圧迫され、ひどい痛みが発生します。子どもに多いのですが、大人でもゼロではありません。鼓膜にちょっと穴を開けてやり(鼓膜切開といいます)、抗生物質を内服します。

【2】慢性中耳炎
子どもの頃の中耳炎が、十分に治りきらないまま鼓膜に穴が残っていると、風邪のときなど感染を起こして膿が出ることがあります。放置していると細菌の毒素が耳に及び、聞こえが悪くなったりします。稀には、骨を侵して脳にも感染が波及することがありますから、気をつけてください。

【3】滲出性中耳炎
中耳腔に水のような炎症性の液体が溜り、鼓膜の動きが鈍くなります。結果的に聞こえが悪くなりますが、適切な治療で液体の貯留を取り去ってやれば、元の聞こえに戻ります。ただしこの滲出性中耳炎は子どもとお年寄りに多く、発見に手間取ることもあります。子どもは自分で「聞こえない」などとはいいませんし、お年寄りでは老人性の難聴(聞こえの悪化)と混同されることがありますので、注意が必要です。

3 内耳のトラブル

(1) 突発性難聴
ある日突然耳の聞こえが悪化することがあり、突発性難聴と呼ばれます。原因は不明なのですが、内耳の血管が詰まったりすることも原因となるようです。突発性難聴で重要なことが2点あり、注意が必要です。

1点は早期発見と早期治療で、突発性難聴の発症後1週間以内に治療を開始しないと、聴力の回復は難しいのです。

もう1点は、ごく稀に聴神経腫瘍と呼ばれる脳腫瘍が背景にあって、突発性難聴を生じることがある点です。頻度としてそんなに多いわけではありませんが、私のクリニックでは、1年に1例程度の割合で、聴神経腫瘍が検出されます。やはり用心に越したことはないようです。

なお突発性難聴では、内耳の音を感じる蝸牛というパーツばかりでなく、めまいを感じる三半規管などにも病変が及んでいることがあり、めまいを伴うことが少なくありません。

(2) メニエール病
内耳に浮腫(水ぶくれ)が発生して、蝸牛や三半規管などの機能低下や異常信号発生が起こるため、めまい・耳鳴り・難聴を繰り返す病気です。浮腫の原因は、まだよくわかっていません。めまい発作時にはグルグル回るめまいが生じて、気分がとても悪くなります。発作の治まっている時期にも、フラフラするめまい感はぬぐいきれないこともあり、やはり嫌な気分です。耳鼻科医は、めまいを治める内服薬や安定剤、吐き気止めや、浮腫を予防する浸透圧調整剤を処方します。

(3) 老人性難聴
人間の耳も、結局は人体のパーツですから、長く使用すると部品がすり減ることがあります。機械のパーツなら交換すればよいのですが、人体ではそうもいきません。すり減って性能の低下したパーツを、だましだまし使用するしかありません。

耳の聞こえもそんなわけで、年齢とともに悪化してきます。ただし、聞こえの悪化は、すべての周波数が同じように低下するのではありません。甲高い方の周波数から聞こえが悪くなりますので、ちょっと奇妙な現象が起こります。

まず、お年寄りは女性の声から聞こえにくくなります。その結果、奥さんから「私のいうことが聞こえないの!」と叱られることがありますが、悪意はまったくありません。

また、子音(さしすせそ)の聞き取りが悪くなりますから、言葉の端々がはっきり聞こえなくなります。すると話し掛けられていることはわかるのですが、その内容がうまく把握できないといったことも起こります。

加えて、小さな声は聞こえないくせに、大きな声はやたらにやかましく耳に響きますから、大声も苦手となります。この老人性難聴は、治療で治すことはできませんが、時に合併している滲出性中耳炎は、治療で楽になります。わずかでもハンディが解消されるとだいぶ違いますから、耳鼻科医での医学的チェックを忘れてはなりません。

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治療として補聴器の活用が重要ですが、その選択は慎重にすべきです。なぜなら、お年寄り一人ひとり、補聴器を必要とする場面が異なるからです。テレビを見るのに必要なのか、家族と団欒するのに役立てたいのか、会議や講演会を聞くのに不自由しているのかなど、補聴器の使用法がまるで異なります。店先でいきなり補聴器を買い求めずに、一週間くらいは試聴・貸出しをしてもらい、実生活の中での使い心地を確認してからお買い求めください。

また、お年寄りの難聴は周囲の人々の接し方も重要です。お年寄りに話し掛けるときには、真っ正面から、相手の目を見て、こちらの口元を見せてやるような工夫をして、ゆっくり・くっきり・はっきりと、話し掛けてあげるのが良いようです。

(4) 騒音性難聴
耳も人体のパーツの一つですから、あまりに大きな音に曝されるとくたびれます。その結果、聞こえも悪化するわけで、耳だっていたわってやらなければなりません。 突然ロックコンサートなどで大音響を聞いて耳を傷める音響性外傷と、仕事で長い間騒々しい環境にいた結果難聴となる職業性難聴とに分類されます。予防が肝心ですが、ことに後者は、検診で早期発見すれば悪化を防ぐことができます。


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