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2010中国・チベット調査レポート(3)

 今回で、2010年チベットレポートは最終話となります。世にも恐ろしい高山地帯、悠久の時を感じさせる樹齢2600年の大檜、超巨大な石仏など、内容てんこ盛りのチベットレポート最終話をお楽しみください。
看護課 浅野 佳代

9月22日(水)ラサ~林

標高5,013mのミラ峠
標高5,013mのミラ峠
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 9月22日(水)早朝、バスでラサを出発し、チベットの南東部に位置する林芝にむかいました。途中、標高5,000m以上のミラ峠を越えていきます。

 ラサ市内を離れしばらくすると、回りの景色が広々とした牧草地に変わり、牛や豚などの家畜や家畜を連れている農民の姿をみかけるようになりました。道路は思ったよりきちんと整備されており、快適なドライブでしたが、途中休憩で立ち寄ったお手洗いは「中国のトイレは……」と、噂に聞いていた通りの解放感あふれる構造でした。ええい!  背に腹は変えられないとばかりに、用を済ませ再びドライブ開始。外国に来るとこうしたちょっとした習慣の違いに驚かされます。

 バスは少しずつ山を登って、お昼前に標高5,013mのミラ峠に到着しました。天気もよく、美しい青空にタルチョがはためいていました。峠は観光客でにぎわっており、観光客相手に、タルチョやお札が売られていました。

タルチョの経文
タルチョの経文
林芝の山に掲げられたタルチョ
林芝の山に掲げられたタルチョ
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 我々もタルチョを購入しタルチョに願い事を記入して峠にかかげました。タルチョは経文が印刷された祈祷旗で5色の色があります。それぞれの色は地・水・火・風・空を表しているそうです。

ミラ峠で計測中の清水先生
ミラ峠で計測中の清水先生
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 本来、願い事を書くものかどうかは、わかりませんが、チベットの人々は受験など家族に何かある時に家の屋上や、湖畔、山等に祈りを込めてかかげるそうです。タルチョは仏教が広がる前のチベットの原始宗教・ポン教のなごりだということです。

 ひとしきり観光が終わった後に、バス内で血中酸素飽和度と呼気中二酸化炭素分圧の測定を行いました。

 私は、酸素の薄さと寒さにばててしまい、バスに常備されていた携帯用のスプレー式酸素ボンベで酸素吸入を行いました。すると、とたんに体が楽になります。あっという間に1本分を使用してしまいました。ちなみにこの酸素ボンベは、緊急用で使用するための物(サービス)かと思っていたら、1本30元(約400円)ということで、後でしっかり請求されました。お金で買えるものなら早く教えてよ!  と思いつつ、林芝での標高4,0 0 0m以上の観光地では、ちゃんと酸素ボンベを購入し、低酸素を予防したのでした。

 ミラ峠を後にし、道路沿いの小さな食堂で昼食。
 大きなレストランの豪華な中国料理に飽きてきた頃で、ここの素朴なご飯と日本から持参した漬物が、ホッと胃に沁みました。いかにも農村という感じの風景が続き、道路を横切る牛や豚を目にすることが多くなってきました。道の優先権は牛たちにあり、猛スピードを出している車のクラクションも気にせず、牛はのんびりと道路を横切るのでした。

林芝に到着

 林芝は標高3,000m位でチベットの中では比較的、標高の低い地区です。林芝の地区面積の40%は森林で、チベット自治区の木材の生産地になっているということです。

 林芝が近づくにつれ、材木を積んだトラックをみかけるようになりました。

 夕方、林芝に到着。峠越えは無事に終わりました。林芝はラサと違って森や牧草地・畑が多く、のどかな雰囲気の町でした。標高も少し低いせいか、ラサより楽に動くことが出来ます。

9月23日(木)林芝を見学

樹齢2600年の大檜(No.192参照)
樹齢2600年の大檜(No.192参照)
鳥葬の場所(観光用です)
鳥葬の場所(観光用です)
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 23日(木)の午前中はセチ・ラ峠にいきました。

 セチ・ラ峠は標高4,515m。近くの展望台から、世界15位の高峰ナムチャ・バルワ峰(標高7,782m)を見ることが出来ます。ガイド・ブックによると「ナムチャ・バルワ峰は夏期の雨の多い観光シーズンに、その姿を目にすることは非常に珍しく……」と書いてありましたが、私たちは、雲の切れ間から、そのいただきを見ることが出来たのです。たった1回のチャンスで名峰の姿を拝むことが出来るなんて、ものすごく幸運でした。

 セチ・ラ峠をおりて、世界柏樹大樹林へ行きました。2004年のアレルギー調査で殷先生と稲川先生がここを訪れています。花粉症は、その原因物質である日本杉が日本の特産とされてきたため、日本特有の病気と思われてきました。しかし、我々の中国・チベットアレルギー調査で中国の柳杉と日本杉は共通の抗原性を持つ事がわかりました。そして、スギと共通の抗原性をもつ檜がチベットに存在し、チベットのアレルギー調査でスギに陽性反応を示す人がいることを確認しています。

 林芝には檜の森林があり、セチ・ラ峠からは檜の樹海を見渡すことが出来ました。そして、世界柏樹大樹林には、樹齢2600年の大檜がありました。殷先生・稲川先生は前回訪れた時の事を懐かしく思い出していたようです。午後は林芝自然博物館の見学です。

 博物館の敷地内に、天葬台がありました。天葬というのは、鳥葬のことです。チベットの葬式は五葬と呼ばれ、火葬・土葬・水葬・鳥葬・塔葬があるそうですが、もっともポピュラーなのが鳥葬です。鳥に遺体を食べさせるなんて私たちには残酷に感じるのですが、宗教的背景(人の魂は亡くなると体から離れ、体はただの物体になるという考え方)や環境(木々が少なく、酸素が薄い)を考えると頷けるような気もします。

 夜は林芝特産の香豚の丸焼きとダンスで現地の人と楽しく過ごしました。
これで4日間のチベット訪問は終わりです。高地体験とチベット文化にふれることが出来た事は貴重な体験でした。

9月24日(金)林芝~楽山

 24日(金)、飛行機で林芝から成都へ移動し、我眉山へいきました。

 成都に着陸し飛行機から降り立った時、成都の空気は埃っぽくて決して美味しいとは言えなかったのですが、苦しくならずに普通に動ける事がとても嬉しかったです。成都で再び南京医科大学の程先生と合流し、まずは楽山市へ行きました。そこで世界最大の石刻座仏である楽山大仏を見学しました。

人だかりと比べると、石仏の巨大さが良くわかります 石仏によって鎮められた岷江 高さ71m、肩幅28mの巨大石仏
人だかりと比べると、
石仏の巨大さが良くわかります
(誰です? 院長の態度の方が
デカイなんて言ったのは)
石仏によって鎮められた岷江



高さ71m、肩幅28mの巨大石仏



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 楽山大仏は岷江を臨む栖鸞峰の岸壁に彫られた大仏です。古来より岷江の氾濫による水害が多かったこの地域で、その氾濫を鎮めるために唐の時代の713年から、凌雲寺の僧・海通によって建立され、803年に完成したものだそうです。
楊貴妃役のガロさんと皇帝気分の院長
楊貴妃役のガロさんと皇帝気分の院長
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 この大仏、あまりに巨大すぎて岷江から船に乗り、川から眺めないと全体像がわからないそうです。しかし、船からみても巨大すぎて、最初はその一部分だけしか見えず、何故こんな場所で船が止まっているのだろうと不思議に思っていました。観光案内はありましたが、中国語なので何を言っているのか分かりません。岸壁の方を見ていると、観光客らしい人々が大勢、階段を登っています。何があるのかと、その上の方を見上げると、大仏の顔にやっとたどりつきました。それにしても大きすぎ!  河の氾濫を鎮めるためとはいえ、なにもこんなに大きくしなくても……、と思ったのは私だけでしょうか。中国の河のスケールに合わせ、河を見渡せる大きさの大仏が必要だったのでしょうね。

 楽山を後にし、成都から約160kmの我眉山で一泊しました。

 ここには玄宗皇帝と楊貴妃で有名な温泉がありましたが、日本の温泉とは違い、スパランドみたいになっていて、温泉プールで遊べるようになっていました。みなさん水着を購入し、童心に返りウォータースライダーを楽しんだり、泳いだり潜ったり、旅の疲れを癒していました。

  夜は、待ってましたと言わんばかりの大宴会です。消費したビールの量は半端ではなく、レストランのスタッフはやや呆れている様子。宴会に付き合わされた美人ガイド・ガロさんは、こんなお客さん始めてと驚いていました。でも、楽しそうでした。稲川先生に名古屋弁で「とても美味しい!  」という日本語を教わって「でりゃーうみゃー」をマスターしていました。ぜひ今後いらっしゃる日本人観光客に、披露して欲しいと思います。

9月25日(土)峨眉山を見学

万年寺へのロープウェイ
万年寺へのロープウェイ
山中にある万年寺
山中にある万年寺
7 回目の参加となる稲川先生と
7 回目の参加となる稲川先生と
万年寺の普賢菩
万年寺の普賢菩
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 25日(土)は我眉山見学でした。我眉山は中国仏教における4大聖地の一つです。古来より仙人の住む場所といわれ、山中に多くの寺院があります。山頂までいけるようになっていましたが、私たちはロープウェイでいける万年寺までいくことにしました。

都の陳麻婆豆腐で無事生還に乾杯!
都の陳麻婆豆腐で無事生還に乾杯!
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 万年寺には普賢菩薩が祀られています。この菩薩は宋(960年~1127年)の時代に造られたそうですが、少し面白い形をしていて菩薩が白象に乗っていました。原始仏教にはもともと仏像を拝む偶像崇拝はなかったそうです。その当時の崇拝対象は仏陀の骨である仏舎利であり、それを納めた仏塔でした。紀元前334年・アレキサンダー大王の東方遠征でギリシャ人が東方に移動しました。そして、その後ギリシャから持ち込まれた彫刻の技術を使いガンダーラ彫刻が生まれ、仏像が作られるようになったそうです。それから、大仏や観音様等の仏像を拝むようになったようです。仏像は、ヘレニズム文化なのですね。

そういえば、チベットの五体投地は仏像ではなく聖地(場所)に向かってお祈りしていました。同じ仏教でも地域によってその地域の文化や風習の影響をうけ違っていることが、とても興味深かったです。そしてこの日晴れ女の私は、今回の旅で初めて雨に降られました。大雨ではなくシトシト降る感じで、静かに旅の終わりを告げているかのようでした。

 我眉山から成都へもどり、10日間に渡る、中国・チベット調査も終了です。

今、思い返してみると、長かったような短かったような10日間でした。参加して下さった昭和大学・愛知医科大学の先生方、上田先生、南京医科大学の殷先生・程先生、院長先生、本当にお世話になりました。ありがとうございました。そして若さとパワーでのりきった高橋Ns! お疲れ様でした。また来年頑張って下さい。

9月26日(日)最終日帰国

 11日ぶりに、和食とキリンビールで日本を満喫しました。

2010年チベット調査 旅レポ(3)


関連リンク: 用語集 索引:チベット
関連リンク: 用語集 索引:アレルギー調査

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No.194
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