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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
心のオアシス〜花粉症とその対策について〜


子どもの花粉症が増えている

子どもは花粉症(スギ花粉症)になりにくい、そう言われてきました。
これはもっともな話で、花粉症はアレルギーです。そしてアレルギーは抗原抗体反応ですから、抗原(アレルギーの原因という意味でアレルゲンともいいます)の量の多いほど、アレルギーになりやすい傾向があります。逆に抗原の接触量や時間が乏しければ、アレルギーは発症しにくいのも事実です。

花粉症など鼻症状が中心となるアレルギーを、アレルギー性鼻炎と称しています。このアレルギー性鼻炎の原因には、スギなどの花粉以外にダニやハウスダスト(家のちり、HDと略記)などがあります。これらのアレルゲンのうち、ダニやHDは一年中身近に存在しますから、人体はいつもこれらのアレルゲンの刺激を受けています。結果的に、ダニやHDのアレルギー性鼻炎は、比較的発症しやすいと考えられます。

それに対して、スギなどの花粉は一年のうち飛散時期が2カ月程度に限定されており、人体に接触する時間も2カ月くらいです。つまり単純に接触時間を比較するならば、スギ花粉に人体がさらされる程度はダニの6分の1となります。そこから考えると、もしも人体がダニに接触してアレルギーとなる(これを感作されると表現します)のに1年間かかると仮定するならば、スギ花粉に感作されるには6年間が必要だとの計算が成り立ちます。

ですから、スギとともに過ごす時間が長かった大人は花粉症になりやすく、花粉に接触する人生のまだ短い子どもは、花粉症になりづらいのです。

とはいえ、アレルゲンとしての花粉の量がけた外れに多かったとするなら、話は少し違います。たとえ接触時間が2カ月であっても、子どもも十分感作される可能性があります。

そしてじつは、花粉を飛散させるスギの木自体が、毎年その数を増やしてきているのです。
スギの木は樹齢30年を迎えると、花粉を飛散させやすくなります。スギ林が現在日本中で多量の花粉を飛散させているのは、図1に見るように1950年ごろに大量植林されたスギの木が1980年前後に30歳になったからです。

実際スギ花粉症が爆発的に増加して、日本人の国民病扱いされるようになったのは1979年からです。理屈どおりだと言えば、それまでなのですが。

スギ植林はその後も継続的になされていましたから、花粉を飛散させるスギ林の面積は増え続け、花粉の飛散量も以前とは比較にならないくらい多くなりました。

その結果、花粉をたくさん吸い込む子どもたちの数も増加し、それはそのまま子どもの花粉症の増加となって表れます。子どもの花粉症が増えたとささやかれていることには、裏づけがあるのです。

ただし、子どもの花粉症は見過ごされている可能性も高く、実数はさらに多いと理解しなければなりません。なぜなら花粉症の、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりといった典型的症状を子どもは呈しにくく、鼻や目をかゆがって顔をしかめてみたり、かゆい鼻をこすって鼻血をだしたりすることの方が子どもでは一般的なのです。子どものしぐさの変化に注目すると、花粉症に気づきやすいのではないでしょうか。

花粉症対策の実際

花粉症増加の原因が、大気汚染だとか、寄生虫減少の結果だとか、俗説は現在では否定されています。ここまで書いてきたように、アレルゲンであるスギ花粉の量的な増加が花粉症激増の直接の理由です。ですから、花粉に接触しないよう工夫を凝らすことが、花粉症発症の最大の予防であり、症状増悪の何よりの防止策です。

そのうえで、あまりに強い症状に対しては、医療機関で適切な処方や手術などを受けるのが実際的と言えます。

なぜなら、「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」と言います。花粉症においては敵(花粉)に対する対応策と、己(人体)の弱点に関する治療は不可欠だと、孫子でさえ明言しているほどですから…。

花粉症対策としてはとにかく花粉との接触を避ける工夫が、何より大切です。
花粉飛散量の多い晴れた日の外出を避ける、外出時にはマスクやゴーグルで花粉をブロックする、花粉の付着しやすい生地の衣服は控える。そんな外での注意点と、帰宅したときには衣服の花粉をよく払い落とす、うがい・洗顔で花粉を洗い流す、室内に入り込んだ花粉を床からまき上げないように掃除する、窓を密閉して花粉の室内への侵入を防ぐ、などがあります。注意すべきは布団干しで、うっかり花粉の多い日に一日中外で布団を干すと、花粉たっぷりの仕込み布団が出来上がります。夜中に布団の中で花粉症発作を起こしたりしないよう、気を付けましょう。

愛しのダニ・ボーイ   花子さんの場合
図3
「愛しのダニ・ボーイ」

→こちらのページで閲覧できます
  図2
「花子さんの場合」

→こちらのページで閲覧できます

こうした花粉対策だけでは症状の治まらない人は、医療機関の活用がお勧めです。

この場合も先手必勝ですから、シーズン前に医療機関で原因究明(アレルゲンは花粉だけなのか、ダニなどの対策も必要か、など)を済ませ、予防的に内服薬を開始するかレーザーなどの外科的処置を受けておくと、シーズン中が楽に過ごせます。最近は長期処方が可能となっており、花粉症シーズン3カ月間分の内服薬を事前に用意しておくこともできます。シーズン中の込み合う医療機関には、あまり行きたくないですものね。

町中の薬局でも、少し弱めの花粉症向け内服薬を入手することができます。シーズン前の医療受診が間に合わなかった人には有効活用していただきたいものです。

本文をお読みいただいて、もう少し詳しい知識が必要な方には、当医院HP中の医学コミック「花子さんの場合」もしくは「愛しのダニ・ボーイ」が有用です(図2・図3)。ぜひご覧になってください。



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