
花粉症というのは、花粉によるアレルギー性鼻炎です。
そのアレルギー性鼻炎というのは、なにも日本だけの病気ではなく、世界中にあります。
というわけで、そういうアレルギー性鼻炎やぜんそくなど、ようするに鼻から気管支という「息が通るところ」のアレルギー疾患をひとまとめにして、治療のガイドラインをまとめようという国際的な試みがなされています。
そのガイドラインをARIAといいます。
ところが、そのARIAでは、日本の鼻アレルギーのガイドラインのように、症状の重さを軽症、中等症、重症というようにわけてはいないのだそうです。
軽症と中等症・重症というように、2つにしか分類してないとか。
しかも、日本のスギ花粉症の時期には必ずいわれる抗原の回避……つまり、窓をあけるなとかマスクをしろとか外出するなら飛散の多い時間帯をさけようとか、そういう「花粉と接しないように」ということも重要視されてないらしいです。
これは海外の花粉症(ヘイフィーバー)に関する報道などを見て、常々気になっていたところでもあります。
「マスクをしよう」みたいなことが出ている記事が、とても少ない印象があったんです(たまに、グーグルで海外のニュース検索をしてみるんですよ)。
また、よく花粉症の時期に海外から日本にきた人は、マスクをしている人の多さにおどろく……なんていう話がいわれますが、これは海外ではマスクをする習慣がないのだ、と説明されます(大気汚染のひどいアジアの大都市部では珍しくないようですが、まあ、花粉対策じゃあないですよね)。
たしかにそうなんでしょうけど、医療界からして、マスクをしようということを言わないのだということに、今度は逆にこっちがおどろきましたよ。
医者はマスクをさせたいけれども、市民のほうは、昔からの習慣だからマスクをいやがっているのだとばかり思っていました。
この抗原の回避ということのエビデンスの質は、なんとびっくり最低のIV(4、4段階の4じゃなくて、1のab、2のab、3、そして4という6段階の一番最後です)。それほど推奨するほどのことじゃない、本当に効果があるかどうかよくわからない、という感じでしょうか。
これはひどい扱いです。
抗原の回避と除去は、日本ではまず最初に説明されるほどの、基本中の基本の対策なのに。
なぜか。
どうやら、日本以外の国の人にとっては……それがたとえ医師であっても、花粉の飛散の多さや患者の重症さなどが、想像できないようなんです。
で、そういった日本の実情は、国際的には異端視されているとか。
まあ、逆に考えれば、日本のスギ花粉症の実情……一定の短期間に大飛散があり、患者が急増する、しかもその患者数は多く、軽症から重症まで症状も多彩で、社会生活に支障がでることも珍しくはない……そういうことは、世界に類をみない、ということでもあります。
だから、国際会議でも理解されなかったそうです。
さあ、これほどひどい日本の実情……国際的に見ても、きわめてめずらしい特異な日本のスギ花粉症……それを、日本の政府はほとんど放置してきたわけです。
というように考えると頭にくるので……日本のスギ花粉症は世界イチだ、とでも思うことにしましょうか。
よく、イギリスのイネ科花粉症と、アメリカのブタクサ花粉症、そして日本のスギ花粉症が「世界の3大花粉症」なんてことがいわれますが……なんのなんの、歴史は浅いけど、実力はトップなわけです。

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| こちらは、2002年1月24日の開院10周年パーティーにお越し頂いたウェルズ大学のホプキン医学部長です。 |
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| 2003年5月ウェルズ大学の耳鼻科専門医(両脇)と大学のOpe室にて記念写真。 |
当院ホームページのウェルズ大学への旅でも書きましたが、花粉症発症の地英国では専門医が少なく、花粉症を研究している耳鼻科医は1〜2人です。
その予約には家庭医を通じて半年から1年かかるため、英国人は耳鼻科で花粉症の診療を受ける習慣がありませんし、専門知識も一般化していないのです。
なお、花粉の回避という日本の常識も我々が医学コミック『花子さんの場合』を出版して強調した1995年頃には、未だ余り知られておりませんでした。なぜなら花粉症においても、原因(この場合は抗原)であるスギ花粉が増えるほど結果である花粉症が増加し、原因が減少すれば花粉症も楽になるという原理原則でさえ、我々が医学的に証明(3443通信No.170参照)するまで、全く知られていなかったのです。
今ではあたり前と思われていることでも、当時それを科学的に事実として証明して見せるには、膨大な量の調査と10年以上の時間が必要だったのです(調査だけで9年間!)。
科学的に新事実を証明することの厳しさを、ご理解頂くことができたら幸いです。
そしてそういった我々のPRの結果、現在のような常識ができ上がったのです。
三好 彰

Q:突然のメールで失礼いたします。
インターネット上で先生の学会(2008年10月30日)での発表『突発性難聴にて受診したアーノルド・キアリ奇形の1症例』をみつけ、その内容についてお伺いしたく連絡させて頂きました。本来であれば、そちらに出向いてお伺いすべきところですが、なにぶん遠方なため、メールで質問させていただくことをお許し下さい。
院長の学会発表(08年10月30日)
「突発性難聴にて受診した
アーノルド・キアリ奇形の1症例」より
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| (1)小脳 (2)脳幹 (3)大後頭孔ヘルニアによる小脳・脳幹の圧迫
(4)聴神経やAICAはここに位置する。 |
昨年10月に左耳の違和感と聴力の低下が生じ、耳鼻咽喉科で突発性難聴(低音性障害型感音難聴)と診断されました。そちらの先生は「キアリ奇形による小脳の下降によって耳の神経が引っ張られて難聴症状を起こしているのだろう」ということで、手術を勧められました。
しかし手術のため紹介状を持って行った大学病院の脳神経外科の先生は『キアリ奇形と突発性難聴の関係については可能性がないことはないが、キアリ奇形の症状として難聴の順位は低く、手術しても難聴が治るかどうかは分からない』という話でした。
更にセカンドオピニオンの大学病院の先生は『キアリ奇形と突発性難聴の関連は今までに例がない』と否定されました。
現在、脊椎空洞症は発生しておらず、キアリ奇形に当てはまる症状としては、激しい咳が春先1ヶ月ほどとまらなくなったことが今までに何度かあり、咳き込んだ後にズーンという頭痛がしました。眩暈、痺れはありません。セカンドオピニオンの先生は現在の状態では手術の必要はないという診断でした。
現在、手術を受けようか、どうしようか迷っております。
私が最も知りたいことは、
(1)キアリ奇形と突発性難聴は関係があるのか
(つまりキアリ奇形が原因となって突発性難聴が発症することがあるのか)。
(2)また、あるとすれば手術によってどちらも完治するのか。
そんな時、インターネットの検索で先生の研究発表をみつけ、大変興味を持ちました。
先生の発表は貴院HPでの『エピソード11』のお話だと思いますが、そこには『アーノルド・キアリ奇形が存在しており、そこに突発性難聴を合併したために小脳性のめまいと内耳性の難聴が併存する形となった訳です』とありました。
その後については発表のページで『脳外科減圧手術により眼振はほぼ消失したが、難聴は変動を繰り返し、現在では両側高度感音難聴の状態』となっています。最後に『垂直性眼振は奇形に起因しており、初診時からの耳鳴り・めまいと急性難聴は内耳性のものと考えられた』とまとめられています。
ということは、キアリ奇形と突発性難聴は関係がないということでしょうか。単に両者は併発しただけで、因果関係はないのでしょうか。また、難聴は手術をしても治らないということでしょうか。それとも他にキアリの手術によって難聴も治ったという事例もあるのでしょうか。
このような事例をはっきり示されたのは、三好先生以外にはいらっしゃらないので、是非お聞きしたいと思った次第です。
以上、お答えいただければ幸いです。
A: お問い合わせ頂き有難うございます。
当日の学会発表でも類似の質問が出ておりました。質問は、アーノルド・キアリ奇形による内耳症状の発生は考えられないか?というものでした。
回答ですが、『アーノルド・キアリ奇形による症状は、小脳・脳幹の大後頭孔へのヘルニアにより生ずる、小脳・脳幹・下位脳神経(舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経)の圧迫によるものです。
ご質問は内耳を栄養しているAICA(前下小脳動脈)の圧迫により内耳症状が出るのではないか、という意味かと考えます。
アーノルド・キアリ奇形ではAICAまでは影響しないので、AICA症候群として知られる内耳症状は発生しないと思います。』でした。
これが(1)への返答になりますでしょうか?従って(2)は手術では難聴は回復しない、と言わざるを得ません。
内耳への血流であるAICAは現在のMRIでは描出できますので、後日MRIを撮影する機会がありましたら、ご自分で確認なさってみて下さい。
(三好 彰)
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