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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集
 
 
三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート(18)
 

耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」。院長の三好彰医師(日本睡眠学会認定医)は、30年余、耳鼻咽喉の診療に携わる。今回は9月号に引き続き、7月にfmいずみで放送された「いびき」に関する内容を紹介する。

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 [An.…江澤アナウンサー 、 Dr.…三好院長


★ピックウィック症候群

An.:  三好先生、今回は肥満がいびきやSAS(睡眠時無呼吸症候群)に及ぼす影響についてお話しいただけるんですよね。

Dr.:  いびきやSASは、気道に引っ掛かる部分があると摩擦音が発生します。肥満の状態では、気道の内側にも体と同様に脂肪が付着します。

An.:  気道の中を通過する空気が脂肪に引っ掛かる?

Dr.:  脂肪が内側に付着した分だけ気道は狭くなります。そうすると、空気の通り道の抵抗が増加して…。

An.:  摩擦音、つまりいびきが発生するんですね!

Dr.:  そしてその程度がひどくなると…。

An.:  SASになるんですね。

Dr.:  いびきやSASが病気として知られる前から、とても太った人がよく居眠りをするのは有名でした。

An.:  その昼間の居眠りは、実はSASによる夜間の睡眠不足が原因だったんでしょうか?

Dr.:  そうです。とても太った人の昼間の居眠りをチャールズ・ディケンズの小説の登場人物にちなんで、「ピックウィック症候群」といいます。

An.:  チャールズ・ディケンズって、あの「クリスマス・キャロル」で有名な?

Dr.:  その通り。手元の医学書にピックウィック症候群の症状について書いてありました。江澤さん、読んでみてください。

An.:  はい。「ピックウィック症候群。典型例では、昼間の過度の眠気が主訴である。運転中に居眠りをして交通事故を起こしたり、重症例では毎日絶え間ない居眠りに悩まされる。また失神することや、見当識の喪失、健忘をきたす」。先生、見当識の喪失って何ですか?

Dr.:  「ここはどこ? 私は誰?」というものですよ(笑)

An.:  なるほど! 続けます。「重症化した場合には、次第に注意力、判断力の低下、動作の緩慢化が見られる。また、のんき、お人よし、思考は大ざっぱで、物事を緻密に考えるのが苦手であるなどの性格傾向をもつことが、ピックウィック症候群の特徴である。これらの性格特徴は、この症候群が絶え間のない眠気に悩まされていることを反映しているものと、考えられる」。SASで人間の性格まで変わるんですね。

Dr.:  こうしたお話は、決して誇張されているものではありません。当院を受診した当時62歳の男性の場合がそうです。私はこの方を昔から知っていて、10年ぶりに会ったのですが…。

An.:  その方がピックウィック症候群?

Dr.:  昔のその方のイメージとまるで違っていて、とても太っていたんです。受診時には眠くて真っすぐ歩けませんでした。

An.:  ええっ! そのとき先生は、どのように?

Dr.:  この方はまさにピックウィックそのもの、つまりSASだとすぐに診断がつきました。一晩、睡眠中の様子を記録したら約5時間で、閉塞(へいそく)性、つまり体脂肪のために気道が詰まって無呼吸になる回数が330回。一番長い無呼吸の状態は、何と105秒でした。睡眠中の脳波は、とても浅い睡眠波形で見掛けは寝ていても脳はまるで眠っていなかったんです。

An.:  だから、昼間はひどい眠気で意識も途切れがちになるんですね。

Dr.:  この方は当院でSASの治療を受け、今では健康的な生活を楽しんでいます。


★いびきやSASによる影響

Dr.:  いびきやSASによる眠気によって、仕事に差し支えるほか、学業成績などに影響が出ます。

An.:  それは困りますね。

Dr.:  それに加え、いつも不安になったり、いら立ちやすくなったりします。

An.:  そんなこともあるんですね。

Dr.:  これが本人だけでなく家族にまで、精神的な影響を及ぼすことがあります。

An.:  家族まで巻き込まれてしまうんですね。

Dr.:  例えば10年ほど前に当院を受診された56歳の男性の場合です。この方の奥さまから聞いたエピソードを読み上げてください。

An.:  はい。「主人はいつもいらいらしている感じで、自宅に遊びに来た息子の友人にまで怒鳴ってしまうこともありました。いつでもボーッとしている様子ですし、夜は夜で主人の息がいつ止まるかと不安でした。私まですっかり鬱(うつ)っぽくなってしまって、寝込むほどでした」。先生、本当に本人だけではなく、家族の方まで精神的に巻き込まれていますよね。

Dr.:  ところがこの方も適切な診断と治療を受けると、精神的にもすごく良くなりました。

An.:  治療後の奥さまのコメントです。「治療を受けるようになって朝の頭痛がなくなり、すっきり起きられるようになりました。それに全然怒らなくなったんです。血圧も落ち着いて、心臓も少し要注意だったのに、治療開始後には悪化することもなく、循環器内科の先生も驚いていました」。先生、治療効果が上がって奥さままで明るくなられたみたいですね。

Dr.:  ご本人も「無呼吸の治療機がうまく使えないときは、今でも眠れないし頭痛もひどくなるが、治療機を使って熟睡できると、すっきり目覚めて体調が良い」と言っていました。

An.:  先生、いびきやSASによる精神的な影響がこんなに大きいことや、それが本人だけでなく、家族にまで波及することがよく分かりました。しかしそれらが精神的に影響するということは、脳にも所見が出ているのでしょうか?

Dr.:  いびきや無呼吸を観察するためには、一晩中脳波を記録して脳がきちんと休んでいるか調べなくてはなりません。次回は睡眠そのもののお話と、睡眠中の脳波について説明します。脳波を調べると、その人の見ている夢の中身まで分かったりして…。

An.:  もしかして脳波で初夢の内容まで判定できるんでしょうか? 楽しみです!


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No.201
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