3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
雑誌社の取材を受けました

Th1/Th2 バランスの図
Th1/Th2 バランスの図
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 この1月24日(月)に医療ライター・福島安紀さんによる『ヨーグルトで花粉症が改善する? 』という言い伝えについて「プレジデント・ファミリー」誌の取材がありました。
 関連の話題として、05年1月27日に院長の『愛しのダニ・ボーイ』出版記念パーティーで、白川太郎先生が講演された内容(3443通信No.122)を、抜粋してご紹介します。

 「アレルギーの本態とはなにかということにつきまして、それは体の中の血液の中には血の色をするための赤血球、これは酸素を運んでおりますね。もうひとつは白血球というのがございまして、その白血球にもいろいろな役割を持った細胞がいっぱいおります。その中のリンパ球というのがございまして、これはほかの白血球にこういう仕事をしろということを命令するものがございます。そのリンパ球の中にも2種類ございまして、癌やウィルスが入ってきた細胞を直接殺すためのリンパ球と、ほかのリンパ球が仕事をしやすくするためにそれを助けてやるリンパ球というのがございます。これをヘルパー細胞といいますけども、そのヘルパー細胞にさらにまたややこしいことに2種類ございまして、ここに書いておりますけれどもTヘルパー細胞Thですね。1型と2型がある。アレルギーの人では喘息の方の肺を調べさせていただくと、この2型の細胞が1型の細胞よりはるかに強い能力を持っていたり、数も多くなっているということが分かりまして、これこそがアレルギーの本態であるということが分かったわけです。

 そこでわれわれ研究者としましてはアレルギーを予防しようということになりますと、予防には環境を変えるしか方法がない。

 例えば徹底的にダニを駆除することによってかなりの数、半分近くの患者さんの症状を和らげることが出来る、極端に効く場合はほとんど症状を完全にフリーにすることが出来るというところまでいけるということですね。

 それから大気汚染がひどくなっている、従って街を離れて田舎へ移ったら確かによくなった、こういうのもあります。それから食事が変わってきた、昔の日本食をやめてファーストフードを食うようになったのでそうなった、じゃあ食事を元に戻してみたらそれがよくなった。そういう症例がいろいろあります。われわれがその中でいちばん今まで注目しているのは……。

 ここに書いてある衛生仮説というのでありまして、約十数年前にロンドン大学の教授だったストラッチャー先生というのが、アレルギーの発症しておる子どもさんの家族をよく見ましたところ、兄弟のたくさんいる子どもさんの家ほどアレルギーが少ないということに気づいたわけですね。

 つまり兄弟間で、要するにお互いに風邪をうつし合いっこしたり、そういう感染症をうつし合いっこしてるので、そのためにもしかしたらアレルギーが出なくなっているのではないかという、そういうことなんですね。だからそれを衛生仮説といいまして、反って逆に衛生状態が悪いほうがアレルギーが少ないんだ、そういう説を出したんですね。

 もうひとつは、私がイギリスにいましたときに私のボスであったジュリアン・ホプキンという先生が非常に衝撃的な論文を書いています。これはオックスフォード県に生まれた、1975年から1984年に生まれた約数千人の子どもさんについて何十年か追っかけていきます。その結果、彼が見つけたことは、実はアレルギーの発症にとっていちばん重要だったのは、その子どもさんが2歳以下のときに抗生剤を使用されたかどうかということが非常に重要であるという結果が出たわけです。

 今の2つのデータから何が分かるかといいますと、細菌感染症が減るとアレルギーが増えるということと、抗生剤をのんで抗生剤が効くところというのはおなかの中なんですね。従いましてこの抗生剤がなにか悪さをするとしたら、生まれた直後の新生児、および乳児のおなかの中の細菌を殺しているということになります。

 そこでなにを使って予防するか、つまり抗生剤に影響受けるのは腸内細菌だということですから、おなかの中の細菌のなにが問題になるかということを考えなきゃいけない。

 実はおなかの中の細菌を調べるというのはかなり難しい。おなかをかっさばいて中を見るわけにいきませんので、腹の中の細菌を見るというのはかなり難しいのですが、ひとつだけ道具があって、それは皆さんのウンコちゃんですね。

 スウェーデンにビョルクステン教授というひとがいらっしゃいますが、彼は2年間、生まれた子どもさんのウンコちゃんを調べましてどういう細菌がアレルギーになった子どもとならない子どもで多いかと調べてみますと、ある種の乳酸菌がアレルギーの子どもでは減っていて、悪玉菌と言われるぶどう球菌が増えているということがすでに報告されています。従って彼はこの乳酸菌がやはりキーになるものであるというデータを出しています。

 もうひとつはやはり同じく北欧のフィンランドでこういうようなデータを元に、じゃあ乳酸菌を本当に子どもに食べさせてみたらアレルギーが減るかどうかというのを直接勝負に出たわけですね。そこで妊娠中のお母さんに乳酸菌の入ったものを食べていただく。それで子どもさんが生まれたら母乳やミルクに乳酸菌を混ぜて3ヶ月飲んでいただく。その結果を2年間追跡した結果を見てみますと、アトピー性皮膚炎の発症が46%から23%に下がった。つまり半分に減った。こちらはなんにも乳酸菌を入れてないグループですけれども、それに対して、入れると半分に減っているということで、これはこの世界では非常に有名な論文なんですが、要するに乳酸菌によってアトピー性皮膚炎をある程度予防することが可能であるというデータが出てきたわけです。

 この、腸内細菌とかそういったものを広くプロバイオティクスと言っています。これは先程ご質問があったように、生物間の共生関係 probiosis を意味する生態用語を起源としている。つまりプロバイオシスという用語になるようにバイオティクスの前にプロという言葉をつけたわけですね。で、プロバイオティクスとは腸内細菌のバランスを改善することにより宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物、つまり生きた細菌というふうに定義されています。細菌は生きてなくてもいいんでないかいということもありまして、そういう形でプロバイオティクスを定義されています。

 これがアレルギーの予防にいいと、しかも、それを確かめようとするとなにをしなきゃいけないかというと、スギ花粉症の人あるいはアトピー性皮膚炎の人に食べていただく、あるいはこれから生まれるお子さんが本当に予防できるかどうかということをやるということですね。

 これは小国町でやった活動ですが、これがおなかの中の消化管で、ここに先程言いましたような話をすると悪玉菌とか善玉菌がいます。そういうのにプロバイオティクスもからんでまして、そういうものが消化管の表面にあるいろいろな信号を伝える分子に結合することによって、いろいろな、ああしろこうしろというシグナルが伝わって、それが最終的な結果として免疫細胞に伝えられてアレルギーが起こるか起こらないかということが決まるわけですね。

 われわれはここの信号を伝える分子というものに、きょうは全くお話しませんでしたが実はこれが皆さんの遺伝子で規定されておりましてアレルギーになるとかならないことが決まる、あるいはその薬が効く、効かないということが恐らくここの遺伝子の差で説明できるだろう。

 従いましてここの遺伝子を各子どもさんで調べさせていただいて、プロバイオティクスを投与したときにアレルギーが起こるか起こらないか、効いたか効かないかということと今の遺伝子の情報を組み合わせて、将来的にはこの子どもはアレルギーを起こすんだけれどもこの手のプロバイオティクスを飲めば恐らく効果があるだろうという形で、一人ひとりのベィビーの違い、遺伝的な違いを視野に入れた指導がしたい、そういうことを考えています。

 そのためには一人ひとりの違いがあるわけだから、一人ひとりの顔も違えば走るのも違う、能力も違うというのといっしょで、いろんなその子どもに合ったプロバイオティクスを選ぶことによってアレルギーを予防してあげるような研究が出来ないかということを考えてやっているということでございます。」
(白川太郎)


関連リンク: 用語集 索引:花粉症

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No.194
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