3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集


◆天空列車~ラサ市
 

江澤アナウンサー(以下An.
三好院長(以下Dr.

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An.:  三好先生、前回はチベット鉄道に乗車して、空気の薄いところを延々と25時間かけてラサ市まで旅行する。そんなお話しでした。

Dr.:  列車の中で、昼間は目覚めていて意識があるから、脳は二酸化炭素濃度低下のために息することを忘れていても、努力して呼吸できるんだ、というお話しでした。

An.:  ところが列車の中でも、夜間の時間帯は寝て移動しなくっちゃあならないんですよね。そして、うっかり寝入ってしまうと、自然に呼吸が止まりオンディーヌの呪いにかかったハンスみたいになる。
先生、そうでしたよね。

Dr.:  一応、この天空列車つまりチベット鉄道の客車は、気密性が非常に高くて酸素も供給されているので、理論上は高山病やオンディーヌ状態にはならないはずなんですけど。
物事にはすべて、理論と実際とがあって、必ずしも一致しないことが多いんです。

An.:  それじゃあ、自分で体験すると、やっぱり苦しい(笑)。

Dr.:  そりゃあ、5,000メートル級の高地を、何時間も列車に揺られるんですよ。
で、忘れちゃならないのは、天空列車の終着駅は、やっぱり空気の薄いラサ市だってことです。

An.:  たしかチベット鉄道って、25時間かけて標高3,640メートルの高地へ、到着するんですものね。

Dr.:  夜の9時半に乗車して、夜の10時半にラサ駅に着くんです。
つまり夜間に、気圧の低い土地に到着するので、中枢性睡眠時無呼吸の恐怖から逃れようとしても、逃げられないんです(笑)。

An.:  江澤は、そんなとこに置いてきぼりにされるのはイヤです。
世界は真っ暗だし、空気は薄くなるし、呼吸がだんだん苦しくなって行って、窒息しそうになるのなんて。
恐怖の一言です。

Dr.:  と、ここまでは散々脅かしておいて(笑)、と。
実は大抵の旅行者は、飛行機での移動ではありませんので、一夜の天空列車体験で、ずいぶん高所に順応するんです。

An.:  ああ、体が薄い空気に慣れるんですか。

Dr.:  飛行機で一気にラサ市まで上昇したときに比べ、列車は一昼夜かけて気圧差に慣れながら移動するので、ラサ市では少しは楽なんです。
でも、お話ししたように、途中はもの凄くキツイんですけどね。

An.:  それじゃ、列車での移動ならばラサ市でも、そんなに高山病や中枢性無呼吸に怯えなくとも良いんでしょうか。

Dr.:  その人の年齢や体調によって、それは違うみたいで、やっぱり調子の悪い人はいます。

An.:  それって、どうすれば楽になるんですか? 治療法はあるんでしょうか。

Dr.:  そこからが、私たちの出番なんです。
チベットなどの高地における中枢性無呼吸は、血液中の二酸化炭素濃度の低下のために、脳の呼吸中枢が人体に呼吸を指示する信号を出さなくなることが原因です。
これはお話ししたように、低酸素による努力呼吸の結果過剰換気となり、血中の酸素は足りても二酸化炭素はいっそう不足するために、この状況は余計にひどくなります。
おまけにこうした無呼吸は、純酸素を吸わせてやっても、改善しません。

An.:  二酸化炭素は、全然増えませんからねぇ。

Dr.:  ここらへんが、一般に混乱を招いているポイントだと思うんですけど、酸素ボンベは、中枢性無呼吸には無効です。

An.:  ヘェー! 想定外のことが起きちゃうんですねぇ。

Dr.:  その危機的状況を改善し、体内に酸素とそしてこれが重要なんですが、二酸化炭素を同時に送り込むためには何を使えば良いのか。
江澤さん。1を聞いて10を知る江澤さんなら、答えはもうお判りでしょう。

An.:  三好先生、それって、もしかしたら……CPAPじゃないでしょうか。

Dr.:  座布団10枚です、江澤さん。
高地における中枢性無呼吸には、CPAPによる規則的呼吸管理が、すごく役に立つんです。

An.:  CPAPって、すごい……。

Dr.:  理論的には、高山病にCPAPが良さそうだということは、書いてあったんですが。
でも現実に自分たち自身の体で、チベットのような高地で、高山病や中枢性無呼吸を体験した上で、CPAP使用のいわば人体実験をやったのは……。

An.:  三好先生が、世界で初めて、ということなんですね。

Dr.:  私たちは現在も、チベット鉄道以外の高地体験と、中枢性無呼吸と、そしてそれらに対するCPAPの効果を続々とデータにしていまして。
体験者数を増やして、医学的理論の裏付けを、急いでいます。

An.:  先生が毎年、中国やチベットに調査に行っておられるのは、そういう目的があったから、なんですね。
すっごくステキな研究だと、江澤は思います。
先生、先生は今年ももちろん調査旅行を実施したんですよね。
今年は、どこが目的地だったんですか?

Dr.:  今年はですね。
中央アジアの、ウルムチやトルファンが対象でした。

An.:  トルファンというと、西遊記で有名な火焔山のあるところでしょうか。

Dr.:  三蔵法師や孫悟空の通った、天山北路や砂漠地帯の状況と、その地域の病気の特徴の調査でした。

An.:  それじゃぁ先生は金斗雲に乗って、調査に行かれた?

Dr.:  いいえ、私の乗ったのは駱駝(らくだ)でした(笑)。

An.:  でもたくさんのお経を持って帰られたんですね?

Dr.:  ええ、すっかり悟りを開きました。
悟ったところでいびきのお話しは終了。

◆風邪による急性中耳炎
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An.:
 三好先生、この頃急に寒くなって来て、江澤の周りはカゼひきさんだらけです。
先生のところも、ハナたれ小僧さんとか、多くなったんじゃあ、ありませんか?

Dr.:  昼間の太陽が比較的暖かそうなわりに、夕方になるとスッと冷え込みますからね。
うっかり、薄着のままで夕刻まではしゃいでいると、子どもさんたちはカゼをひきますよね。

An.:  先生、子どもさんのカゼの症状と言いますと、耳鼻科ではどんな?

Dr.:  ノドを腫らす、ハナたれ小僧さんになる、お耳が痛くなる、そんなことが起こります。

An.:  寒くなると、どうしてカゼをひくんでしょうか……? あまりに当たり前で(笑)、今まで一度も考えたことなかったんですけど。

Dr.:  カゼの原因となるウィルスは、増加して勢いをふるい易いのが、人間の体温より少し低い35度くらいなんですよ。ですから人間が健康で、体温36度をキープしていると、カゼをひきにくいんです。
ところが急に気温が下がって、人間の体温もやや低めになると……。

An.:  そうか、ウィルスが活躍し易い低めの温度になっちゃうんですね!

Dr.:  そうすると、ウィルスが人間の細胞内に入って中で活発化するんです。寒気がして熱の上がるのはその結果で、でもこれは人間の体をウィルスの住みにくい環境にしようとの、生体反応なんですよ。

An.:  そうか、熱が上がるとカゼのウィルスは住みにくいんですね!

Dr.:  だからカゼのときは熱を出して、その熱が下がるまでは、じっと寝ているのがおススメです。

An.:  卵酒か何か、ぐっと飲み干して、ですよね(笑)。

Dr.:  でも、ただのカゼならそれで良いんですけど、普通カゼには二次感染と言ってバイ菌の悪影響を伴うんです。
それがハナ垂れ小僧さんになったり、お耳の痛くなる急性中耳炎のもととなる、原因なんです。

An.:  それって、すごくイヤーですよね。どうして、二次感染が起きるんですか?

Dr.:  カゼのウィルスが人体の細胞内に入ると、ですね。それが例えば鼻の入り口の粘膜だったり、ノド粘膜だったりするわけなんですけれど。
そもそも、これらの部位の粘膜は繊毛細胞と称するんですけど、異物つまりバイ菌なんかを、細かい箒状の動きで、体外に押し出す作用があるんです。

An.:  つまり、病気になりにくくする働きがある。そういうこと、ですね。?

Dr.:  今日もサエてる江澤さん。その通りです! ところがですね、その繊毛細胞にウィルスがくっつくと、細胞の箒みたいな働きがうまく行かなくなるんです。

An.:  それじゃ、バイ菌が体の外に押し出されない!?

Dr.:  バイ菌が、ノドやハナの粘膜から外へ押し出されなくなると、そこへバイ菌退治の白血球がやって来て、バイ菌を殺します。白血球とバイ菌の戦ったあとは、つまりバイ菌の死骸みたいなもんなんですけど、それが膿になります。膿って、ウミのことですけど。

An.:  ああ、それがハナ垂れ小僧さんの青っパナになるんですね?

Dr.:  そうです。ハナでは、昔懐かしい二本棒を垂らした、一人前のハナ垂れ小僧さんの完成です。

An.:  昔、いましたよね! ハナから真っ青な2本のハナ水をぶら下げた子どもって。江澤の記憶の中に、鮮やかに蘇ります(笑)。

Dr.:  で、その青っパナを、止せば良いのに袖で擦り取ろうとするものだから……。

An.:  袖がハナ水で、すっかりテカテカに光っちゃって(笑)。

Dr.:  それが、寒くなるとカゼをひいたり、ハナ垂れ小僧さんが増えたりする、原因なんですよ。

An.:  なんだか、目の前に浮かぶよう!!

Dr.:  子どものお耳が痛くなる急性中耳炎も、それと似たような仕組みで発生するんです。

An.:  急性中耳炎って、なぜか土曜日の夕方とか、休みの前の晩にすごく多くなるような気がするんですけど。

Dr.:  これは、急性中耳炎にまつわる7不思議の一つなんですけどね。
年末年始に当直医を担当していると、耳の痛い子どもさんは、大晦日の夕方まではたくさん、見えられるんです。ところが、お正月になると……。

An.:  一人も来なくなる!?

Dr.:  1を聞いて10を知る江澤さん、さすが天才ぶりは相変わらずですね!
その通り、ホントに一人も急性中耳炎の子どもが、来なくなるんです。

An.:  本当ですかぁ(笑)?

Dr.:  急性中耳炎に限らず他の病気でも、この現象は国際的に知られていましてね。

An.:  病気って、休み前の日に多いんですか?

Dr.:  祝日には病気の悪化する人は少ないって、聞いたことがあります。

An.:  「病は気から」って言葉は、お馴染みですけれど。

Dr.:  急性中耳炎まで、「病は気から」じゃないんでしょうけどね。
でも、休みの前の晩に、突然急激に増えるって事実は、確かにあるんです。

An.:  なんだか、納得できるような不思議なような、江澤は複雑な気持ちです。
それで先生、青っパナと急性中耳炎とは、どういう関係があるんでしたっけ?

Dr.:  残念ながら、本日は時間切れのようです。次回のお楽しみにとっておきましょう。

An.:  三好先生、本日も楽しいお話しを、どうも有難うございました。

Dr.:  有難うございました。

◆急性中耳炎の対処法(鼓膜切開)
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An.:
 三好先生、前回はハナ垂れ小僧さんのお話しと、休み前の日には急性中耳炎がなぜか多くなるという、楽しいお話しを頂きました。本日はたしか、青っパナと急性中耳炎の関係について、教えて頂けるんでしたよね?

Dr.:  ハナ垂れ小僧さんに急性中耳炎が多い、というそんな当たり前のお話しなんですけれどもね。
江澤さん、江澤さんは、鼻と耳が裏側で繋がっているってお話し、ご存じですよね?

An.:  えっ、私、そんなウラ話、ぜんぜん知りません。

Dr.:  ウラ話じゃなくって、ですね。
あのぉ、ボクら耳鼻科医って、なぜ耳・鼻・のどを一緒に扱っているか、ご承知でしたよね?

An.:  ええっとたしか、耳鼻科は脳に通じる12対の脳神経の関わる知覚を、ほとんどすべて扱っているから、でしたね。

Dr.:  さすがは江澤さん、私のお話しした2年くらい前のお話しも、全部覚えているんですね。江澤さんは1を聞いて10を知る、だけじゃなかったんですね!

An.:  ええ、実は江澤は齢をとらないものですから……。

Dr.:  じゃ2年間くらいは?

An.:  江澤の周りは時間が止まっているんです。

Dr.:  じゃあ今回はそれに加えて、新しい知識をもう一つ。
江澤さんは、鼻とのどの間に通路のあることは、知ってますよね。

An.:  鼻含嗽(はなうがい)なんて、良く聞きますから。多分、通じているんだろうと……。

Dr.:  その鼻含嗽をする通路、つまり鼻の奧で耳の裏側なんですけど。そこから耳の内側には、耳管(じかん)という名前の細い管が存在して、それは耳の鼓膜の中に開くんです。

An.:  耳管って先生、耳の管って字を書くんですね。

Dr.:  文字通り、のどと耳の中を貫いている管ですから。

An.:  で先生、その管は何をする役割を担っているんですか?

Dr.:  耳の鼓膜の内側を、中耳腔(ちゅうじくう)って称するんですけどね。
鼓膜というのは、うすーい膜でできていて、音を聞くたびに細かく振動(しんどう)するんです。

An.:  たしかそれで音をキャッチするんだって、聞いたことがあります。

Dr.:  その鼓膜の振動は、鼓膜の内側と外側の気圧、つまり空気の密度がおんなじじゃないと、うまく振動してくれないんです。

An.:  音というのは、音波でしたよね。音波のお話しなら、エフエム泉にお任せです!

Dr.:  そのエフエム泉のクリアなサウンドの、音波の揺れのそのままに、鼓膜は振動する。そういうことなんです。
でもそのために、鼓膜の内外(うちそと)の空気の密度が同じである必要があります。

An.:  エフエムのサウンドでしたら、微妙な鼓膜の振動なんでしょうね?

Dr.:  その鼓膜の動きのために、耳管が鼓膜の内側の気圧コントロールをしているんです。

An.:  耳管って、スゴイんですね。

Dr.:  耳管がそういう働きをするためには、鼻やのどの気圧に応じて、ときどき開くことが必要です。

An.:  ってことは、耳管はいつも開いているんじゃなくって、気圧に応じて開閉する、と。

Dr.:  そういう重要な耳管なんですけど、鼻やのどに炎症の起きた場合、炎症が耳管づたいに鼓膜の内側に波及することが、あるんです。

An.:  じゃあ、鼻やのどのバイ菌も、耳管を通じて鼓膜の内側つまり中耳腔に入っちゃう?

Dr.:  青っパナのバイ菌が中耳腔に入ると、鼓膜の内側に膿すなわちウミが溜まるんです。

An.:  それって……、痛そう。

Dr.:  鼓膜の内側にウミが溜まって、鼓膜を内側から外に向かって強く圧迫すると……。
江澤さん、鼓膜ってすっごく薄い膜なんですよ。
鼓膜が強く圧迫されたら腫れ上がっちゃって、やっぱり相当痛いですよね。

An.:  それってきっと、泣きたくなるくらい痛いんでしょうね。

Dr.:  それがつまり、急性中耳炎の耳の痛みなんです。こうなっちゃうと、子どもは転げ回るようにして痛がりますし、本当にかわいそうですよ。

An.:  それじゃ子どもさんは大変!

Dr.:  耳鼻科医ではそんなとき、メスを使って腫れ上がった鼓膜に、ほんの小さな穴を開けてやり、抗生物質を使用します。

An.:  メスって、もしかすると耳を切っちゃうんですか!?

Dr.:  まさか「耳なし芳一」じゃあ、ありませんから(笑)。腫れている鼓膜に、ホントに小さな穴を開けてやるんです。
内側から膿の圧力で、強く外側に圧迫されていた鼓膜は、メスで小さな穴を開けると、江澤さん。どうなるでしょうか?

An.:  プシューッ、って感じで中の圧力が逃れるので、鼓膜の腫れは収まるでしょうね。耳の痛みは、鼓膜に強い圧力がかかっていたためですから……、痛みもなくなっちゃいますよね?

Dr.:  耳鼻科医ではそれを、「鼓膜切開術」と呼んでいて、急性中耳炎の痛みをすぐさま解決してやる、速効的な治療なんです。

An.:  なんだかそれでも、鼓膜に穴と聞くと怖そうで、ビビッちゃいそうな気もします。

Dr.:  ただ、急性中耳炎が土曜日の夕刻とか、対応する医療機関があり得ない時刻に発生する状況では、のんびり構えている余裕はなさそうです。

An.:  寒い季節を目前に、カゼ気味の子どもさんは急性中耳炎に注意ですね。先生、有難うございました。

◆その他の中耳炎
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An.:
 三好先生、前回は寒い季節にハナ垂れ小僧さんの多いこと、青っパナを垂らしていると急性中耳炎になり易いこと、休みの前の晩に多い急性中耳炎では、内服だけじゃなくって鼓膜切開術という鼓膜内のウミを抜いてやる治療をすること、などについてお伺いしました。先生、急性中耳炎って軽く考えがちなんですけれども、土曜日の夕方とか状況によっては、ちょっと扱いに困ることもありそうですね?

Dr.:  それは、決して脅かし(おどかし)の意味ではなくって、飽くまで警告なんですけれども、ね。急性中耳炎から、頭蓋内の脳すなわち中枢神経にバイ菌が入ってしまい、髄膜炎や脳膿瘍(のうのうよう)と言って、頭の中のおできになることも、ゼロじゃありませんから。

An.:  頭の中に、おできができるんですか!?

Dr.:  私の経験したのは、当時4歳の男の子だつたんですが、青っパナから40度近い高熱を出すようになり、耳を痛がりました。鼓膜は切開する前に自然に破れて、耳だれが出たので強めの抗生物質を内服させたんですが、頭痛があってMRIで脳膿瘍が見つかりました。幸いただちに総合病院小児科に入院して、回復しましたけれど、急性中耳炎を軽く考えちゃあいけないと、つくづく反省させられました。

An.:  油断しちゃいけないんですねぇ。

Dr.:  そのためにはやはり、青っパナの子どもさんの治療をしっかりやっておくこと、は重要ですよね。

An.:  青っパナの子どもさんの治療って、具体的にはどんなことをするんでしょうか?

Dr.:  青っパナの垂れている背景には、鼻やその脇の空間である副鼻腔にすっかり感染した鼻みずの溜まっていることがあります。
それだけじゃあなくって、その感染した鼻みずが後に回って、のどから気管そして気管支にまで絡んでいることも、少なくありません。
そうするとハナ垂れさんたちは、しつこい咳や痰に悩まされ、ことに夜になって布団に入ってから、ひどい咳の発作に苦しみます。夕食で食べたものを、すべて戻してしまう子どもさんもいます。

An.:  それはひどそう……。そういう子どもさんって、治療は受けていないんでしょうか?

Dr.:  まさか鼻みずが原因とは思いませんから、親御さんが小児科医へ連れて行くんですけど、親御さんの説明が不十分で咳・痰の話しかしないと……。

An.:  そうか! 小児科医でも、ハナ垂れが原因とは思いつかないかも。

Dr.:  そうすると、てっきり胸や肺の病気と勘違いされて、そちらのお薬だけ飲んでいて。

An.:  つまり治らない?

Dr.:  現実にはそういうことも、ゼロではありません。

An.:  じゃあ、親御さんがハナ垂れさんのことを良く観察しておいて、ちゃんと耳鼻科医でハナ掃除をしてもらう必要がありますね。

Dr.:  小児科医の先生だっていつもいつも、「黙って座ればピタリと当たる」場合だけじゃないかも知れません。
親御さんの観察は、いわば24時間・365日間の所見ですから、それなりに大切にして頂きたいものです。

An.:  耳鼻科医では、ハナ垂れさんの扱いは手慣れたもの、みたいな感じでしょうか。

Dr.:  タレ流しはすべて良くありませんから。
耳鼻科医ではハナタレさん専用の、ハナ吸いノズルを使用して、気管や気管支の奧まで入り込んでしまった鼻みずを、すっかり外へ引っ張り出してやります。

An.:  それは効きそう!

Dr.:  それに加えて、適切な抗生物質の使用は欠かせません。
青っパナがだらだら垂れているってことは、カゼの症状だけじゃなくって二次感染のいつまでも継続している状況ですから、バイ菌をきちんと退治してやることは重要です。

An.:  先生、抗生物質については、過敏になっている親御さんのお話しも聞きますけれど。

Dr.:  ウィルス感染の段階では、抗生物質は無効です。けれども、耳鼻科医を訪れるような二次感染そのものの子どもさんには、抗生物質はとても役立ちます。
病気というものは時間の経過とともに、症状や本質が変化するものですから、臨機応変に対応することも軽んじてはなりません。

An.:  そういうわけだったんですね、三好先生。
そう言えばスギ花粉症だって、シーズン前の治療とシーズンに入ってからの治療は、方法が異なるんでしたよね。
カゼや感染症だって、考え方はそれと同じつまり「基本に忠実に」。そういうことでしょうか!

Dr.:  さすが「1を聞いて10を知る」江澤さん。私の言いたいことを、すっかり理解して頂いたみたいです。

An.:  ところで三好先生。先生から頂いた医学コミックでは、中耳炎という病気には急性中耳炎だけでなく、さまざまの中耳炎があるんだそうですね。

Dr.:  大雑把に言って中耳炎には、急性中耳炎・慢性中耳炎・滲出性中耳炎の3種類があります。けれども、亜型とでも言うべきでしょうか、状況に応じてそれ以外のタイプの中耳炎だって、種々発生します。

An.:  面白そうですね。例えばどんなタイプの中耳炎が……?

Dr.:  カゼ気味のときに飛行機に乗ると、上空で耳がとても痛くなる航空性中耳炎。それと逆に、カゼっぽい体調でダイビングをすると、海の底で耳の痛くなる……、ええっとこの中耳炎には名前が付いていないんですけれど、潜水性中耳炎とでも呼びましょうか?

An.:  江澤は、お小言を言われると耳がとっても痛むんですけど。それは、どんな中耳炎なんでしょうか?

Dr.:  それは大部分が、リスナーからの叱咤激励でしょうから、江澤さんは期待されているんでしょうね。

An.:  江澤はこれからも、リスナーの皆さんにご満足頂ける番組をお届けしますので。叱咤激励は、ムダにしません!
本日は、誠に有難うございました。

◆子供の鼓膜切開のコツ
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An.:
 三好先生、前回は冬が近付き、寒くなって来ると、ハナ垂れさんが多くなって、急性中耳炎も増加して来る、とのお話しを頂きました。それと、急性中耳炎はなぜか休みの前の土曜日の夕方に多く、適切な対応が必要というお話しも、お聞きしました。

Dr.:  そうですね。印象としては、北風小僧の増える季節になると、ハナ垂れ小僧さんも増えて来るような、そんな気がします。

An.:  世間のカゼが冷たくなると、カゼひきさんも増えるんでしょうか(笑)?

Dr.:  お話ししましたように、休みの日の前の晩の急性中耳炎は、治療の機会を逃すと医療機関の対応が難しくなるものですから、鼓膜切開術などの臨機応変の処置を行ないます。
でも、それほどの非常時でさえなければ、急性中耳炎に対しても少し余裕があります。

An.:  先生、余裕と言いますと?

Dr.:  子どもさんのお耳が痛み始めるようでしたら、市販の鎮痛剤を2倍量服ませて、温かめの布団にゆっくり休ませてやってください。
子どもは、周りが暗くなって耳の痛いこと以外に何も考えることが無くなると、余計に耳を痛がることも、確かにあります。

An.:  それで実際以上に、端(はた)からはひどく見えるのかも……。

Dr.:  熱もひどくなく泣き疲れて、そのまま子どもさんが寝入ってしまうようでしたら、翌朝の耳鼻科医受診でも、大抵大丈夫です。

An.:  寝入るようならば、気を揉まずに子どもさんの傍らで、看病して上げれば良いんですね。先生、急を要する急性中耳炎と、余裕のある急性中耳炎の目安は、どのあたりでしょうか?

Dr.:  子どもさんの病気は、急に変化することも少なくないので、断言はしにくいのですが。第一に、土曜日など休みの前の晩の急性中耳炎。これは医療機関の体制を考えると、急を要します。
第二に、耳の痛がりかたがひどく、火のついたように泣きじゃくり、熱がどんどん上がって来る場合。頭が痛くなる場合もですけれど、炎症が耳の中だけでなく、頭の中とかへ波及することもゼロじゃありませんから。
この場合も、急を要します。

An.:  そういったサインが見当たらなかったら……。

Dr.:  子どもさんは、急変の可能性もありますから、断言はできませんが、先程お話しした対応でも余裕がもてそうです。
それと、急性中耳炎の痛みの原因である鼓膜のひどい腫れなんですが、鼓膜の中のウミの圧力に負けて、鼓膜が自然にハゼちゃうこともあります。

An.:  ハゼるって?

Dr.:  自壊(じかい)、つまり自然に鼓膜がやぶけっちゃうことなんですけど。これは鼓膜切開術をうけたのと、おんなじことですから。少し血の混じった耳垂れがでますけども、痛みは無くなります。

An.:  自動的に手術を受けてしまう、みたいな?

Dr.:  結果的には、そうなります。
そうしたら、翌日の耳鼻科医受診で、抗生物質をもらい、じっくりと炎症の収まるのを待ちます。

An.:  先生から頂いた家庭医学書に書いてあったんですけれど、先生は耳の痛い子どもさんに、特別な説明をするんですね?

Dr.:  急性中耳炎で耳の痛い子どもさんは、まぁたいてい医者や看護師の白衣が恐いんです。商売柄、白の衣服は汚れていない、つまり感染されていないという意味なんですけど。でも熱にうなされている子どもさんには、清潔な白はむしろ強烈な色に見えますから、すでにそれに怯(おび)えます。

An.:  江澤も実は、白衣高血圧の傾向がありまして……、病院で看護師が血圧を測ると、自宅で測るときより高いんです。キンチョーしてるんですね!!

Dr.:  当院では白ではなく、明るいグリーンの白衣に、スヌーピーのエプロンを羽織った看護師さんが、子どもを出迎えます。
診察室の子どもの目の高さには、キャンディが山積みになっていて、子どもはまずキャンディに目を奪われます。

An.:  江澤も、キャンディなら血圧は上がりません。

Dr.:  子どもが診察室へ入ると同時に、子どもの目の前にペロペロ・キャンディが差し出されます。

An.:  まぁ、羨(うらや)ましい(笑)。

Dr.:  そして、その子どもの耳が真っ赤になって腫れていたら、今度はキャンディの一袋をそのまま全部、子どもに渡します。

An.:  キャンディ、一袋! まるのままっ!?

Dr.:  あっけにとられて、耳の痛みもすっかり忘れた子どもに、私はこう、言うんです。
エザワちゃん、エザワちゃん、エザワちゃんのお耳の中に、バイ菌マンが暴れているよ! あっ、ドキンちゃんも中でVサインをしている!! 大変だ、ほったらかしにしておくと、お耳がクサっちゃうよ。だから、お耳にアンパンチをしてあげるからね。頑張ってちょうだいね!
子どもさんは、キャンディをまるごと一袋抱き抱えたままで、何がおこったのか良く判らないままに、思わず首肯(うなづ)いてしまいます。

An.:  ホントですか!?
信じられないーっ。

Dr.:  そのまま、何も言わずにスンナリと子どもさんに鼓膜麻酔をして……そして鼓膜切開をしてしまいます。
子どもさんも、途中で何かがおかしいような気もするらしいんですけど。でも手には、キャンディを握り締めてしまっているから、後には引けない……(笑)。

An.:  泣きべそをかきながら、キャンディだけはしっかり握り締めているんでしょうね?

Dr.:  キャンディで気を紛らわして、アンパンチまで話をもって行くと、子どもさんの目玉が真ん丸になっちゃって。

An.:  目に浮かぶようっ!

Dr.:  付き添っているお母さんの目玉をヒョイと見たら……。お母さんの目玉の方が、もっと丸くなっていました。

An.:  三好先生(笑)、おあとが宜しいようで。

 

◆その他の中耳炎
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An.:
 三好先生、前回は寒い季節に多い、子どもさんの急性中耳炎について、楽しいお話しを伺いました。
その前に小耳に挟んだんですけど、「航空性中耳炎」とか、「潜水性中耳炎」とかいう名前の中耳炎も、あるんだそうですね?

Dr.:  「航空性中耳炎」は正式名ですけれど、「潜水性中耳炎」というのは、ホントはそんな名前はなくって(笑)、いわば仮の病名なんです。

An.:  でも、耳の痛くなることに変わりはないんでしょうか?

Dr.:  江澤さん。カゼのときの急性中耳炎で、耳がすっごく痛くなるのは、何のためだったでしょうか?

An.:  ええっと、たしか、耳の鼓膜の内側にバイ菌が入って、そこで化膿してウミを持つから……。ああ、そうでした。とっても薄い膜である鼓膜が、内側から外側に強い圧力で圧迫されるんでしたね。ですから、鼓膜が緊張して泣くくらい痛くなっちゃうんでしたね。

Dr.:  そうです。耳の痛くなるのは、鼓膜が強い圧力で圧迫される、その結果緊張状態になるために、痛くなるんです。

An.:  と言うことは、急性中耳炎の場合だけでなく、他の状況でも鼓膜が緊張すれば、耳は痛くなる?

Dr.:  江澤さん。そこで思い出して頂きたいんですけど……。飛行機に乗ると、耳のヘンになることがありますよね。

An.:  そうそう、飛行機が急上昇したときとか、逆に急に降り始めたときなんか。耳が詰まったような、抜けないような、なんだか耳がこもっちゃって……。うまく抜けないときなんか、ひどくって。痛いような思いをした、覚えがあります。

Dr.:  もう一つ、江澤さんに思い出してもらいたいんですけど。飛行機に乗ると、美人のスチュワーデスさんが、キャンディを配ってくれるじゃないですか。

An.:  江澤は、あのキャンディが楽しみなんです。チョコ味にしようか、ミルク味にしようか、どの味のキャンディにしようかと(笑)、いつも迷っちゃいます。

Dr.:  あのキャンディを舐めていると、不思議に耳が痛くならないでしょう?

An.:  そう言えば……。先生、あれはキャンディに夢中になっているから、なんの痛みも感じないんでしょうか(笑)。
なんだか、急性中耳炎のときの子どもさんみたいに、江澤もゴマ化されているんだったりして。

Dr.:  さすが江澤さん、名回答、と言いたいところなんですけど。今回は、少し違います。

An.:  えっ、どうして、どうしてなんですか?

Dr.:  飛行機が急上昇するときって、鼓膜の外の気圧は、高くなるでしょうか? それとも、低くなるでしょうか?

An.:  ええっと、三好先生がチベットの標高5,000メートルの高さまで昇ると、酸欠状態になるんですから……(笑)。上昇すると気圧は下がると思います。

Dr.:  江澤さんの発想って、すごくジャンプするんですね、正解です(笑)。
それじゃ、鼓膜の外の気圧が下がると、鼓膜はどうなるでしょうか?

An.:  鼓膜は薄い膜でしたから、外の気圧が下がると、内側の気圧が結果的に高くなって……。判りました、先生。鼓膜は外側に圧迫されます。

Dr.:  鼓膜が外側に圧迫されるって、それはどこかで聞いたような状況ですよね?

An.:  先生、急性中耳炎とおんなじ、みたいですね。そうすると、急性中耳炎みたいに鼓膜が緊張して、すっごく耳が痛くなるのかしら。

Dr.:  この場合、急性中耳炎と違って、気圧を調節する耳管。ホラ、以前お話しした耳とノド間をつないでいる管がですね、鼓膜の内側に外の空気を送り込んでくれます。

An.:  そしたら、鼓膜の内側に外と同じ気圧の空気が入り込みますから、鼓膜の緊張は無くなりますね。そしたら、耳は痛くない。

Dr.:  カゼから来る急性中耳炎では、耳管の中はバイ菌で一杯ですから、耳管は気圧調節はできません。
カゼでなければ、気圧が変わってもそんなに痛くはならないんです。そこで、キャンディの出番です。
江澤さん、キャンディを舐めていると、自然に唾(つば)を飲込みますよね?

An.:  飲み込みます。

Dr.:  飲み込む動作、つまり嚥下をすると、耳管が自動的に開くんです。

An.:  耳管が開けば、鼓膜の緊張はとれちゃいますね!
だから、気圧が急変化しても、耳は痛くならないんですね!!

Dr.:  カゼさえひいていなければ、飛行機の上昇のときも、下降の際にも、鼓膜は緊張しないので、耳は痛くなりません。
でも、うっかりカゼの最中に飛行機に乗ったりすると……。

An.:  そうか! 気圧の調節がうまく行かなくて、耳がすごく痛くなるんですね。

Dr.:  それを「航空性中耳炎」と呼んでいるんです。

An.:  それじゃ、カゼのときは飛行機に乗らない方が良いのかも……。

Dr.:  私たちはそれで済むんですけど……。お仕事で飛行機に乗る職業の人は、そうは行きません。

An.:  パイロットとか、それこそスチュワーデスさんとか……。

Dr.:  私も、そのためにこの航空性中耳炎になってしまったスチュワーデスさんの、鼓膜切開をしたことが、何回かあります。

An.:  それは、かわいそう。
でも三好先生は、そんなときにもスチュワーデスさんに、キャンディを差し出すんでしょうか?

Dr.:  ええ、飛行機に乗ったときには、逆にお世話になっていますから(笑)。

An.:  愉快なお話し、有難うございました。


◆中耳炎の痛みを軽くする方法
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An.:
 三好先生、前回までは、ハナ垂れ小僧さんに多い急性中耳炎と、スチュワーデスさんに多い航空性中耳炎のお話しを、楽しく伺いました。
お話しでは、この2種類の中耳炎には共通点があって、どちらもキャンディを舐めると痛みが少なくなるんだそうですね?

Dr.:  それは、半分は冗談なんですけども、少しは真実の部分もあります。

An.:  具体的には、どのような?

Dr.:  中耳炎の痛みは、すごく薄くできている鼓膜が、強く圧迫されて緊張状態になると生じるんです。
この圧迫は、ノドと耳の内側をつないでいる耳管という管が開いて、鼓膜内外の気圧調節をしてくれると、無くなります。つまり耳管がちゃんと働いてくれると、耳の痛みは起きないんです。

An.:  耳管の機能が大切なんですね?

Dr.:  急性中耳炎では、バイ菌が耳管の中をウヨウヨしているために、耳管がうまく働きません。加えて、鼓膜の内側にバイ菌の死骸である膿つまりウミが溜まっちゃうので、鼓膜の緊張が起こり耳が痛むんです。

An.:  耳管が、役に立たなくなっているわけなんですね?

Dr.:  だから、その変わりに鼓膜に小さな穴を開けて、圧を逃がしてやり、鼓膜の緊張状態を解消するんです。

An.:  それが鼓膜切開術という、手軽な手術なんでしたよね?

Dr.:  それに対して、航空性中耳炎では飛行機の上昇と下降に伴って、鼓膜内外の気圧の急激な変動が起こります。

An.:  急上昇するときは、鼓膜の外の気圧が低下するので、鼓膜は外に向かって強く圧迫されるんですね。
そして急降下するときにはその逆で、鼓膜外の気圧が上昇するので、鼓膜は内側に強く圧迫されますよね。

Dr.:  飛行機に乗っている人の体調が十分ならば、自然に耳管が開いて気圧調節をしてくれるので、急性中耳炎のときのような耳の痛みは起こりません。
でもその人がカゼっぽかったりすると、ノドやそれにつながる耳管に炎症が起こり、腫れてしまいます。
そうすると、耳管が自然に開くことは難しくなりますし、いわゆる「耳抜き」をして耳管を開けてやることも、思うように行かなくなります。

An.:  先生、「耳抜き」ってどうするんでしたっけ?

Dr.:  鼻を摘んで(つまんで)、思いっきり息むんですよ。

An.:  (実演して)あらっ、空気がノドから耳の中へ入っていくわ!

Dr.:  それを「耳抜き」って言うんですけど、耳管を強制的に開かせて鼓膜内外の気圧調節をする、手軽な方法なんです。
飛行機の中でも、耳がヘンになったら、この耳抜きで気圧調節ができるんですよ。
そして、こうした耳管を通じての気圧調節法にはいくつか種類があって。

An.:  どんな方法なんですか?

Dr.:  第一に、今試みた「耳抜き」ですね。それから、あくびをしても耳管が開きます。

An.:  (実演して)ふあーぁ(笑)。
でも先生、これはよほどうまく力を抜かないと、耳抜きみたいな快感には及ばない、かしら?

Dr.:  江澤さん。リラックス、リラックス。
まず、全身の力を抜いてっと。それから、これは仕事だと言う緊張感をすべて、忘れ去って……(笑)。良いですか?
ホラ、ふあーあーぁっと。

An.:  (つられて)ふあーあーぁっと。
あら先生、耳が開きました!

Dr.:  それが第二の、耳管を開く方法です。
それから第三に、嚥下。

An.:  エンゲ?
それ何ですか!?

Dr.:  食べ物や水をゴクッと飲み込んでやることで、唾(つば)を飲むだけでも耳管は開きます。
ですから、飛行機の中で耳づまりが起こったら、唾を飲む瘍にしてやれば良いんです。

An.:  どうやって、飛行機の中で唾を飲むんですか?

Dr.:  江澤さん、キャンディ、キャンディ。

An.:  そう言えば! 先生そうですよね。キャンディを舐めていれば、どうしても唾を飲み込むことになりますよね。

Dr.:  だから、スチュワーデスさんは、飛行機の中で、いつもニコニコ、キャンディを配って歩いているんです。

An.:  先生、江澤は今、世界の七不思議の一つが判ってしまいました。
飛行機の気圧の変化に対応できるよう、耳の痛くならないよう、スチュワーデスさんは業務遂行にいそしんでいたんですね。

Dr.:  キャンディの種類によっても、唾の出方が違うみたいで。

An.:  ヘェー。そうなんですか。

Dr.:  当院で子どもたちに配っている、棒つきのいわゆる「ペロペロ・キャンディ」は、普通のアメ玉より余分によだれが出るような気がします。

An.:  ああ、そう言えば、そんな気がします。

Dr.:  だから当院では、航空性中耳炎になったスチュワーデスさんには、棒つき・ペロペロ・キャンディをお勧めすることにしているんですけど。

An.:  皆さん、喜んでくれるのかしら(笑)?

Dr.:  耳の痛みを一瞬でも忘れて頂ければ、私としてもうれしいです。
冗談はともかく、飛行機の気圧変化に対応するには、なるべく唾の長く出てくれる食べ物が良いので……、ガムはどうかなんて考えてます。

An.:  三好先生、本日も面白いお話しを、誠に有難うございました。


◆潜水性中耳炎
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An.:
 三好先生、前回までは、子どもさんの急性中耳炎と、大人の人でも耳の痛くなる「航空性中耳炎」について、興味深いお話しを伺って来ました。
そして、子どもの急性中耳炎に対しては、治療の前にキャンディを舐めさせて、痛みを誤魔化してやる、との秘法を伝授して頂きました。
それに対して「航空性中耳炎」では、キャンディはむしろ中耳炎の予防に使用するのが、コツなんだと。それはキャンディを舐めていると、鼓膜内外の気圧を調節する耳管と称する管がうまく開いて、耳の痛みがひどくならずに済むんだと。そういうお話しでした。

Dr.:  航空性中耳炎は、プロであるスチュワーデスさんたちにも起きることがあって、そういうときに当院では子どもさん同様、キャンディを手渡すとウケが良い、というお話しをしました。

An.:  そこでお聞きしたいんですけど、先生。
「航空性中耳炎」に対して、「潜水性中耳炎」という病気もあるとか、伺いました。

Dr.:  「航空性中耳炎」というのは正式の病名でして。これは、医学の一分野として確立された「航空医学」という領域の、中耳炎の部分ですので、きちんとした病気の名前なんです。それに対して「潜水性中耳炎」というのは、私が勝手に付けた名前ですから(笑)。

An.:  でも先生、それはどんな病気なんでしょうか?

Dr.:  これはダイビングをしている人が、水中深く潜ったり、逆に深いところから急速に浮かび上がって来たりするときに、突然耳が痛くなるものです。

An.:  それは、どうして耳が痛くなるんでしょうか?

Dr.:  江澤さん、子どもの急性中耳炎で耳が痛くなるのは、なぜでしたっけ?

An.:  カゼのバイ菌がのどから耳管を通じて中耳腔 、つまり鼓膜の内側に入ってしまって……。たしかそこで膿(ウミ)を持つんでしたよね?

Dr.:  その通りです、江澤さん。

An.:  そしてそのウミがあんまり多くなって、中耳腔からあふれそうになると、鼓膜が強く外側に向かって圧迫されるので……。

Dr.:  鼓膜が強く緊張するんでしたよね?

An.:  鼓膜が強く緊張すると、子どもさんなら泣いちゃうくらいの、すごい耳の痛みが起こるんでしたよね? 先生。

Dr.:  それと同じ原理で、飛行機に乗って急上昇すると、鼓膜の外の気圧が低下しますから鼓膜が内側に強く緊張します。それで痛むんでしたね。

An.:  飛行機が急下降するときも、鼓膜外の気圧の上昇のため鼓膜が強く内側に緊張します。このため、やはり耳がとっても痛みます。

Dr.:  ダイビングのときの鼓膜内外の気圧変化は、どうなるんでしょうね?

An.:  ええっと。ダイビングする人が、少しずつウミの中へ潜って行くと、周囲の水圧がだんだんに高くなってくるはずだから……。
先生、水圧が高くなると、耳のアナの中の空気圧も、一緒に高くなるものなんでしょうか?

Dr.:  そうです、その通りです、江澤さん。
海の中に潜って行くダイバーの、鼓膜の外の気圧は上昇します。

An.:  それじゃ、鼓膜はその圧のために内側に強く緊張することに、なりますね。
判りました三好先生、ダイバーが深く潜水して行くときに、気圧変化から耳の痛くなることがある。ダイバーがカゼっぽかったりして、耳管が腫れていると気圧調節が十分になされないので、それで「航空性中耳炎」のまったく逆さまのパターンの炎症が起きるんですね。
それを三好先生が「潜水性中耳炎」と、ネーミングしたってわけですね!!

Dr.:  さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。私の考え方のパターンまで、すっかり理解してくれましたね?
それでは逆に、深く潜っていたダイバーが急に浮上しようとしたら、耳はどうなるでしょう?

An.:  これは潜ってくるときと正反対で、海水の圧が下がってきますから、鼓膜は外側へ強く緊張することになります。痛そうです。

Dr.:  飛行機の気圧変動による航空性中耳炎では、キャンディを舐めて気圧調節を行い、痛みがなくなるよう工夫しました。
さてそれでは、潜水中には深度の変化による気圧の変動、そしてそれによる耳の痛みを、どうやって予防したら良いでしょうか?
江澤さんだったら、海に潜っているときでも、キャンディを手放さないかもしれませんけど。

An.:  先生、いかに万能と言われた江澤でも、酸素のマスクを付けたままキャンディをしゃぶるのは、ちょっと……。
たしかに、塩味の少し混じった甘いキャンディも、捨てがたいような気はしますが。

Dr.:  それを解決するのが、江澤さんご存じの「耳抜き」なんです。

An.:  「耳抜き」。そうでした! 先生「耳抜き」って、具体的にはどうやるんでしたっけ?

Dr.:  鼻を摘んで(つまんで)、思いっきり息むんですよ。

An.:  (実演して)あらっ、空気がノドから耳の中へ入っていくわ! ああ、思い出しました。

Dr.:  それを「耳抜き」って言うんですけど、耳管を強制的に開かせて鼓膜内外の気圧調節をする、手軽な方法なんです。
で、潜水中も吸気のためのマスクを着けた状態で、鼻を摘んで思いっきり息むんですけどね。

An.:  これを潜水中にこまめにやるのって、慣れないと大変みたいな感じですよね。

Dr.:  潜水のプロになるとマスクを着けたまま、あくびをする要領でうまく耳管を開くことができるんです。
鼻を摘まなくても、鼓膜内外の換気が上手にできるんですけど。ものごとには順番がありますから、あせらずに耳抜きから始めましょう。
でもカゼをひいてダイビングすると、プロでもほんものの急性中耳炎になります。

Dr.:  そのときは三好先生に、ぜひご相談くださいね。本日も、話題を有難うございました。



関連リンク: 索引 ラジオ3443通信
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  索引 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
  索引 急性中耳炎
  索引 鼓膜切開

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No.203
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