3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
院長の学会発表
 
 2月27日の職員勉強会から、院長が126回日本耳鼻咽喉科学会宮城県地方部会において発表した、その内容をご紹介致します。



スライド1
 タイトルです。
スライド2
 症例は35歳の女性で、既往歴はなし。
1996年2月2日に左側の金属性耳鳴りが出現し、三好耳鼻咽喉科クリニックを受診しています。この折、半年前からの舌の乾燥感も訴えていましたが、耳鳴との関連は不明です。

スライド3
 受診時の鼓膜所見は正常で、聴力像は別紙のごとくとなっており、TGは正常でした。ビタミン剤の静注と内服で、後述のように2月13日には聴力は改善しています。それ以降も左側耳閉感・左側難聴にて繰り返し来院していましたが、低分子デキストラン静注やビタミン剤内服、そしてステロイド内服にてその都度改善しています。

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スライド4・スライド5
 99年10月6日にはこのような左側難聴を示しますが、10月17日には正常に戻っています。02年6月19日にはめまいで受診していますが、聴力正常でしかも眼振所見に異常なく、後刻判明する聴神経腫瘍との関連は不明です。
03年9月24日、舌の左側〜口角〜頬部のしびれ感と温覚・味覚低下が出現して、9回目の当院受診となります。このときも聴力は正常でした。
スライド6
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スライド6・7
 なお、03年9月24日の受診時には、左方へ向かう眼振を認めました。三叉神経の知覚を確認しましたところ、左側第2・3枝の触角低下が認められました。なお残念ながら、味覚検査は実施しておりません。
スライド8
 三叉神経の支配領域は、スライドにお示しするような形となっています。
スライド9
 そして顔面の温覚と触覚は、三叉神経が担当しています。
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スライド10
 これらの、三叉神経・顔面神経・聴神経に関する所見から、小脳橋角部の病変が舌や頬部の知覚異常を来している可能性を考え、MRIを実施しました。その結果、左側小脳橋角部に径1.5cmの腫瘍陰影が認められ(矢印)、脳外科紹介にて聴神経腫瘍と診断されました。本症例は脳外科の富永教授によりγナイフの適応と診断され、その実施後経過観察となっています。
スライド11
 MRIですが、典型的な“Ice cream cone”像を呈する聴神経腫瘍が認められます。なお聴神経腫瘍は、1.5cm以上になると、“Ice cream cone”像を示すと言われます。
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これは“Ice cream”ですが、
聴神経腫瘍ではありません。



スライド12
 本症例の小脳橋角における腫瘍進展状況の模式図ですが、聴神経腫瘍が三叉神経を下から圧排し第3・2枝をひきのばしている模様と、顔面神経を圧迫している様子が描かれています。
スライド13
 今回われわれが報告した症例は、(1)聴神経の症状として変動する難聴・耳鳴・耳閉感を呈し、(2)三叉神経の症状として【1】触角低下と【2】温覚低下を、(3)顔面神経の症状として味覚低下を来していました。突発性難聴や本症例のような変動する難聴症例に対し、いつの時点でMRIを含む精査に踏み切るのか、判断に窮することは少なくありません。
スライド14
 ことに近年は、脳ドックなど中枢神経のスクリーニングを受けられる環境が、身近に整っています。そんな状況において、耳科学的な情報だけに難しい症例の診断根拠すべてを求めることは、正直かなりの無理があります。
その場合、われわれ耳鼻科医の多忙な外来診療においても、スクリーニングとして12脳神経のサインをチェックしておくことは、きわめて有用ではないでしょうか。
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スライド15
 本症例においてはそれに加えて、症状の消長をていねいに追跡することが、脳神経腫瘍という小脳橋角部病変を検出する上で、役に立ちました。平凡ではありますが、“Gedankengang”を重視した日常診療の大切さを、改めて思い知らされた貴重な体験でした。
スライド16
 まとめです。われわれは変動する難聴を呈した1症例を7年間追跡して、聴神経腫瘍の診断を下すことができました。最終的にMRIにて小脳橋角部の腫瘍を確認し診断に至りましたが、聴神経の症状に加えて三叉神経症状の把握が重要でした。耳鼻咽喉科外来診療における12脳神経の基本的スクリーニングと、平凡な思考過程の大切さを再確認させられたと言わねばなりません。
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一人もいねむりしていません。
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関連リンク: 3443通信 No.172 院長の学会ファイルより
  3443通信 No.173 院長が学会発表をしました
  用語集 聴神経腫瘍
  用語集 めまい
  用語集 学会発表
  用語集 脳腫瘍


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No.172
 
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