

一枚の絵が、私たちのクリニックの壁に懸っている。大勢の子どもたちをいつも見守っている、その絵の名前は「ポコポコ」。
生命の賛歌に耳を傾けようと一生懸命萌え出る希望たち、がそこには描かれている(写真1)。
こののびやかな、豊かな絵を描いてくれたのは木村建さん。筋ジストロフィーの不自由な体の中に、自由な情熱を溢れさせた芸術家だ(写真2)。彼の情熱は筆に不思議な力を与え、筋ジストロフィーのその姿からは想像もできない希望たちの芽生えが描かれる。
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写真1:「ぽこぽこ」
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筋ジストロフィーはいやな病気だ。何の障害もなく生まれついた子どもが、あるときを境に急に足が弱くなる。それからいつしか歩けなくなり、車イスでの生活を余儀なくされる。十歳前後のことだ。体全体の筋肉の衰えはその後も留まることなく、あらゆる動作が制限されるようになる。そして全身が衰弱し、やがて息絶える。それは、わずかに病気の発症後十五年以内のことである。
それにもかかわらず、いやそれゆえに、この病を担った人びとの心はあこがれを忘れ得ない。青空へ向かって伸びて行く、切ない希望を忘れない。彼の「ポコポコ」に描かれたのは、そんな萌え出る希望たちだった。
仙台には、この筋ジストロフィーの人びとを中心に、障害者が自分たちで生活している自立ホームがある。仙台ありのまま舎だ。そこでは、日常の生活をボランティアの献身と共に自身で生きる他に、障害を持った仲間たちのために年一回絵画展を開催している。
彼の「ポコポコ」シリーズ前作も、絵画展で既に特別賞を受賞しており、私たちのクリニックの「ポコポコ」も今年出展される。彼の絵に込められた情熱は、きっと見る人すべてに希望の息吹を感じさせてくれるだろう。彼が絵に込めた情熱とは、具体的にはこういうことだ。
第一に、筋ジストロフィーによる障害のために、彼は絵に必要な線が引けない。「ポコポコ」がユニークな点描写なのは、実は彼が点しか描けないからなのだ。
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写真2:「筆を執る木村さん」
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第二に彼は、点を描くための筆を持つ体力がない。普通の筆では重すぎる。彼は0号の筆の毛先をさらに切って、軽くして描いている。
第三に、この「ポコポコ」を彼はベートーベンの第九を聞きながら描いた。
ポコポコたち、つまり芽生える希望た
ちはこの絵の中で、生命の賛歌に耳を傾けているのだ。障害があればあるほど燃える、生命の賛歌に。
一枚の絵が、私たちのクリニックの壁に懸っている。大勢の子どもたちをいつも見守っている、その絵の名前は「ポコポコ」。生命の賛歌に耳を傾けようと、一生懸命萌え出る希望たちが、そこには描かれている。
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