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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
院長の北海道白老町に関する論文を紹介します
アレルギーフィールドノート(1)日本人の鼻アレルギー有病率(日光と北海道を比較して)

三好 彰 (三好耳鼻咽喉科クリニック・院長)
程   雷 (南京医科大学医学部耳鼻咽喉科・講師)
三邉武幸(都立荏原病院耳鼻咽喉科・医長)

臨床と薬物治療 16:61-64,1997.

北海道白老町学校健診の光景です。小学生をひざに乗せて、右耳の中をのぞいています。
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増加した鼻アレルギーは現在日本人の何パーセントに存在しているのだろうか。われわれはそれを確認するために、スギの多い日光国立公園内の栃木県栗山村とスギのほとんどみられない北海道白老町とで、鼻アレルギー疫学調査を施行した。
視診、問診、スクラッチテストを実施して確認した鼻アレルギー有病率は、白老町で4.5 %、栗山村で3.2 %であった。ただし、スクラッチテスト陽性率は、スギの影響を反映して栗山村のほうが高かった。
また年齢の増加に伴いスクラッチテスト陽性率は上昇したが、有病率も同様の傾向を示すものと推測される。
現時点の日本人の鼻アレルギー有病率は児童・生徒で4%前後、成人でそれを上回るものと判断された。

 第二次世界大戦前、欧米と比べてその存在がはっきりしなかった日本人の鼻アレルギーは戦後急増した。現在では日本人の鼻アレルギー有病率は欧米と同じと推測される〔1〕。

 しかしそれではいったい日本人の何パーセントに鼻アレルギーが存在するのだろうか。それを確認するためには、以下の条件を満たした調査の行われる必要がある〔2〕。

アレルギーのフィールド調査


図1 北海道白老町と栃木県栗山村の位置
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(1)調査は、少なくとも一つの行政単位(自治体)のある特定のすべての人間を対象として施行されなければならない。その対象とはたとえば、成人病検診もしくは学校健康診断などであって、検討はなるべく自覚症状の乏しい例に対してもなされることが望ましい。自覚症状があって医療機関を訪れた症例についての調査だけでは、現在の状況を反映する成績は得られないからである。

(2)調査を受ける自治体は、可能ならば現在の日本の状況を代表する複数の自治体が選ばれるべきで、その自治体間の距離はできるだけ離れていることが望ましい。

(3)調査を受ける症例については可能ならば何年かごとに複数回調査の施行されることが望ましい。アレルギー増加の有無について、同一の人間の変化を追跡することによって厳密な判断をくだすことができる。

北海道白老町と栃木県栗山村


図2 自覚症状に関する問診表
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 こうした趣旨に沿う調査対象としてわれわれは、北海道白老町と日光国立公園内の栃木県栗山村とを選んだ(図1)。栗山村は日本で最初にスギ花粉症の発見されたことで有名な日光国立公園内に位置し、白老町は対照的にスギの少ない地域に存在するからである。

 そして調査の機会としてわれわれは学校健康診断の形態を利用し、これらの地域の児童・生徒全員を調査できるように考慮した。具体的に健康診断は、小学校1年生(小1)、小学校4年生(小4)、中学校1年生(中1)について行い、3年かけて全児童・生徒を網羅した。

 白老町の調査は1989年度から開始され、栃木県栗山村のそれは1992年度から始まっている。ゆえに前者は1989〜1991年度で、後者は1992〜1994年度で全児童・生徒の調査を終えたことになる。

 なお調査項目は、自覚症状に関する問診表(図2)とつねに同一の視診担当医1人による鼻鏡調査、そしてハウスダスト(HD)、コナヒョウダニ(ダニ)、スギ花粉(スギ)のスクラッチテストである。今回われわれは、視診担当医による鼻アレルギーもしくはその疑いと診断され、問診表において鼻アレルギー三徴(くしゃみ・鼻汁・鼻閉)のうち二つ以上の症状を有し、スクラッチテストにおいてHD・ダニ・スギのうち1種以上のアレルゲンに陽性反応を呈する、との三つの条件を満たした例を鼻アレルギーとして扱った。

 結果的に、白老町で2677例(男子1300例、女子1377例)が、栗山村では218例(男子109例、女子109例)が調査を受けた。これらは調査当日病欠となった児童・生徒を除くほぼ全員である。

両地域の陽性率の差は


図3 北海道白老町の学年別スクラッチテスト陽性率(1989〜1991年度)

図4 栃木県栗山村のスクラッチテスト陽性率(1992〜1994年度)
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 白老町では、「スクラッチテスト1種以上陽性」例は小1で26.7%、小4で33.7%、中1で44.1%、全体で35.8%であった。鼻アレルギー有病率は4.5%となった。またアレルゲン別にみると全児童・生徒で、
「HD陽性」例が27.2%、「ダニ陽性」例が32.3%、「スギ陽性」例が0.4%であった(図3)。

 一方栗山村では「スクラッチテスト1種以上陽性」例は小1で25.6%、小4で43.4%、中1で59.7%、全体で41.7%であった。鼻アレルギー有病率は3.2%となった。アレルゲン別には全児童・生徒で、「HD陽性」例が30.7%、「ダニ陽性」例が31.2%、「スギ陽性」例が25.2%であった(図4)。

 両地域の陽性率の差は、スギに対する反応の相違を反映しているものと思われ、アレルゲン暴露の条件差異と判断された。また、距離が離れ、かなり条件の異なる2地域のHD、ダニに対する陽性率の近似は、現代の日本の住環境におけるダニ汚染の問題を無視しがたいものであることを示唆しているように思われた〔3〕。

 なおことに白老町において、児童・生徒の年齢の増加に伴いスクラッチテスト陽性率の上昇がみられる。これは高年齢ほどアレルゲンに暴露される時間が長いために陽性率も高くなるものと推察された。つまり、アレルゲンへの暴露が感作を左右しているとの仮説の一つの裏づけともいえる。

日本人の鼻アレルギー陽性率は

 それゆえにおそらく、これら児童・生徒のスクラッチテスト陽性率ならび鼻アレルギー有病率よりも、成人の陽性率、有病率はさらに上昇しているものと推論される。また、1年のうち飛散する季節が限られアレルゲンとして暴露される期間の短いスギは、HD やダニに比べ感作率の上昇するまでより長い年月を必要とするものと考えられる。ゆえに成人においては、今回栗山村の調査で判明したよりもさらにいっそう高率のスギ陽性率、有病率となる可能性を否定できない。

  なおそれらを含めて判断すると、現時点の日本人アレルギー有病率は児童・生徒の年齢で4%前後、そして成人の年齢でそれを上回る有病率を示すものと推測される。


■文 献
〔1〕奥田 稔:疫学,鼻アレルギー,第2版,金原出版,東京,p113-137,1992.
〔2〕三邊武幸・他:疫学,児童生徒のアレルギー実態調査について-北海道と日光の比較,アレルギーの臨床,16:532-543,1996.
〔3〕三好 彰・他:学童におけるスクラッチテスト陽性率の疫学的検討(その実際方法について).アレルギーの臨床,14:766-769,1994.
〔4〕三邊武幸・他:白老町学校健診におけるスクラッチテスト陽性率(第2報 鼻アレルギーとの関連).耳鼻咽喉科・頭頸部外科,67:1080-1085,1995.
〔4〕三邊武幸・他:鼻アレルギーと住環境,臨床と薬物治療,15:332-334,1996.

※現在、程雷先生は南京医科大学耳鼻科教授、三邉武幸先生は昭和大学藤が丘病院耳鼻科教授になっておられます。


仙台陣屋かわら版

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仙台藩白老元陣屋の総大将の子孫!
三好彰先生が耳鼻科健診のため今年も来白

 今年も仙台市から、三好彰先生(三好耳鼻咽喉科クリニック院長)が白老にお越しになりました。

 先生は、安政2年(1855年)春、蝦夷地(今の北海道)を踏査し、北方警備のために元陣屋を白老に設置すべきと報告し、後に陣屋の御備頭(総大将)として白老に着任した三好監物の五代目の子孫にあたる方。「白老と先祖のつながりを大切にしたい」との思いから、昭和63(1988)年より毎年、耳鼻科医のいない白老にご好意で訪れ、町内の小中学校を回り、児童・生徒らの健診をして下さっています。



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