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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
院長の特別講演 2009年9月17日(木)28日(月)にかけて行われたチベット・アレルギー調査のさなか、院長が安徽省アレルギー学会及び南京国際フォーラムに招待され特別講演を行ないました。

ここでは、2つの学会で発表した内容の要旨をご紹介致します。
 

 私たちは、アレルギー性鼻炎の治療法として、高周波を利用した下甲介手術を行っております。

 アレルギー性鼻炎の症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまりですが、一番症状的につらいのは集中力が無くなり、精神的に無気力になってしまう原因にもなる鼻づまりです。

 次にお示しする図は、アレルギー性鼻炎のメカニズムを図式化したものですが、鼻づまりは症状がひどくなると慢性化し、元の状態に戻らなくなる。つまり薬が効かなくなってくるわけです(図1)。


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 しかし、鼻閉に対してこれまでは決定的な対処法が存在しませんでした。

 そうした中で、目覚ましい治療効果を発揮する最新機器が登場しました。


図2 ソムノプラスティ
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 高周波治療器『ソムノプラスティ』です(図2)。

 ここでは、ソムノプラスティの効果を、ご紹介致します。

 ソムノプラスティは、高周波(Ra-diofrequency Energy)発生装置により、正確にコントロールされた低エネルギー高周波を発振して局部組織を凝固させ、結果的に病変部位の組織容積を縮減させることができます(Radio-Frequency Volum- etric Tissue Reduction、RFVTR)。

 先端にあるニードル電極から、周囲の組織に高周波電流を放射し、組織内に生じたイオン攪拌による分子摩擦で熱を発生させます。この熱は、電極ではなく組織内部で発生します。 

 いわば病変部位を、電子レンジに入れたようなものです(図3)。

図3
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 それにより組織内温度が上昇するにつれて蛋白変性が生じ、組織が凝固して細胞壊死が起こります。

 組織内温度とそれによる凝固の範囲は、高周波出力レベル、ニードル長、エネルギー供給時間によって異なってきますが、組織内温度が70度から90度で理想的な効果が得られるようになります。

 手術前に機器を操作し、目標温度、目標エネルギー量、最大出力、持続時間を定めますが、術中高周波は設定された条件に従い、自動的にコントロールされます。

 術後、病変組織は変性脱落し、3〜8週間のうちに吸収されて組織容積が縮減します。

ソムノプラスティの特徴的機能

 ソムノプラスティは、他の機器とは異なるいくつかの特性を有しています。

 手術に使う電気メスは、プローブ内に電流が流れ高熱(最高温度は1000度)を発します。この熱で組織を焼灼することによって、組織破壊を引き起こす仕組みになっています。

 それに対して、ソムノプラスティにおける高周波では局部組織内に電流が流れ、ニードル先端周辺に熱を産生(最高温度は105度)して、組織を凝固します。

 高周波と低周波の相違ですが、高電力で低周波が人体に触れると感電死するのに対して、低電力で高周波が人体に作用すると、その局所で組織容積縮減(RFVTR)が起きます。

 他の高周波治療機器はほとんど、高電力(30〜150ワット)で最高温度は700度の設定となっており、しかもフィードバック機能は備わっていません。

 それに比してソムノプラスティでは、低電力(0〜15ワット)で最高温度は105度の設定で、加えて高性能のフィードバック機能が整えられています。

 ソムノプラスティのニードルの刺入された組織温度は、先に述べたように105度以下となるので、ニードル周辺の局部組織にのみ炭化が生じますが、それが広範囲に及ぶことはありません。

 発生した高周波はフィードバックしてコントロールされるので、放出されるエネルギー、手術時間、術中の組織温度を常にモニターすることが可能で、最適な手術条件を維持できるシステムになっています。

 しかも、放出されるエネルギーがニードルの非被覆部からしか発生しないために、ニードル先端部に接触する組織のみ変性をおこし、このため手術目的部位を、正確に設定することが可能です。

 また、ニードルの長さと直径を変えることにより、組織変性の範囲を調整することもできます。

導入の歴史

 他の診療科領域における高周波エネルギーの臨床応用は比較的早期に行なわれていましたが、耳鼻咽喉科領域への応用の歴史は新しく、1997年からでした。

 Stanford大学睡眠障害センターは1997年、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome, OSAS)に関して、高周波を利用した豚の舌根部減量実験を行ないました。


図5 術後の経過と組織容積縮減
 術後1日目は、浮腫のためむしろ容積が増加しているが、2日目以降縮減が続く。  また、図に示すように2.4KJで処理すると、時間経過と共に組織が縮小して行くのが判った。

図4 エネルギー量と即時容積縮減
 縮減がマイナス化つまり容積の増加しているのは、容積測定センサーの挿入に伴うものである。
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 この実験では、高周波エネルギー量と組織縮減の相関や術後の組織減量の病理などが検討され、その結果、総エネルギー量出力の増大と共に、変性部位面積と組織容積縮減は大きくなりました。

 図4のグラフは、エネルギー量の増加により効果が大きくなる事を示しており、図5は術後の経過時間によって効果が一層大きくなっていることを示しています。

 耳鼻咽喉科領域におけるソムノプラスティの臨床応用は、同センターが1998年行った鼻閉に対する下甲介の外科的治療や、いびき・SASに対する軟口蓋の減量が嚆矢となりました。

 同センターは引き続き、SASの原因となっている舌根部肥大や肥大扁桃の縮減に、ソムノプラスティを応用しており、肥大下甲介へのソムノプラスティ治療は安全かつ実施が容易であり、現在多数の医療機関で臨床応用されています。


図6
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実際の施術法

 実際の手術では、次の手順で行われます。

(1)  まず下甲介に浸潤麻酔を施した後、モノポーラ電極のニードルを直視下に下甲介前下端から、粘膜下まで挿入します(図6)。
(2)  高周波エネルギーは465KHz、10W、目標エネルギー量500J、目標温度75度の設定で放射します(図7)。放射開始後約3分間で、下甲介内部に変性凝固が生じます(図8矢印)。この際、手術を受けている本人にほとんど不快感は無く、出血も見られません。このため、術後のガーゼ等の挿入は不要です。
(3)  術後3〜8週間の間に、手術部位の組織は自然に吸収され下甲介容積は縮小、鼻閉は改善します(図9点線が手術前)。

ソムノプラスティの手術図

図7

図8

図9
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 ソムノプラスティの肥大下甲介に対する治療効果は、これまでに数多くの医療機関で確認されています。

 短期間の経過観察では自覚症状の改善率は81.3%から100%までとなっており、長期間のそれでは76%の有効率でした。Acoustic Rhinometry を使用した効果判定法でも、鼻腔断面面積は術後明確な増加が見られました。

 また、ソムノプラスティによる下甲介手術は安全で簡単なので、術後に再度鼻閉が生じるならば繰り返し手術を行なうことも可能です。

 私たちは、2001年11月にソムノプラスティを導入して以来、1年間以内に200例以上の症例に対して手術を行ないました(図10)。


図10
左:術後 右:術中
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 今回、スギ花粉症など強度の鼻閉を訴える20症例について、2001年11月から2002年3月までの5ヶ月間に、ソムノプラスティによる肥大下甲介手術を行ない、その有効性と安全性を確認しました。

 また、術前・術後の自覚症状の変化については、後記の問診表を用いました。更に客観的データとして、術前後のMRIを全例撮影しました。


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 自覚症状は、私たちがこれまでに世界各地で数万例のアレルギー疫学調査を施行した、その問診表を使用しています(表1)。

 この表において、「いつも・ときどき・まれに・なし」をそれぞれ(+++)(++)(+)(-)と表記し、3・2・1・0のスコアをあてました。また、術後約1ヵ月の時点で外来を受診させ、アンケート調査とMRIの撮影を行いました。

 

手術後の症状回復

 それでは、いくつかの症例の具体例をみていきます。

 症例12は、副鼻腔炎を患っている患者のMRIですが、術後では鼻粘膜の腫れがひき、副鼻腔炎も消失しています(図11○内部)。

 症例4は、手術前は鼻腔が完全に塞がっていましたが、術後は腫れがひき通気スペースができています(図12○内部)。

 20症例の自覚症状の変化を図式化(表2)したところ、ほとんどの場合症状が改善されており、そのうち、鼻閉はおよそ75%の改善率となっております。(図15)

 以上のように、アレルギー性鼻炎の鼻閉に対してソムノプラスティは非常に効果があるという事が実証されています。


図12 症例4のMRI

図11 症例12のMRI

図14 症例7のMRI

図13 症例1のMRI
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表2:全20症例における
自覚症状の変化(術前→術後)


図15 術後の鼻閉改善度
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おわりに


図16
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 当院では、第1世代の機器を10年使用して来ましたが、最近では主に第2世代型の機器(図16)を用いての治療を行っております。

 こちらも、ソムノプラスティと同等以上の治療効果が得られています。

 つらい鼻づまりに対して、一度は試みる価値のある治療法と言えます。



詳しくは院長著書をご参照下さい。
関連リンク: 用語集 索引 ソムノプラスティ
  用語集 索引 講演会

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