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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

 

9月27日・28日の両日、三好院長が理事をつとめるNPO団体日本ヒアリングインターナショナル(NPO-HIJ)主催のベターヒアリングフォーラム2008が、東京国際フォーラムで開催されました。
今大会では三好院長が大会長を務め、難聴者の現状を講演しましたので、その様子をご紹介致します。


それではまず、日本ヒアリングインターナショナルについてご紹介いたします。


日本ヒアリングインターナショナル(NPO‐HIJ)は、1992年の発足以来、難聴の予防、聴力障害者の早期発見・支援および治療などのNPO/NGO活動を国内外で行ってまいりました。

平成15年〜17年度には、JICA草の根パートナーシップ・インドネシア難聴者支援センター設立受託事業を実施完了。平成19年度は南京医科大学耳鼻咽喉科と共同で、チベット自治区ラサ人民病院へ医療機器の寄贈と現地スタッフの指導を行いました。今後もHIJは聴覚スクリーニング体制確立のため、途上国各地を舞台にその支援を継続して行く予定です。

また、国内でも専門家・市民が取り組むべき課題について共に集い・学ぶための場として『ベターヒアリングフォーラム』を年次開催しており、一般の皆様向けの都民講座も今年で3回目を迎えます。本フォーラムは、専門家や市民、きこえの問題を抱える人たちとの間の意見交換・意識の共有の場になる事を目的としております。

東京国際フォーラムの大ホールです。
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まず、三好院長が開会の辞として昨年のチベットでの調査の様子や、今年9月に終えたばかりの中国調査の様子をムービーでご紹介致しました。

続いての来賓祝辞では、自民党大西英雄先生のご挨拶がありました。

先生はスピーチの中で、先進国とは違、途上国の中には耳が聞こえないことを自ら認識しないまま一生を過ごす人たちも少なくないことに触れ世界における難聴の現状を広く知って頂きたい、と仰っておられました。


次に南京医科大学の程雷先生が、講演をされました。
中国における難聴者の現状について、実際の調査結果に基づいて分かりやすくお話していただきました。

中国の全国レベルでの疫学調査の内容からはじまり、難聴の頻度や原因などにまでスポットを当ててお話くださいました。中国でも60歳以上の方の難聴の割合は高いといいます。
難聴に対する予防の試みについての紹介もありました。積極的に聴覚障害と向き合おうと大変な努力をなさっているようです。

最後に、NPO‐HIJの調査・研究活動についての紹介がありました(検査機器類の寄贈や施設訪問など)。

講演をする程先生。
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第2部は秋田県立リハビリテーションセンターの中澤操先生の講演です。
中澤先生は、『聴覚障碍 この頃思うこと』という演題で、現在の日本の様子をスライドをまじえてご紹介いただきました。

写真のスライドの他に、字幕のスライドが用意されており日本語、英語、中国語でプレゼンをなされていました。
難聴学級の現状について、写真でその様子をご説明して頂きました。
秋田県立ろう学校での学校生活の様子や勉強をしている様子、新生児期の聴覚スクリーニングの重要性と難聴発見後の対応(補聴器装用、手話教育など)について、講演されておりました。

 

親子で診察をうける様子を
紹介する田中先生です。
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最後は、田中美郷教育研究所の田中美郷先生です。田中先生はまず、「すべての子供に無限の可能性がある」との三好院長の言葉を引用され、そうした子どもから様々なことを教わる場面が多い、と仰っておりました。そして、1960年に信州大学の鈴木篤郎先生が発表された、幼児聴力検査法CORテストの紹介や、手話には言語としての構造があり、言語とは音声言語および手話その他の形態の非音声言語を含むというお話をされておりました。



第4部は、講演いただいた先生方によるパネルディスカッションです。 
こちらでは、HIJ理事長中川雅文先生を進行役としてスタートし、院長もパネリストとして参加致しました。テーマは、高齢化社会における補聴器の意義、そして少子化社会の中でのハンディキャップを持った方がコミュニケーションをとれる社会の構築。障害者に対してどうあるべきかを4名の先生方と、参加者を交えて意見交換をしました。 

丁寧に説明をする中澤先生。
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南京医科大学の程先生は、中国における聴覚障害者は全体の1.04%(1300万人)おり、また、江蘇省で調査を実施した結果、60歳以上の聴覚障害者の割合は58%を占めているとの事です。そういった面からも、今後とも難聴の方々に対する支援や研究がさらに必要になるのではないか、とお話されました。

中澤先生は、難聴児の発見から療育、就学、自己肯定感の確立、社会環境の整備について一つ一つのプロセスを説明されました。
主に、秋田県における現状をご紹介頂きましたが、世界に目を向けると北欧の先進国の状況や、ユーラシア大陸の非常に険しい自然の中の様子、また補聴器が供給できないろう学校でも、きちんと手話や書記言語などの教育をしているというお話をされました。

帝京大学の耳鼻科医だった田中先生は、大学をやめてからは私的研究所を運営されており、教育分野やリハビリテーションなど国際会議の中にも、手話を取り入れていきたいと目標を掲げておられました。院長は中川先生の難聴、聴覚医学にたいする啓蒙発展に賛同し、2007年のチベット調査でもご一緒したと話をしました。

さらに聴覚障害を持たれる方に対しては、心のケアも含めて対応をしていかなければならず、耳が聞こえないという事は、いかに孤独感が強いものかという事を知って頂く必要がある、と言っておられました。


先生方のお話しのあとは参加者からの質問があり、ある方は『家族にどのように受診をすすめればいいのか?障害を持つ子どもは、今度の進級の際に障害学級にした方がいいのか?』と悩みを打ち明けられる場面もあり、またある方は、『補聴器の価格の高さに疑問を持たれ、携帯電話に集音機能を兼備し、イヤホンで聞けるような機種を開発して欲しい』、と言った意見まで出されました。

ご自身も補聴器装用を経験した方より、『以前に補聴器を付けていた頃に、めまいや耳鳴りがひどく装用を断念した事があった。実際、耳に悪影響はありますか?』との質問があり、次のように中川先生がお答えしました。

質問に答える、中川先生です。 熱心に質問する参加者。
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補聴器には調整が重要となります。十分な調整をせずに装用したため、めまい・耳鳴りといった症状が出たのではないかと思われます。耳の神経は筋肉と同じで、使いすぎると疲れてしまいます。適切な調整をすることで、耳への負担を軽減することが重要になると思います。

今回の大会は、医療関係者はもちろんのこと、補聴器メーカー関係者や一般の方の参加も多くありました。中には難聴を抱えた方やそのご家族もいらっしゃいました。会場は、最新の設備が整った素晴らしいホールでした。前の座席数列は難聴者のための設備(磁気誘導ループ)が設置されており、きこえに配慮されていました。


補聴器に直接音声を送り込むための機材です。通常、補聴器は音を全体的に大きくする機材なので、周囲の雑音により音声の聞き取りが難しい場合があります。磁気誘導ループによりもたらされる磁気を受信し、音声信号に変える事で雑音の少ないクリアな音声を聴く事が出来るのです。

また、スクリーンは左半分が発表者のプレゼンテーション画面なのですが、もう半分は難聴者のための文字情報(要約筆記)をリアルタイムに表示するシステムでした。

会場の受付フロアには、昨年のチベット調査のポスター展示を行いました。その中では現地の小学校での健診の様子や、ラサ人民医院訪問の様子やHIJから寄贈された聴力検査機器類の紹介をしました。また、発展途上国への寄付や支援のための資金とするため、HIJのオリジナルTシャツの販売も行いました。会場のボランティアスタッフのユニフォームにもなっていたようです。また、HIJ理事長中川雅文先生(みつわ台総合病院副院長)監修の耳ストレス解消CD『耳サプリメント』も、お買い求め頂けるようになっておりました。


2日目は別会場にて、医療者向けの学術セミナーが開催されました。
フォナック・ジャパンの川津潤先生の講義では、実際のFM補聴器が用意され、きこえを実際に体験することができました。


補聴器は離れた場所の音を拾うとき、他の音が邪魔をして本来聞きたい音が聞こえなくなります。聞こうとする音との間に距離がある場合や、壁や天井による反響がある場合、聞こうとする音が聞き取りづらくなってしまうのです。

セミナー会場内 FM 補聴器の本体とイヤホンです。
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FM補聴器は、話し手の口元に置かれた外部マイクを使用し、FM電波を利用して話し手の声を補聴器に伝えるシステムです。補聴器のマイクロフォンがあたかも話し手の口元に移動したのと同様の効果が得られるため、周囲の雑音、距離による音の減衰や反響音による悪影響を軽減します。 FMシステムは送信機(外部マイク)と受信機からなり、受信機はアダプターを介して補聴器に接続します。
同じくフォナック・ジャパンの深澤佳道先生の講義では、『薬事法の関連法規類(販売関係)の要点について』のお話がありました。

法律の面から補聴器販売に直面している問題点や、遵守すべきポイントについての講義でした。補聴器を販売するうえでの心構えを、あらためて学んだ気がします。東京医科大学聴覚人工内耳センターの河野淳先生の講義では、子どもの言語獲得のメカニズムから、補聴器の限界と補聴援助システムについてのお話がありました。また、それに関連してFMシステムについてのお話もありました。

子どもの言語習得にとって、できる限り品質の良い音声を保証することの大切さや、補聴器の援助システムについて丁寧にご説明がありました。各講義後の質疑応答では、補聴器メーカーや耳鼻咽喉科医師はもちろん、その他専門家の方々の間で活発な意見交換がなされていました。補聴器の置かれてる現状から、今後の展望まで熱心なやりとりがなされていました。

フォナック・ジャパンの深澤さんと院長。
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今回のフォーラムに参加させていただいて、貴重な経験を幾つもさせていただきました。きこえについての理解を深めること、そしてそれを一般の方々と共有し合うことの素晴らしさを強く感じることができました。

関連リンク: 用語集 日本ヒアリングインターナショナル
  田中美郷先生講演ムービー

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