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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
院長の学会発表ファイルより

スライド1
 あらゆる疾患というのは、遺伝的な要素であるDNAと環境的要因(食事・住居など)が加わり、発症するものと考えられています。

  スギ花粉症・アレルギー性鼻炎にしても、19世紀初めの英国におけるカモガヤ花粉症の出現や、戦後の日本におけるスギ花粉症の激増などから、元々持っているDNAに、環境要因が関わり合ってアレルギーが増えたのではないか、と考えられます。

 本当にそうであったのか、調べてみたいと思います。


スライド2
 19世紀初頭のイギリスで、世界で初めての花粉症が出現しました。 イギリスではカモガヤという植物を牧草として家畜に与えるのですが、スライドの如くロール状にしてサイロ内に保存します。

 その作業に従事する農民の間に、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・発熱などの症状が蔓延しました。当時はアレルギーという概念が無かったため、枯草により熱が出ると考えられ、枯草熱(ヘイ・フィーバー)と呼ばれました。

 後から、これが世界初の花粉症だとわかりました。

  また、日本では森林面積の占める割合が多く、イギリスでは森林が少なくカモガヤが繁茂する牧草地の割合が多いことがわかります。これが、日本ではスギ花粉症、イギリスではカモガヤ花粉症が多い事実の裏付けとなっています。 これは、原因物質の増減がアレルギー性鼻炎の中身に、関わるということにつながります。

スライド3
 私たちはいままで、日本では栃木県栗山村・北海道白老町、中国では遠くチベットまで赴き調査しています。

スライド4
 調査対象となる、小学1・4年生、中学1年生、高校1年生、大学1・4年生(6歳・9歳・12歳・15歳・18歳・21歳)を、3年ごとにフォローできるようにしています。

  対象者には、ハウスダスト・ダニ・スギのエキスを使用したスクラッチテストを実施し、その陽性者について調べています。

 また、白老町では89年から97年の9年間の調査の間に、3回スクラッチテストを受けた対象者を選んで行っています。

 これは、別々の子供を年齢順に調べてみたらどうなるか、という調査です。もし、前者のデータ上で差異があった場合、別々の子供ではそれぞれが持つ遺伝的・環境的要因を考慮しなければならないため、白老町調査では、同じ子供さんを3回調べる事にしました。


スライド5
 これらの調査を行う目的は、

(1)花粉・ダニなどのアレルゲンを吸う時間・量により、花粉症・アレルギー性鼻炎の頻度が増加するのか。

(2)遺伝的な要因(DNA)により、データにズレがでないよう、同じ子供さんを長年フォローする必要があること。

(3)原因物質(ダニ・花粉など)の量が減ることにより、花粉症・アレルギー性鼻炎の頻度が減るのかどうか。 などを実証することにあります。


スライド6
 私たちは、北海道白老町・栃木県栗山村・中国の黎里鎮・宜興市・チベットのラサ市で行っているわけですが、そのいずれにしても6歳・9歳・12歳と年齢が上がるにつれ、陽性率を示すグラフは右肩あがりになっています。

 つまり、年齢が増えればアレルギーの頻度が上がる、ということがわかりますし、同じ地域に住んでいる子供たちなので、他の条件が違うということは考えられません。やはり、長期間アレルゲンに接触しているのため、アレルギーの頻度が上がると考えられます。


スライド7
 こちらは、中国江蘇省の黎里鎮(リリチェン)というところで、小学1・4年生、中学1年、高校1年生に調査を実施したデータと、同じく江蘇省南京医科大学の大学1・4年生のデータを、並べたみたところ、見事に右肩あがりになっています。

  ただ、2つの地域で行った調査データのため参考程度にしかなりませんが、このような形になったという1つの事実を示しています。


  ▲スライド1
▲スライド2 ▲スライド3
▲スライド4 ▲スライド5
▲スライド6 ▲スライド7
   
※画像をクリックすると拡大写真がご覧いただけます。

スライド8
 こちらは、同じように北海道白老町で行った調査のデータです。


スライド9
 けれども、DNAの違いによる場合を考えなければならないので、白老町では1989年から1997年の9年間にわたり、1人の子供を6歳・9歳・12歳の時に健診を行い、全体で約5700名にのぼる子供たちを調査しました。

  その上で、6歳・9歳・12歳と3回健診を受け、なおかつ、その間一度も医療機関に行ったことのない子供達(薬などによりデータが変わる可能性があるため)334名のデータを比べても、年齢が上がるごとに陽性率が高くなっていることがわかりました。

スライド10
 それでは逆に、スギ・ダニなどのアレルゲンが減ればアレルギー性鼻炎が減るかどうか見てみます。

  共同研究者である大分大学の中村先生が、大分大学に在学する学生を対象に、その学生の入学時と卒業時にスギ花粉について血液検査を実施しました。

  結果は、88年・89年・90年に入学した学生は、3年後の卒業時までに花粉に暴露される時間が長かったため、陽性率は高くなっていました。

  しかし、91年のデータでは入学時より卒業時の陽性率が下がっています。これは、93年に細川内閣が外米を輸入したほどの冷夏であり、スギ花粉が実らず飛散数が減少した影響を受け、翌年の卒業生は暴露量が減ったために陽性率が下がったのだと、考えられます。

  つまり、原因(スギ花粉)が減れば結果(花粉の陽性率)が、下がるということがわかりました。


スライド11
 つまり、アレルゲン(スギ・ダニ)に接触している時間が長くなれば、アレルギーが増加する。それは、同じ子供を年齢毎に調べてみても言えることなので、DNAの差ではなく、『原因(抗原)が増えれば結果(抗原抗体反応つまりアレルギー反応)は増えますし、原因が減れば結果も減る』ということが実証されました。


スライド12
 まとめとして、原因が増えれば結果が増え、原因が減れば結果が減るというお話ですが、逆に言うと、アレルギーとは抗原抗体反応なので、アレルギーが発生していたらその原因物質であるアレルゲンが、どこかに存在しているという推測ができます。

▲スライド8 ▲スライド9
▲スライド10 ▲スライド11
 
▲スライド12  
 
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関連リンク: 用語集 学会発表
  No.174 院長の学会発表ファイルより(2)
  No.174 院長の学会発表ファイルより(3)
  No.174 院長の学会発表ファイルより(4)
  No.149 開院15周年記念&コミック出版記念パーティ(3)
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