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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 

2008年全国保険医団体 連合会医療研究集会

 
当院補聴器外来の現状
看護課 工藤 智香
昨年、10月12日(日)に、仙台国際センターに於いて第23回保団連医療研究集会が開催されました。

私は12日に開催された第2分科会B『医科診療の研究と工夫』において『当院補聴器外来の現状』という演題で発表をさせていただきました。共同研究者として、ご指導いただいたフォナック・ジャパン株式会社の深澤氏に同席していただきました。

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 当院では毎月2回、予約制で補聴器外来を行っています。
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 補聴器外来では、専門医による診察・検査結果に基づき、補聴器が適応となるか判断させて頂いた上で装用をおすすめしています。中耳炎など治療を要する疾患ではその治療を優先させるため、全ての方にそのまま補聴器が適応となるわけではありません。
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 補聴器のフィッティング(試用・調整)だけでなく、補聴効果を判断するためことばの聞き取り検査など各種検査をうけていただき、装用の評価も行っています。
 購入後もメンテナンスや定期的な検査・診察を受けていただくことによって、安心してお使いいただけるシステムになっています。
 もちろん、中耳炎がある場合や耳垢がつまっている場合などもありますので、難聴の原因を探る上でも、補聴器装用前の検査はなくてはなりません。
  また、補聴器の装用効果を客観的に評価するための検査として、実際に補聴器をつけた状態で聴力検査を行っています。
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 検査、診察を経て補聴器が向いていると判断された方には補聴器外来のガイダンスを行っています。最初のご案内は補聴器外来の概要の説明、予約、問診を行います。
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 難聴には様々な原因があります。
 くり返しますが、診察や各種検査にて原因をつきとめ、治療が必要な疾患があった場合には治療を優先することになります。とくに突発性難聴や、めまいや耳鳴りを伴う難聴は要注意です。
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 次に補聴器外来についてです。
 補聴器外来では、カルテや各種検査結果、そして問診から患者様にぴったりの補聴器を選択していきます。
 まずは、ご自身の耳で何が起こっているのかをご理解いただき、さらに補聴器とはどういうものかその特性を知っていただきます。
 ポイントになるのは、どんな場面できこえに困っているのかということです。特にはじめてお使いになる方にとって不安感や抵抗感はぬぐえないものがあります。
 問診では、患者様やご家族と同じ立場で向き合うことが重要な要素といえます。
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 こちらは補聴器外来の様子です。
 補聴器外来はクリニック内にあります補聴器相談室で行います。お1人約1時間ほどになります。
 相談室では補聴器のフィッティングを主に行っており、また、ご希望があれば当日に診察が可能です。
  さらに、各種検査が必要な場合はすぐに検査室へご案内することができます。
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 それでは、きこえに困る場面とはどういったものでしょうか?
 騒がしい場所での会話や遠くの話し手の声がききとりづらいということがあげられます。また、とっさに話しかけられた場合にききとれないというケースがあります。
 学校の先生をしている40代の男性は、生徒の声にききとりにくさを感じたり、職員会議やホームルームなどある程度広さのある部屋での会話を苦手と感じており補聴器の装用を決意なさったようです。
 騒がしい場所での会話や、離れたところの話し声、またとっさに話しかけられた時などに不自由を感じる方が多いのです。

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 それでは、きこえない、ききとりづらいとはどういうことなのかを簡単にご説明します。

 お年寄りの方に多い例ですが、高音域のきこえが落ちている方の場合、言葉の端々がききとりにくくなります。
 『さしすせそ』や『たちつてと』と言った言葉がはっきりきこえづらくなるため、聴き違いが起こります。そうなると、肝心な会話の中身がぼやけてしまい、そう『した』のか『しない』のかがわからなくなってしまうのです。
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 きこえに不自由しておられる方は、疎外感や孤独感を原因とした精神的ストレスを、抱えるケースが多くみられます。

 他人とのコミュニケーションがうまく取れなかったり、人と話すのがおっくうになり外出をしたがらなくなってしまいます。
 そうすると、脳を活性化する情報が減り、脳機能の衰えをまねきます。
 お年寄りの方に多い傾向ですが、うつ病や認知症のはじまりとなることもあるのです。
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 補聴器はきこえの不自由を感じたなら、できるだけ早く装用することが望ましいです。
 とはいえ、補聴器をつけることに抵抗を感じる方はたくさんいらっしゃいます。
 補聴器に抵抗を感じる理由として、1点目にまずあげられるのが見た目です。 日本では、視力を補うメガネと対照的に補聴器はまだ一般的ではないのが現状です。
 そのため周囲の目が気になり装用に抵抗を感じてしまうようです。
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 理由の2点目としては、一度つけてはみたものの雑音が耳障りで断念したケースです。通信販売などで充分な調整をしないままに購入したことが原因となる場合が多いようです。
 また、補聴器に対して過度な期待を持っていた方もうるさいことが原因で抵抗を感じてしまうようです。
 補聴器の機能には限界があります。どんなに性能が良くとも100点満点の補聴器はないことをご理解いただくことが必要です。
3点目は経済的な問題です。補聴器は医療機器ではありますが、残念ながら今のところ健康保険の適応になっていません。

 特に両耳に補聴器をつけて欲しい方の場合、費用の面で難しいということがあります。
 補聴器外来では、補聴器に対する抵抗を出来る限り和らげるお手伝いができるようにと努めております。
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 難聴は外見からではわかりづらい非常にデリケートな問題です。
 そのためメンタル面でのケアが大変重要です。
 患者様の生活のペースや環境など様々なことを考慮し、患者様にとって最良の選択が出来るようにすることが求められているのです。
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 補聴器は眼鏡のように慣れることが肝心です。
 つけたらすぐに良質で満足のいくきこえが得られるものではありません。
 今まできこえなかったはずの音が入ってくるので、はじめ脳は驚きます。
 しかし、繰り返し刺激をうけることによって脳は少しずつ状況を把握し、次第に慣れていくのです。
 この過程を数日でクリアできる方もいれば、数か月かかる方もいます。
 また、ご家族や周囲の方の理解と協力が何より大きな支えになることと思います。
 焦らず気長に補聴器とつき合っていかなくてはなりません。
 加えて、大事なことはあくまでご本人の意思を尊重することです。
 無理をして装用しても長くつけていただくことは難しい場合が多いのです。
 本人が納得した上での装用が理想的といえます。
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 補聴器外来はカウンセリングの要素が強い領域です。
 きこえや補聴器の豊富な知識はもちろんのこと、装用者のメンタル面を受け止める存在となることが必要とされます。
 受け止める側の導き方ひとつで、その価値はより素晴らしいものになると思います。それを十分に認識したうえで対応をしていく必要があるのではないでしょうか。
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 最後になりましたが、補聴器装用の第一歩はご自身のきこえについてよく理解し、補聴器についてよく知り、そして身近に感じてもらうことです。
 また、購入後にも安心して装用を続けていただけるようメンテナンスはもちろんのこと、定期的な診察や各種聴力検査などのアフターケアを充実させることが耳鼻咽喉科ならではのサービスであると考えます。

 きこえることで世界は違って感じられ、そして広がります。音には重要な情報が幾つも含まれているからです。

 装用を考えている方の『ききたいと思う気持ち』に少しでも応えられるよう、よりよいきこえに近づけるよう、少しでもお役に立てればと思います。
 今後とも、これまで以上に難聴でお悩みの方それぞれのクオリティオブライフの向上に貢献できる存在でありたいと願っております。
 患者様の求める理想的な補聴器外来とは何か。それを今後とも目指していきたいと思います。
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難聴については、院長の医学コミック7に
判り易い説明がのっています。
院長による難聴の医学コミック
『難聴・早期発見伝』

関連リンク: 用語集 補聴器

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