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夏かぜと夏の花粉症の違い

夏の花粉症のアレルゲンはイネ科の植物
 

本誌は7月号ですから、これをお読みになる時期は6月ということになります。この時期の花粉症は主にイネ科植物によるもので、カモガヤ・ハルガヤ・スズメノテッポウ・オオアワガエリなどが、花粉症の原因つまりアレルゲンとなります。

現在の日本ではスギ花粉症が有名で国民病といわれるくらいですから、カモガヤなどの花粉症が無名なのも仕方がありません。でも世界で初めて出現した花粉症は、じつはカモガヤ花粉症でした。

まだアレルギーなんて病気の知られていなかった19世紀初頭のイギリスでは、この時期家畜の飼料として牧草のカモガヤが大量に収穫され、乾燥のためサイロに収納されていました。するとこの作業に従事していた労働者の中に、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりと涙の止まらなくなる人たちが続出しました。この病気は当時、熱っぽくなるところからか「枯草熱」とよばれていました。つまり感染症の一種だと想像されていたわけですが、それを医学的に初めて報告したのがイギリスの学者ボストークで、これこそ世界で初めて発見された花粉症だったのです。

後日、枯草熱は感染症ではなくアレルギーであることが証明されますが、カモガヤ花粉症は1963年に発見されたスギ花粉症のなんと150年先輩であると、表現することもできそうです。花粉症の本家本元なのかもしれませんね。

 
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夏かぜの原因は
 

さて一方の夏かぜですが、かぜそのものがウイルスによる感染症であることは、ご説明するまでもありません。ただし二次感染といって、ウイルス感染で防御力の低下した人体に細菌感染が起こり、肺炎などが発生することもあります。

そして、冬のかぜと夏のかぜは、原因となるウイルスが異なります。冬のかぜの原因は、インフルエンザウイルスやライノウイルス、そしてコロナウイルスなどです。それに対して夏のかぜの原因ウイルスは、アデノウイルスやコクサッキーウイルスに加えてエンテロウイルスなどです。

これらのうちアデノウイルスは、俗にプール熱として知られる咽頭結膜炎を引き起こします。プールで感染することが多いのでこの名前がついていますが、プールの始まる時期に発症します。症状として、急な発熱とのどの痛み、それに結膜炎を伴います。学校伝染病に指定されていますから、教育現場で問題になる夏かぜと言えそうです。

コクサッキーウイルスはヘルパンギーナの原因となりますが、4歳以下の子どもに多く急な高熱とのどの痛みが主症状です。のどに水疱(水ぶくれ)が出現することがあり、これは破れてかいようになりますが、強い痛みを伴います。

また、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどにより、手足口病を発症することがあります。6歳以下の子どもに多いのですが、3歳以下が70〜80%といわれています。手・足・口の中に水疱が出来、破れてかいようとなります。丘疹(ぶつぶつ)も、手のひらやひざ、そしておしりなどに発生します。発熱は少なく30〜50%といわれます。


夏かぜと夏の花粉症の違い
 

ですから症状で夏かぜと夏の花粉症を区別するとしたら、以下の項目に注意していただきたいと思います。

花粉症は、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりなど鼻症状に加え、涙をはじめ目の症状が特徴的です。熱っぽくなる感覚はあるかもしれませんが、発熱は見られません。

それに対して夏かぜでは、発熱・のどの痛み・発疹が出現しますし、下痢など消化器症状を伴います。

ですから、夏の花粉症の存在について正確な知識があれば、両者の区別は難しくありません。


カモガヤのエピソード
 

ところで夏の花粉症の代表選手であるカモガヤについては、いくつかの興味深いエピソードがあります。

カモガヤという植物はもともと日本には存在しなかったのですが、明治維新前後に牧草として渡来したことが知られています。それが牧草地以外に繁殖するようになり、全国に広がるようになったと考えられています。

その花粉飛散時期は、本州で普通5月上旬〜6月中旬で、時間帯でいえば早朝に多いのが特徴です。

花粉症というものは全体に、花粉の暴露期間がいわば季節限定で短いので、感作(アレルギーになること)に長い時間を要するため、成年期になって発症するものです。その中にあってカモガヤ花粉症は小児期の感作が多く、幼児期から典型的な花粉症症状を示すとされています。

こうしたカモガヤ花粉症の低年齢での発症は、アレルゲンの強さやその地域でのカモガヤの植生などカモガヤ側の条件が、一つには考えられます。けれども、そればかりが原因ではなさそうです。

写真 カモガヤ
(出典:佐藤紀男・監修『目で見る花粉症の原因植物』)
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左に示したカモガヤの写真を見て、ご自分の小学生時代を思い出す方がおられるかもしれませんが、登校時にこの草を手にとって振り回して遊んだ記憶のある読者は、決して少なくないのではないでしょうか。

そうなんです。ただでさえ花粉を飛散させやすい早朝の登校時に、カモガヤを手に摘んで振り回して遊んでいたら…その子どもたちは、たちまち大量のカモガヤ花粉の暴露にさらされるに違いありません。

濃厚な花粉の暴露にさらされる機会がきわめて多い、それこそが、子どもの時期からカモガヤ花粉症を発症する最大の原因であろうと、容易に推察できるのです。


夏の花粉症の予防策
 

花粉症はアレルギーで抗原抗体反応ですから、アレルゲン(抗原)に接触しなければ発症しません。ですから夏の花粉症の予防策は、主にカモガヤの花粉への暴露を避けることが一番です。

カモガヤの密生地域を調べておき、晴れた日の早朝には散歩などで不用意に花粉を吸入することを避けるのも賢明です。飼い犬の散歩で河川敷のカモガヤ密集地帯を走り抜け、発作がひどくなったのは犬のせいだと信じ込み、犬を手放そうとした花粉症の方もおられましたが、それでは犬がかわいそうです。

子どもには登校路や校庭のカモガヤを教えてやり、それをけったり手に取って振り回したりしないよう、教育してやることも必要でしょう。

どうしても地理的な関係上、カモガヤを避け難いようでしたら、耳鼻科医にご相談いただくことをお勧めします。

また、アレルギーについてさらに詳しい情報が必要でしたら、当院HP(http://www.3443.or.jp)内の「愛しのダニ・ボーイ」(アレルギーに関するコミック)をご参照下さい(左図)。

 
愛しのダニ・ボーイ
「愛しのダニ・ボーイ」
アレルギーについての医学コミックを当院HP(www.3443.or.jp)で読むことができます。


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