3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
良性発作性頭位(BPPV)の診断と治療
三好 彰(仙台市医師会) 
宮城県医師会報776:702-703, 2010.

はじめに

 めまい疾患は病態が複雑であるのみならず、ときに複数の原因が絡み合って症状を引き起こしていることもあり、その取り扱いに困惑することも絶無でない。

 ここでは、92 年の開院以来当院を受診した10 万症例(実数)の中から、めまい疾患としてもっとも症例数の多い良性発作性頭位眩暈症(以下BPPV)の実例を挙げ、その病態とめまい専門医としての対応法について考察する。

症 例

症例1 54 歳 男性

現病歴 :  
 1995年頃回転性めまいを発症、2ケ月間の入院を含め内科にて治療を受けて来たが、病名は不明であった。

 2010年2月2日、精査のため当院を受診した。

既往歴 : なし。

受診時所見 :  
 鼓膜所見に異常なく聴力も正常だったが、赤外線カメラ下に左方へ向かう回旋性の眼振を認めた。

 この眼振は、頭位変換眼振検査において、右下懸垂頭位では右方に向かい、座位に戻すと左方に向かうことが確認された。

受診後の経過 :
 右側後半規管型の良性発作性頭位眩暈症(以下BPPV)と診断されたので、浮遊耳石置換法(エプリー法)を実施した。直後よりめまいは改善したが、本法の原則に従い週1回の反復治療としたところ、1ケ月でめまいはほぼ消失した。

症例2 64 歳 男性

現病歴 :
 2008年頃から、ふらつきを自覚していたが、2009年11 月初旬より急激にめまいが増強した。
 雲の上を歩いているようで、歩行中ふらつく。起床時や横になったとき、寝返りをうったとき、おじぎをしたとき、首を後にそらしたとき、などにめまいが生じる。

 内科・脳外科・脳神経内科・耳鼻科などでMRIを含めて検査したが、原因は不明であった。

 2010年1月13 日、当院を受診した。

既往歴 :
 2000年頃、心筋梗塞にてカテーテル留置を受けている。

受診時所見:
 鼓膜所見に異常なく聴力も正常だったが、赤外線カメラ下に右方へ向かう回旋性の眼振を認めた。この眼振は、頭位眼振検査ならびに頭位変換眼振検査において、左方への捻転時に垂直性成分が加わった。

受診後の経過 :
 左側後半規管型のBPPVと診断されたので、エプリー法を受診当日とその1週間後とに、実施した。

 2回目のエプリー法施行後、めまいは消失した。


図1
※画像をクリックすると
拡大写真がご覧いただけます。

考 察
 BPPVは、めまい疾患全体の30〜40%をしめるとされ、きわめて頻度の高い疾患である〔1〕 。このBPPVは、ある特定の姿勢(めまい頭位)で回転性のめまいが誘発され、難聴・耳鳴など蝸牛症状や中枢神経症状を伴わない、予後良好な疾患である。めまいは特徴的で、めまい頭位をとったとき、具体的には寝返り時や靴の紐結び時そして背伸び時に、一呼吸おいて回転性ないし動揺性のめまいが出現する。この際、回旋成分の強い眼振を伴う。こうしためまいと眼振は、めまい頭位で増強し、時間の経過とともに減弱し消失する。何回か同じ頭位をとると、軽くなるか発生しなくなる。


図2
※画像をクリックすると
拡大写真がご覧いただけます。

 本疾患は、内耳の耳石器の耳石由来の破片が、半規管内を浮遊することによって内リンパ液の流動が生じ、半規管内の有毛細胞が刺激されて発生する。解剖学的な理由から、この浮遊耳石は三半規管の中でも、後半規管に生じ易い。
なおBPPVの診断と患側の決定には、頭位変換眼振検査が必要〔1〕〔2〕で、それ以外の検査では検出は困難である。

 本疾患の予後は、一般的に良好であることから、これまでは鎮暈剤投与などが行なわれてきた。しかし、姿勢の変換によって浮遊耳石を元の位置に戻しさえすれば、症状が劇的に改善することから、近年はエプリー法など理学的療法が主流になっている。

 その実際であるが、右側後半規管に病変が存在する場合、次のような操作を行なう。


図3
※画像をクリックすると
拡大写真がご覧いただけます。

 患者は、ベッドの上で座位をとる。ついでその姿勢から右下45度の懸垂頭位をとる(図1)。このとき患者はめまいを訴え、回旋性成分の強い眼振が生じる。眼振の終了を待って左下懸垂頭位へゆっくりと頭位を変換する(図2)。さらに体を横に倒す。体は90 度左向き、頭位は135 度左向きとなる(図3)。その後、そのままの角度で体全体を起こす。最後に体を正面に向け、頭位は20 度俯きとする。

 提示した症例1・2のごとく、エプリー法の効果は一種劇的でさえある。BPPVという疾患の存在すること、適切な診断と治療が重要であることを強調したい。

おわりに

 当院を受診しためまい症例のうち、今回はBPPVについて紹介した。

 めまいは本人にとって負担が大きいだけに、その対応を多くの会員にお知り置き頂きたいと念じる。


※画像をクリックすると
拡大写真がご覧いただけます。

文 献
〔1〕 肥塚 泉 : 良性発作性頭位めまい症.第26 回日本めまい平衡医学会医師講習会テキスト.宇佐美真一編,8-15 頁,信州大学,松本,2009.
〔2〕 中山明峰 : 浮遊耳石置換法(Epley法を中心に).第26 回日本めまい平衡医学会医師講習会テキスト.宇佐美真一編,26-66頁,信州大学,松本,2009.


関連リンク: 索引:めまい

←前ページ    次ページ→

No.190
トップページへ 前ページへ