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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
めまい学会講習会に行ってきました。
 
 院長が6月10日(水)から13日(土)にかけて、めまい平衡医学会医師講習会を受講するため、30年ぶりに信州大学へ赴きました。

 ここでは、講習会の様子と、秀麗な日本アルプスをのぞむ松本の景色をご紹介致します。

三つ子の魂百まで

 かつて信州大学には、院長の恩師である鈴木篤郎名誉教授が所属しておられ、ご自身は幼児難聴の早期発見を専門に研究しておられました。

 私たちが日々の生活の中で、物事を考え、理解し、体現することができるのは、相手の言葉(言語)を聞きとることができ、それを概念として記憶しているためです。 人は対外的なコミュニケーションをとる際、言葉を使って相手との意思疎通を図ります。しかし、言葉をやりとりするには、幼いうちから言葉を聞き取りし、意味をイメージしなければ理解することができません。

 例えば、『平和』という言葉を聞いたとき、人は『争いのない状態』や『幸せな家庭』などといった、抽象的なイメージを連想し、言葉を概念として考えることができます。ですが、幼いころから聴覚を介して言葉に接していないと、言語の蓄積が為されず、先のような抽象的な言葉を理解することが難しくなります。

 この、言語を育てるという経験は3歳までに正常に行われていないと、将来的に言葉のコミュニケーションに支障をきたす恐れがある、と言われています。

 これら幼児難聴に関する研究は、日本では鈴木篤郎先生をはじめとするチームが中心となって研究しておられました。現在、それらが難聴診療の基本として認知されております。

めまいのメカニズム

 今回、めまい学会の講習会を受講したのですが、めまいとは一体何なのでしょうか。どうしておこるのでしょうか。

  めまいとは、いくつかの病的感覚をひとまとめにしている言葉ですが、大きく分けると『グルグル回る回転感』、『フラフラする動揺感』、『立ちくらみ』、『まっすぐ歩けないなどの平衡失調』の、4つに分類されます。

 ここではそれらのうち、『グルグル回る回転感』のあるめまいについてご紹介します。

 このめまいは、両側の内耳にある前庭・三半規管という体のバランスをとるためのセンサーが過敏状態もしくは機能低下をおこしたために生じるもので、体は動いていないのに、まるでグルグル回っているように感じます。また、こうしためまいは、内耳からの信号を受信する小脳に病変が存在しても、同様に発生することがあります。

 そしてこのめまいは、外から見ると実際にグルグルまわる目の動きとなって観察されます。

 その機序を簡単に説明するとき、自動車のタイヤを思い浮かべて下さい。

 通常の車は、左右のタイヤを均等に動かして真っすぐに進みます。

 これが、何らかの原因でどちらかのタイヤが動かなくなり、本人は真っすぐに進んでいるつもりでも、動かないタイヤの方向に車は徐々に曲がっていき、同じところをグルグルと回り続けます。

 しかしめまいでは、目の構造上360度回転する事はできないので、目は一旦元の位置に戻り、また同じ動きを繰り返します。これが眼振(がんしん)と呼ばれる眼球の異常運動です。

 車で言うと、車が片側に寄って行った場合、普通ならハンドルを逆にきってまっすぐに走ろうと努力します。人間の体にも同じことが言え、反射的に体勢を整えようと逆の動きをする、立ち直り反射をおこします。それが眼振なのです。

 そうした人体の反射運動の有無を調べることにより、裏に潜む病変を発見する大きな手助けとなるのです。

 ここで、当院を受診している実際の症例をご覧いただきながら、ご説明致します。

症例1 59歳・女性 ※No.168「学会発表(1)」
症 例: 59歳、女性
主 訴: めまい、左片麻痺、嗄声、嚥下障害
既往歴: 8年前子宮筋腫で手術、椎間板ヘルニア
現病歴: 2004年3月末から左肩こり、4月1日朝6時半頃、鼻の激痛、めまい発作、ぐるぐる回る感じ。横になった途端、左半身の痺れを自覚したため、救急要請。左延髄梗塞と診断され、脳神経外科に入院した。
入院時所見: 瞳孔径 右>左;
右半身温痛覚低下、左半身不全麻痺
経 過: 泉病院脳神経科で入院治療。 入院中嗄声に気づいて、7月6日当科受診。
 症例1は、回転性のグルグル回るめまいを発生しましたが、こういった症状では、脳梗塞の可能性を考えねばなりません。
 MRI画像(脳の断層写真)をみると、矢印の箇所に梗塞の影が確認できます。
※画像をクリックすると拡大写真がご覧いただけます。

症例2 65歳・女性 ※No.167「学会発表(2)」
症 例: 65歳、女性
現病歴: 左側耳鳴・難聴を訴えて、 2002年7月30日に三好耳鼻咽喉科クリニックを受診。 めまいの訴えはなし。
既往歴: 1995年8月2日より1週間、めまい発作にて東北大学付属病院に入院。
所 見: 鼓膜所見に異状なし。赤外線カメラ下に左方へ向かう水平性眼振を観察。指標追跡検査は異常なし。
 この方は、垂直性のめまいつまり目が縦方向に動くめまいがあり、精査をしたところ脳を栄養している椎骨動脈の奇形がみつかりました。
 MRA(脳の動脈画像)では、左右対称の位置にあるはずの動脈が写っておらず(○印)、これが原因となって脳からくるめまいが発生したと、診断するに至りました。
※画像をクリックすると拡大写真がご覧いただけます。

症例3 71歳・男性
 水平性のめまい、つまり目が左右に動くめまいの症状がある男性です。この方は、歩行時に片側によっていく自覚症状があり、受診されました。

 この症例は、三半規管にウィルス感染の生じた前庭神経炎と診断されました。

 このように、めまいの種類によってそれぞれ原因となる症状に違いがあり、時には背景に重大な疾患が隠れている事もあります。ただめまいがする、というだけで様子を見るのではなく、専門の医療機関へご相談いただくのが、早期治療の重要なポイントになります。

関連リンク: 用語集 めまい
   
   

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