3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 

院長が学会発表をしました。




図1 症例は71歳の男性で、いびきと無呼吸を訴えて当院を受診しています。 図2 99年に行なわれた労災病院の検査結果ですが、酸素飽和濃度の低下は中等度に留まっています。 図3 それに対し、当院のPSGでは重症の睡眠時無呼吸症候群が確認され、CPAP装用を開始しました。ECGでは上室性期外収縮を指摘されていますが、脳のMRIでは年令相応の変化のみとなっています。本症例は05年11月に眼の焦点が合わなくなり、下肢脱力感も出現したため泉病院に救急入院となりました。
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図4 入院時の所見は、左眼内転障害を認めるのみでした。 図5 泉病院での入院加療後症状はほぼ消失しましたが、心疾患は新たに治療開始となっています。(VTR)泉病院退院後の本症例の眼振所見では、左方へ向かう回旋性の眼振が観察されます。 図6 退院後、CPAP継続のために当院を受診しておりますが、その折の聴力検査と眼振の記録です。この所見は、右側延髄の障害を示唆しています。
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図7 このため泉病院の画像診断を確認したところ、拡散強調画像で右側中脳に新鮮梗塞が認められ、MRAでは脳底動脈と右側椎骨動脈の描出不良が判りました。なお、当院で02年に撮影してあったMRIと05年の泉病院のそれとでは、スライスの角度こそやや異なるものの後者では、右側椎骨動脈の閉塞が見いだされました。 図8 中脳の高信号領域について、対応する脳の切片をお示ししました。大脳基底核に繋がる黒質に新鮮梗塞が認められ、下肢の脱力感の原因かと推測されます。
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図9 黒質と大脳基底核そして錐体外路の関係を示します。 図10 これらの所見とその意味とを、ここにお示しします。つまり、左眼内転障害・下肢脱力感と拡散強調画像の右側中脳の高信号および脳底動脈の描出不良は、両側中脳の障害を示しています。また、左方へ向かう回旋性眼振と右側椎骨動脈の閉塞は、延髄右側の障害を意味しています。他の神経症状は明確ではなかったものの、延髄外側症候群の不全型と表現できるでしょう。 図11 さて、脳底動脈の最上端、後大脳動脈と後交通動脈との間は中脳動脈とも呼ばれ、ここから中脳を栄養する数本の細小動脈が出ています。
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図12 具体的には中脳の栄養動脈は視床への動脈から分岐しており、それは時に両側性ではなく片側の視床動脈から両側の中脳へ動脈分布のなされることもあります。このために脳底動脈最上端の閉塞病変では、両側の中脳に梗塞を来たし易いとされます。本症例でも、MRAで脳底動脈の描出不良がみられており、両側中脳の梗塞が生じているものと判断されます。拡散強調画像における右側中脳の高信号と左眼内転障害は、その結果と思われます。この脳底動脈閉塞病変の原因としては、塞栓が多いと言われています。本症例の閉塞病変の原因を断言することはできませんが、循環器系疾患など背景因子の存在は確実です。 図13 また中脳梗塞は、そのほとんどが周辺の虚血性疾患を伴う、とされています。本症例の椎骨動脈閉塞も、こうした原則の例外ではなかったものと考えることができます。 図14 まとめ、です。本症例の左眼内転障害および下肢脱力は中脳の障害に、左方へ向かう回旋性眼振は延髄の障害に起因するものと判断されました。これらのうち、中脳の障害は脳底動脈最上端の分岐部閉塞により、両側中脳への細小動脈の血流不全が生じて発生したものと推測されます。拡散強調画像における右側中脳の高信号、並びに左眼内転障害はこれらのあらわれと解釈できます。他方延髄障害の症状は、右側椎骨動脈の閉塞による延髄外側症候群の不全型と理解することができました。それらの背景として、高血圧や心疾患の関与が考えられます。以上、中脳梗塞に延髄外側症候群を合併した1症例について、報告致しました。
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関連リンク: 用語集 ワレンベルグ症候群
  用語集 めまい

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