3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
院長が学会発表をしました


当院を受診した小脳腫瘍の2症例


スライド1
スライド1
 当院を受診した、小脳腫瘍の2症例について報告します。
 第1例は小脳症状はまったく認められず、併存した耳鳴と難聴に対するMRI撮影で発見された小脳髄膜腫症例です。
 また、第2例は、頭痛・ふらつき・突然の嘔吐で受診した小脳血管芽腫症例です。
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スライド2
スライド2・3
 症例1(K.K)は初診時53歳の女性で、スギ花粉症のために1994年4月16日より、当院通院中でした。
 既往歴は子宮筋腫。
 現病歴ですが、1999年7月より右側耳鳴が発生し、8月8日の聴力検査では次のような結果を示しました。他に目立った症状がなかったため、経過観察のみとしていました。

スライド3
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スライド4
スライド4
 しかし、念のため撮影した2002年3月16日のMRIにて、直径4cmの小脳腫瘍が発見されました。小脳症状および頭蓋内圧亢進(increased intracr- anial pressure,以下IICP)症状は目立ちませんでしたが、MRI上腫瘍は第IV脳室を右側に強く圧排していました。
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スライド5
スライド5
 脳外科への紹介後、外頸動脈系の後頭動脈にfeeding arteryを有する左側小脳テント下髄膜腫と診断され、4月13日に全摘手術を受けました。

 脳外科退院後の2002年6月8日(スライド3)に神経耳科学的再検査を施行しましたが、右側感音難聴以外の所見はなく、術後の神経脱落症状も皆無であったため、小脳腫瘍と難聴は直接の関係に乏しいものと判断されました。
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スライド6
スライド6
 症例2(Y.S)は36歳の女性で、既往歴はありません。
 現病歴ですが、1997年5月初めから後頭部痛と頭重感そして嘔気を覚え、眼科・整形外科・内科を受診していましたが異常なしと言われました。この症状は朝方ひどく、午後になると改善しました。
 5月18日、日曜日の早朝から長女の幼稚園の運動会を見学していたところ、体がふらふらして突然嘔吐してしまいました。めまいというよりも、頭がぼーっとする感じが強いように感じられました。加えて右によろめいてしまい、まっすぐ歩けない状態となり、当日午前11時当院を受診しました。
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スライド7
スライド7
 受診時の所見では、鼓膜所見に異常なく聴力正常でしたが、左方へ向かう水平性眼振が認められました。
 頭痛と嘔吐の性状からIICP(頭蓋内圧亢進症状)の可能性を強く疑い、日曜日ではありましたが、ただちに脳外科を紹介しました。
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スライド8
スライド8
 脳外科外来でのCTにて、左側小脳半球に嚢胞(1)を伴う腫瘍像(2)が認められ、即日入院となりました。
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スライド9
スライド9
 MRIにて第IV脳室の圧排と、右方偏位が見られます。
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スライド10
スライド10
 MRIにて圧排された左側側脳室(1)と、右方への大脳鎌ヘルニア(2)が観察されます。
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スライド11
スライド11
 VAGでは、左側PICAをfeeding arteryとする腫瘍像が描出され、draining veinも確認されました。この検査中に症例2は痙攣発作を生じ、そのまま緊急開頭手術となりました。
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スライド12
スライド12
 術中所見では、嚢胞を有する壁在結節が認められ、その周囲にfeeding arteryである左側PICA分枝と、draining veinとが見られました。このdrainerはred vein(動脈血色をした静脈)でした。壁在結節を摘出し、手術は終了しました。壁在結節摘出後、red veinは赤色から通常の静脈色に戻りました。
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スライド13
スライド13
 腫瘍の病理組織診断では、血管芽腫の確定診断がなされました。このためvon Hippel-Lindau病による全身性の多発性を懸念し精査しましたが、腫瘍は小脳のみの単独発生でした。
 また、本腫瘍に伴う多血症を懸念して行なわれたエリスロポイエチン検査も、正常範囲内であったため、6月18日退院となりました。
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スライド14
スライド14 
 術中所見でも見られたように、嚢胞を有する壁在結節の周囲にfeeding artery である左側PICA分枝と、 draining vein とが見られています。
 この drainer は red vein となっており、動脈血の静脈への直接流入が生じていたことが判りました。
 それは、壁在結節摘出後に drainer の色調が正常の静脈色に戻ったことからも理解されます。
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スライド15

スライド15
 こうした手術による vein の色調の正常への変化は、AVMなど動脈血の静脈への直接流入の生じ易い疾患では、病変摘出の目安ともなっています。
 つまり症例2におけるVAG中の痙攣発作は、AVMでも観察される動脈血の静脈への流入が背景にあり、盗血現象(steal phenomenon)が生じて周囲脳組織のO2供給の悪化したことが、直接の原因と判断されます。
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スライド16
スライド16
 その後症例2は、当院と脳外科を正式に受診してはいませんが、2009年1月21日に、12年前は幼稚園児だった長女(スライド6)の、当院受診時に付き添いとして訪れました。
 その折の様子では症例2、長女とも日常の動作には支障ないことを、われわれ自身目前で確認しています。
 本腫瘍の問題点は、(1)多発性、(2)再発性、(3)遺伝性、です。
 症例(2)は、そのいずれも外観上はクリアしているように判断されました。
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スライド17
スライド17
 当院を受診した、小脳腫瘍の2症例について報告しました。
 症例1は小脳症状はまったく認められず、併存した耳鳴と難聴に対するMRI撮影で、偶然発見された小脳髄膜腫症例です。
 症例2は、頭痛・ふらつき・突然の嘔吐で受診した小脳血管芽腫症例です。
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スライド18
スライド18
 いずれも最終的に脳外科にて摘出手術を受けましたが、症例1では第IV脳室の圧排が見られ、水頭症発生の可能性が否定できませんでした。
 また、症例2はすでに水頭症を合併しており生命に関わりかねない状態でした。
 一般耳鼻咽喉科外来を受診する中に、こうした症例の存在することを、自戒をこめて報告しました。
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めまいについては
院長のコミック(6)を
ご参照下さい。

関連リンク: 用語集 学会発表
  用語集 脳腫瘍

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