3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

ラジオ 3443通信 花粉症特集1

◆夏の暑さと花粉飛散量

An,: 三好先生、そろそろ来年のスギ花粉症が、話題になるシーズンとなりました。 昨年のスギ花粉症、すごくつらいものがありましたけれども、今年はどうなんでしょうか?

Dr,: 幸いこの春のスギ花粉症は、前年よりさほどひどくなく、せいぜい例年並みだろうと言われています。

An,: 先生、そもそもスギ花粉の舞い上がる量、つまり飛散量って、どんな風に決まるんでしょうか?

Dr,: 自然界の現象の一つですから、波がありますし、すべて人間の予想通りとは行かないのが当然なんですけどね。 それでも、シーズンの前の年の7月の気象にもっとも影響を受けると、されています。

An,: 7月の気象、と言いますと?

Dr,: スギの花粉形成にいちばん影響するのは、前年の7月の日射量なんです。つまり、7月のお天気が良ければ翌春のスギ花粉の量は多く、天候が悪ければ花粉飛散量は少ないわけです。

An,: 夏が暑ければスギは多くなり、寒い夏の後はスギ花粉症シーズンは楽に過ぎる、ということですね。

Dr,: これには見事な具体例がありましてね、江澤さん。 日本には昔、食管制度という名前の制度がありまして、例えばタイ米とか中国のお米、それらを外米と称するんですけどね、外国の米を輸入することはできなかったんですよ。 それがある年、日本国内のお米が一斉に不足しましてですね。日本人がお米を食べ損ねかけたことが、あったんです。

An,: まさに日本人の危機、ですよね。今でも、朝ご飯はパンではダメで、しっかりご飯をお腹に詰め込まないと絶対気の済まない日本人って、多いですからね(笑)。

Dr,: それが、1993年の夏にひどい冷夏、つまり宮沢賢治の表現を借りれば「寒さの夏」がやって来まして。

An,: 昔の東北だったら、飢饉になっちゃったような「寒さの夏」ですよね!

Dr,: 日本全体で、国産米が不足してしまったわけです。

An,: そのとき日本は、どうやって飢饉をしのいだんですか?

Dr,: ときの細川内閣は、食管制度を改正しまして、いわゆる外米を輸入できるようにしたんです。

An,: 日本人は外米を食べて、国産米不足を乗り切った?

Dr,: 味の好みについては、いろいろと感想を持つ人も多かったようですけれどもね(笑)。でもパンを主食にしなくても、その年を乗り切ることはできたんです。

An,: ああそうそう、先生その「寒い夏」の翌年のスギ花粉症は、どうなったんでしょうか?

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Dr,: スギ花粉症は、1979年から激増して日本人の国民病になっちゃったんですけどね。それ以来、最低の発症率を示しました。

An,: じゃ、すっごく少なかったんでしょうか?

Dr,: ところがその翌年、1994年の夏は歴史的な猛暑が続きまして、ですね。私はその夏、幼稚園児だった娘を連れてグァムへ海水浴に行ったんですけれど……。 江澤さん、フツー仙台とグァムならばグァムの方が暑い、と思うじゃないですか。

An,: ええ、江澤もそう思います。

Dr,: ところがその夏は、帰国したらば仙台の方が、よっぽど暑かったんです(笑)。

An,: 信じられない……。

Dr,: 歴史的な猛暑の翌年、1995年の春のスギ花粉症はどうなったのか。 江澤さん、お手元の「医学コミック」シリーズ第1巻の「花子さんの場合」を、読んでみてください。

An,: 読みます。
〝1995年春、人類は今だかつてない空前絶後の侵略を受けていた!
それは、スギ花粉である?
昨年夏の異常な高温と日射量の影響を受け史上空前のスギ花粉の飛散を招いていたのだ〟
先生、先生。なんだかスゴイことが起こっていますよ。

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Dr,: こんな歴史上の事実が見事に示すように、毎年のスギ花粉症の程度はスギ花粉飛散量に関わっていますし、花粉飛散量は前年夏の気象にすべて影響を受けているんです。

An,: へぇー、そうなんですね。細川内閣の時代なんて、江澤はちっとも知りませんでした(笑)。

Dr,: そんなわけで、この春のスギ花粉症は、昨年夏の気候の反映であって、つまりそれほどひどくは無い。そう理解できます。

An,: じゃ、スギ花粉症の人はこの春は、楽勝なんですね。
マスクをせずに外を歩いても、大丈夫かしら?

Dr,: 江澤さん、江澤さん。そんなに油断しちゃダメですよ。
「美人薄命」ってことわざがあって、江澤さんみたいな美女は、幸(さち)が薄いんですから(笑)。

An,: やっぱり、用心は必要なんですね?

Dr,: スギ花粉が大量に飛散した翌年の、人間の鼻の粘膜は、いつもよりもスギ花粉に過敏なままの状態が継続しています。スギ花粉そのものの飛散量が例え少なくっても……。

An,: 空中の花粉が少ないときでも、過敏になってしまった鼻粘膜は、過剰反応を起こすわけですから。イヤだ、三好先生。やっぱりスギ花粉症は、ひどいんでしょうか?

Dr,: 1を聞いて10を知る江澤さん。まったくその通りです(笑)。

An,: それじゃ、前年のスギ花粉症でひどい思いをした人は、やっぱりシーズン前からの十分な用心が、欠かせないんですね。

Dr,: 次回から改めてスギ花粉症の基本と対策、そして治療法についてご説明します。

An,: 本日も面白いお話しを、有難うございました。

◆風邪と花粉症の違い

An,: 三好先生、来年のスギ花粉飛散量は今年ほどじゃあないって聞きました。
それでも、スギ花粉に過敏な人は、用心を怠(おこた)っちゃあいけない、というお話しも伺いました。
先生はなんの病気でも、体験が豊富ですから、この辺りの事情についても、お詳しいんじゃないですか?

Dr,: 1を聞いて10を知る江澤さん。今日も出だしから、飛ばしてますねぇ(笑)!
実はそうなんです。
江澤さん、復習です。1979年にスギ花粉症が日本人の国民病となって以来、最初の最大飛散の年はいつだったでしょうか?

An,: 先生、任せてください。繰り返します。
1995年春、人類は今だかつてない空前絶後の侵略を受けていた!
それは、スギ花粉である?
昨年夏の異常な高温と日射量の影響を受け史上空前のスギ花粉の飛散を招いていたのだ”というわけで……。1995年の春なんです!

Dr,: その通りです、江澤さん。
そして江澤さん、当院でスギ花粉症の受診者がもっとも多かったのは、いつのことだったでしょうか?

An,: 先生、任せてください。いつでも江澤は、バッチリです。2010年12月21日OAの、ラジオ3443通信12回に、こういう三好先生との対話が電波にのってます。
〝(録音から)

Dr,: 忘れもしません。1997年3月8日の土曜日、たった1日で、325人のスギ花粉症患者を診たことがあります。うち、新患つまり初めて当院にいらした方が、157人でした。

An,: 325人!

Dr,: 当院の周辺を、駐車場の空き待ちの車が、二重三重に取り囲んでいるんです。スギ花粉症の患者さんは、診察室・待合室・廊下・階段・玄関と列を作って並んでいます。はみだした患者さんが外に並んでいると、通行人がその患者さんに質問しているんです。「上で何かやっているんですか? 」ってね。

An,: ライブかなんかだと思った? (笑)

Dr,: 諦めた患者さんの中には、一度自宅に帰って、夕ご飯を食べて、それからおフロに入って、そして列にならび直す方も何人かおられました。

An,: おフロにぃ!

Dr,: その日の診察が終了したのが、夜の10時頃だったんですが、翌朝も9時から280人の花粉症患者を診察しました。〟

An,: と言うことは三好先生。スギ花粉大量飛散のピークは1995年春で、患者さんのピークは1997年春だったってことになるんでしょうか?

Dr,: いったん過敏になってしまった鼻粘膜は、多少少ないとはいえスギ花粉に、敏感に反応します。
花粉の量が少ないと油断している、普通の春にこそ、むしろスギ花粉への対策は手を抜いてはいけない。そういう教訓です。

An,: されじゃあ先生、去年に較べて花粉自体の飛散量は少ないこの春も、昨年つらい思いをした方は、予防が大切なんですね。 何分江澤は、脳神経細胞の新陳代謝がすごく良いものですから、1年経って昨年の知識が怪しくなって来ているんですけど……。

Dr,: その都度、新しいことや新鮮な知識を、脳味噌に詰め込むことができるんですから、江澤さん。忘れるのは、決して悪いことじゃありません。
自慢じゃありませんが、わたしなんて「もの忘れが良い」って、むしろ誇りにしているくらいなんです。

An,: じゃ、三好先生。今年もスギ花粉症にまつわる、新しいことや新鮮な知識を、江澤にどんどん教えてくださいね。

Dr,: わたしはどうも、江澤さんに頼まれると、すごく弱くって……。

An,: スタートラインに帰って、先生に新しい質問です。 スギ花粉症の始まりの時期って、まだまだ寒い日も多くって……。そんなときに、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりの、スギ花粉症の3症状が現われると、ですね。これはカゼなの? スギ花粉症なの? みたいに江澤はむっちゃ、悩んじゃうんですけど。先生、カゼとスギ花粉症の違いって、どこで区別がつくんでしょうか?

Dr,: 江澤さん! それはとっても良い質問です。どうして、カゼとスギ花粉症の症状は、すごく似ているのか。それは「免疫」という、人間の体の防御機構に関係しています。

An,: め、免疫、で・す・か?

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Dr,: そこらへんは、アレルギーという病気がどうして出現したか、みたいな医学の根本に関わる問題ですので、次回ゆっくりとご説明します。
ここでは、カゼとスギ花粉症の簡単な見分け方、についてお話ししましょう。
鼻の症状だけについて比較すると、たしかに両者とも、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりがメインですので、一目で見分けることはちょっとどうかな? みたいな感じです。
ただ、スギ花粉症ですと同時に花粉が目に入って来ますので、目が痒かったり、涙目になったりと、鼻の症状だけじゃないので、区別がつきます。

An,: たしかに、スギ花粉症では目に来ますよね。カゼじゃ、目は痒くなりませんし、ね。

Dr,: それにカゼの場合には、当初はウィルス感染だけですから透明な水っパナが流れますけれども。時間の経過とともに、様相が変わって来ます。
江澤さん、カゼをひいて2~3日経つと、鼻みずの色はどんな色調になるでしょうか?

An,: 三好先生、カゼの鼻みずは色が着いて、黄色とか緑とか、そうそうハナタレ小僧さんみたいになります。

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Dr,: それからカゼの場合には、体のウィルス対策として体温の上昇が見られ、つまり熱っぽくなります。もちろん体温を測定すると、平熱より高くなっていますしね。

An,: それに対してスギ花粉症には、「枯草熱」という別名こそ着いていますが、体温は上がらないんですね。

Dr,: そういう区別があります。

An,: 次回は、アレルギーの成立についてのお話しですね。今からとても、楽しみです。

◆新年のご挨拶

An,: 三好先生、今回はアレルギーとは何かという、すごく難しいお話しになるそうで……江澤は少しキンチョー気味です(笑)。

Dr,: 医学コミックシリーズのときにも、江澤さんにお話ししましたが、医学というしろものは、人間の体の防御についての話題なんです。つまり、病気の勢いが人間より強めのときには、人間はめげて病気がちになるけれども、病気よりも人間の生命力が勝っていれば、人間は病気にならない、つまり元気なんです(笑)。

An,: そういう単純なお話しなんですか。

Dr,: ただ、病気について解説しようとすると、専門用語をたくさん駆使してお話しせねばならず、日本語のお話しを聞いているはずだったのに、全然理解できなくて聞き手は眠くなっちゃう(笑)。

An,: 江澤もそれ、体験があります。

Dr,: その典型が「鼻閉」でして、なんのことはない、鼻が詰まって苦しい、と表現すれば済むところを「ビヘイ」だなんて、エーゴみたいな言い方をするものですから……。

An,: 江澤は、エーゴは苦手です(笑)。

Dr,: 江澤さんは、私の医学談義でしたらたちまち1を聞いて10を知る、1種の天才ですからね。天才ならエーゴが苦手だとか、一風変ったところはあるものですよ(笑)。

An,: 三好先生。江澤は、天才というものは「忘れた頃にやって来る」ものすべてを言うのかと思っていました(笑)。

Dr,: 江澤さん、江澤さん。「忘れた頃にやって来る」のは、江澤さんの英会話の勉強のことじゃあないんです。台風とか雷とか、そういう自然被害の方の天災なんですからね。江澤さんのように、1を聞いて10を知るタイプは、災難ではなく幸運の1種なんですよ(笑)。

An,: 江澤は幸運の1種なんですね! 幸せです。

Dr,: 新年の始めの、第1回のオン・エアなんですから、幸運をリスナーの皆様にも、存分にお裾分けしなくっちゃあ?

An,: 三好先生、お堅い医学の講義も宜しいんですけど……。年の始めに、おめでたいギャグなど……いかがでしょうか?
リスナーの皆さんが新年の訪れを、心から楽しんで頂けるような(笑)。

Dr,: 昨年は、大災害があって、fmいずみは大活躍をしたんですけれど。その大災害とは違って、今年のfmいずみはおめでたい意味で「水びたし」です。

An,: ええっ、先生。そんな幸福な水びたしに、今年のfmいずみは縁があるんでしょうか?

Dr,: だってfmいずみは、スタッフもリスナーの皆さんも、美男美女揃いに決まってますよね?

An,: (100人分くらいの大声で)はいっ! 決まってます?

Dr,: それを日本語では、「水も滴る(したたる)良い男に美女・美女(ビジョビジョ)」って言うんです(笑)。
今年のfmいずみは、幸福で水びたしになる。絶対に間違いありません(笑)。

An,: まぁうれしい!
三好先生、三好先生の予言は、信じちゃって良いんですよね。絶対間違い無いんですよね?

Dr,: もちろんですよ。だってこれから始まるのは、スギ花粉症。まさに鼻水びたしになる病気のことなんですから(笑)。

An,: 三好先生のご専門は、耳鼻科でしたもの、ね。

Dr,: そこで、スギ花粉症という病気は、人体の防衛能力である、免疫反応の過剰のために、症状が発生するんだという、お話しは振り出しに戻ります。

An,: 三好先生の、今回のお話しはお正月のすごろくみたいで、この放送の趣旨にすごく合っているような気がするんですけど……。

Dr,: でもスギ花粉症の時期は、もう目の前ですから。

An,: そうか、用心しなくっちゃあ。

Dr,: 今回は、新年にふさわしいギャグにのめり込んでしまい、本論が進みませんでした。

An,: さしあたり、スギ花粉症シーズンは目前に迫っていること、いつもお話ししていますように、病気はすべて予防が重要ですので。
三好先生、スギ花粉症の場合、いつ頃から予防の心がけが大切になって来ますでしょうか?

Dr,: 花粉の飛散し始めるのが、仙台市周辺ですと3月初旬辺りです。
その治療の効果を、十分に上げたいとお考えでしたら、3月に入ってからでは手遅れです。

An,: 先生、予防は2月頃から開始した方が良いんでしょうか?

Dr,: 1を聞いて10を知る江澤さんがそうおっしゃるんですから。それはまさに、「予言」だとおもって良いでしょう。

An,: また、シーズンに入ると医療機関も多忙になりますしね。その点もあわせて考慮して、1月末から2月初旬に耳鼻科の先生のところにいらした方が良い。三好先生、それでゴーカクでしょうか?

Dr,: 100点満点です、江澤さん。今年も座布団10枚、謹呈いたします。

An,: 今年も春から縁起が良い、そんな楽しい三好先生のお話しでした。

◆百年の恋も冷める花粉症

An,: 三好先生、前回のお話しでは、いよいよシーズンが目前に迫っている、スギ花粉症がですね、鼻みずびたしになる病気である、と。それから、この鼻みずびたしという現象は、アレルギーそして免疫という病気の本質に、密接に関係している、そういうお話しの流れだったように記憶しています。

Dr,: スギ花粉症はですね。別名「百年の恋も醒める病気」というあだ名が付いていましてですね。

An,: 百年の恋も醒めるんですか?
一体全体、スギ花粉症では何が起こるんでしょうか?

Dr,: だって江澤さん、花粉症じゃ、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりの発作がひどくって、おまけに涙もポーロポロ。痒い余りに目や鼻を擦って、目蓋が腫れ上がるものですから、どんなに恋い焦がれた美男美女でも、シーズン中だけは人様にお見せできるような、外観ではありません。 うっかり恋人に見せたら、びっくりされてしまって、それこそ百年の恋も醒めてしまいます。

An,: ひっどーい!
花粉症って、日本人の国民病だそうですけれど、まさに有害そのものって感じの病気なんですねぇ。

Dr,: ところがどっこい、江澤さん。この有害極まる発作は、人体を護る免疫機構が頑張り過ぎて、カラ回りをしているためであって、本来は有益な作用なんですよ。

An,: この酷い(むごい)発作が、人体を護っているんでしょうか?

Dr,: 昨年の12月27日オン・エアのこの番組で、カゼと花粉症の違いについて、江澤さんにご説明しました。

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An,: カゼとスギ花粉症って、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりの症状がまるで同じですから、区別がつきにくいんですよね。

Dr,: これらの鼻の症状は、そもそも何のために発生しているんでしょうか?
1を聞いて10を知る江澤さん、カゼのときのくしゃみって、どんな作用があるんでしょうね?

An,: カゼは、ウィルスやバイ菌が鼻の粘膜から人体内に入り込んで、起きるんですから……。
そうか! くしゃみはウィルスが鼻の粘膜から奧に入って行かないように、すごい勢いで空気を体外に押し出す目的があるんですね!

Dr,: そうです、江澤さん。それじゃ鼻みずは、何のため?

An,: 判りました、先生。鼻みずは、鼻の中のウィルスを鼻の外へ押し出す働きを担って(になって)いる。
ああ、それじゃあ鼻づまりは、鼻粘膜にくっついたウィルスが、それ以上体の中へ侵入しないよう、入り口を塞いでしまう役割を果たしているんですね。

Dr,: その通りです、江澤さん。
そうして考えて見ると、カゼやスギ花粉症のときの酷い発作は、実は人体を外敵から護るための、非常に有益な防御反応だったんです。

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An,: 先生、真実はそうだったんですね! カゼのひどい発作は、ウィルスを寄せ付けないための、合理的な防御反応だったんですねぇ。
あれっ、でもね三好先生。カゼのウィルスに対する、防御反応は理解できるんですけど……。スギ花粉症のときの鼻症状って、スギ花粉に対する防衛反応なんでしょうか?
スギ花粉はウィルスほど、体内に侵入しても悪さをするとは、思えないような……。

Dr,: そこが、人体の免疫機構の面白さなんですけどね。

An,: 面白いところなんですね?

Dr,: 過ぎたるは及ばざるがごとし、とでも言うんでしょうか。ウィルスのような有害物質だけでなく、スギ花粉のような無害な物質に対しても、渾身(こんしん)の力を振り絞って押し出してやろうとする働きが、スギ花粉症の鼻症状なんです。

An,: それはどうしてなんでしょうか? 先生。

Dr,: 人類ってのはですね、江澤さん。自己の生存と種族の保存のために、古代からものすごい労力を費やして来たんですよ。そして長い間、この目的を果たすのに最大の敵は感染症、つまりウィルスやバイ菌だったんです。
ことに、現在と違って食べ物が豊かじゃなく、人類が飢えに直面していた時代には、人体の防衛力すなわち免疫機構も、十分な力を発揮することができなくってですね、多くの人間が感染症で亡くなったわけです。

An,: 江澤も、それは聞いたことがあります。

Dr,: それに対してですね、近年の日本で乳幼児死亡率が激減したのは、衛生状況の改善によって感染源となるウィルスや病原菌が減少する一方、食べ物が豊かで栄養が良くなったために、人体の免疫能力が高まったため、と考えられています。

An,: 人間の体は、防御能力が高くなったんですね?

Dr,: 話は少しそれますけれど、江澤さん。
日本人の平均寿命がこんなに伸びたのは、何が最大の原因だったんでしょうか。

An,: お年寄りが、長生きをするようになったせい、でしょうか?

Dr,: それももちろん要因の一つなんですけどね、江澤さん。さっきお話ししたように、乳幼児死亡率が激減したことが大きいんです。

An,: えっ、そうなんですか?

Dr,: 例え、100歳まで長生きする方が何十人おられてもですね、同じくらいの人数の乳幼児が死亡したとしたら、平均寿命は50歳になっちゃいます。

An,: ホントですねぇー。

Dr,: ですから、日本人の平均寿命がこんなに伸びた背景として、衛生環境・栄養条件の劇的な改善が作用して、乳幼児死亡率が激減した影響を忘れちゃならないんです。 だけどこの、衛生・栄養の改善が、他方ではスギ花粉症増加をもたらしているのです。

An,: えっ、そうなんですか?

Dr,: 次回は、そのお話しをしたいと思います。

An,: 三好先生、次回のお話し、とても楽しみです。本日も、どうも有難うございました。

◆生活水準とアレルギー

An,: 三好先生前回は、カゼやスギ花粉症のときのひどい鼻症状、つまりくしゃみ・鼻みず・鼻づまりが、人体の防衛反応であること。それから、近年の衛生環境や栄養条件の改善が、スギ花粉症を増やしていること。この2つについて、お話しを伺いました。

Dr,: 今回は、衛生・栄養の改善が、これは人間にとって良いことであるはずなのに、なぜかスギ花粉症増加の一因となっている。その理由について、ご説明します。

An,: そうですね。江澤は先週以来その理由について、考えても考えても、どうしても理解できませんでした。
先生、今回はその謎解きを、ぜひお願いします。

Dr,: 前回のお話しのおさらいですけれど。
人類ってのはですね、江澤さん。自己の生存と種族の保存のために、古代からものすごい労力を費やして来たんですよ。そして長い間、この目的を果たすのに最大の敵は感染症、つまりウィルスやバイ菌だったんです。
ことに、現在と違って食べ物が豊かじゃなく、人類が飢えに直面していた時代には、人体の防衛力すなわち免疫機構も、十分な力を発揮することができなくってですね、多くの人間が感染症で亡くなったわけです。

An,: ええ、そうでしたよね。

Dr,: それに対してですね、近年の日本で乳幼児死亡率が激減したのは、衛生状況の改善によって感染源となるウィルスや病原菌が減少する一方、食べ物が豊かで栄養が良くなったために、人体の免疫能力が高まったため、と考えられています。

An,: つまり、人間の体は防衛能力が強くなった、そう表現できるんでしょうか。

Dr,: 皮肉と言っても言い過ぎじゃないと思うんですけど、人間の免疫能力は力が強くなったのに、ウィルスや病原菌の減少によって敵を見失い、言わば力を持て余しています。

An,: 力を持て余しているんですね?

Dr,: そんな状態の人体へ、無害ではありますが異物であるスギ花粉が入り込んだら、どうなるでしょうか。

An,: まさか、無害な花粉まで敵と勘違いして、防御するんじゃあ、ありませんよね?

Dr,: 江澤さん、これは例え話なんですけれど、ね。
わたしたち人間が、暴力を振るわれそうになったとき、わたしたちの手に何も持っていなかったら、襲って来た相手をかなり強く突放しても、その相手を傷付ける心配はありませんよね。

An,: ありませんよねぇ。

Dr,: でもねもしも、わたしたちがたまたま武器を手にしていたら、あるいは自分も知らないうちに強靭な体力を身に付けていたとしたら、加害者を無傷のまま押し戻すつもりでいても、実際は相手に傷を負わせてしまうことだって、あるかも知れませんよね。

An,: それは確かに。

Dr,: これは江澤さん、過剰防衛ですから。言うならば、逮捕されちゃい兼ねない事態なんですよ。

An,: それは、やり過ぎですものね。

Dr,: つまり正当な自己防衛であったとしても、過剰だったりしたら逮捕されちゃったりして、結果的に自分自身が損をすることだってあるんです。

An,: 正当防衛で損するんじゃあね。考えっちゃいますよね。

Dr,: で、お話しは振り出しに戻るんですけど。 人間の免疫能力も、栄養条件が良くなくって、さほど強くない昔だったら、花粉みたいな無害な異物なんかに過剰に反応することもなかったんです。

An,: ウィルスやバイ菌のような有害な異物には、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりなどの防御体制をとるけれど、無害な異物には反応しなかったんですね。

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Dr,: さすがは江澤さん。理解が早いですね。
その通り、そんなわけで昔は、人体がスギ花粉程度には、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりを起こさなかったんです。

An,: ところが今では、人間の免疫能力が強くなってしまったから……。

Dr,: 人体の免疫能力が、もしも力を持て余していたとしたら、襲って来た加害者が、スギ花粉のような無害な異物相手でも、全力で過敏に反応します。

An,: 全力で、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりを引き起こすことになるんですね。

Dr,: その結果、人体自身がむしろつらい思いをするようになるわけです。

An,: 先生、判りました。
スギ花粉症というのは、もともと人体を敵から護るための防衛機構つまり免疫が、自分の身を護ろうと無害な異物に過剰に反応している状態なんですね。

Dr,: そうです。そのために、本来ならば保護されるべき自身に、害を与えているような状況だと、理解できます。

An,: 整理します。
カゼのウィルスに対してもスギ花粉に対しても、人体がくしゃみ・鼻みず・鼻づまりという、似たような反応を示すのは、そもそもが免疫機構つまり人体の防御体制のためである。
昔は、衛生環境・栄養条件ともに良くなかったために、ウィルスなどの有害な異物に対してのみ、人体は防衛していた。スギ花粉など、無害な異物には防御体制をとる余裕は無かった。
しかし現在のように、衛生・栄養ともに充実して来ると、人体はスギ花粉のような無害な異物に対してまで、過剰で過敏な防衛反応を示すため、スギ花粉症のくしゃみ・鼻みず・鼻づまりの発作が発生するようになった。

Dr,: さすがは江澤さん。スギ花粉症がなぜ増加したのか、なにゆえに現代病と呼ばれているのか、すべて理解してもらいました。
さて、スギ花粉症における人体側の変化について、ここまではお話ししました。次に、スギ花粉側のお話し、つまりスギやスギ花粉がなぜこんなに増えたのか、についてお話しを進めます。
ただその前に、もうすぐスギ花粉症のシーズンですので、シーズン前から心がけるべき予防について、おさらいしたいと思います。

An,: 次回は予防のお話しですね。楽しみです。

◆花粉症予防の工夫

An,: 三好先生、明日から2月に入るということで、今年も早くもスギ花粉症予防の時期が来ました。
昨年のスギ花粉症は、とても酷かった(ひどかった)記憶があるんですけど。今年はどうなるんでしょうか?

Dr,: 仙台はスギ花粉症のシーズンが、2月末から3月始めにかけて始まるものですから。
昨年は、花粉のシーズンの開始直後に〝3月11日〟が来てしまって。花粉の量も、平年より多かったものですから。
予防も十分じゃないスギ花粉症の方が、花粉舞い散る街で、そうとう辛い思いをされたみたいです。
今年も仙台の花粉飛散開始日は2月末、飛散量そのものは平年並と予測されています。

An,: それじゃ、今年は去年より楽なんでしょうか?

Dr,: お話ししたかも知れませんが、大量飛散した年の翌年あたりは、鼻粘膜の過敏性が亢進していることが多いので……。

An,: そうか、花粉量がそれほどでなくっても、反応はひどいかも(笑)。

Dr,: そう考えておいた方が、賢いのかも知れませんね。

An,: 去年の放送のおさらいになるかも知れませんが先生、スギ花粉症の予防策を教えてください。

Dr,: なんと言っても、スギ花粉症はアレルギー疾患です。そしてアレルギー疾患というものは、つまり抗原抗体反応ですから。スギ花粉という原因があって、それに対して過敏反応を呈する病気です。

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An,: それじゃまず、原因であるスギ花粉を吸い込まないことですね。

Dr,: メディアのスギ花粉情報に耳を澄まし、花粉飛散量の多い晴れた日の外出は避けます。
外出時には、マスク・ゴーグルで目や鼻を覆い、花粉の接触を少なくする努力が必要です。
マスクもゴーグルも、鼻や目を十分にカバーすることが重要ですから、漏れのないものを選びます。

An,: マスクの材質が、話題になることも多いようですが。

Dr,: 材質もですが、とにかく空気の漏れがないようにすることが大切です。

An,: 衣類とかにも、注意した方が良いんですよね?

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Dr,: 花粉が体に着かないように工夫した方が良いわけで、コートも花粉の付着しにくい材質を選びます。
髪の毛に花粉の付着することもありますから、帽子やスカーフの着用も必要でしょう。

An,: 家の中では、どんな注意をすべきでしょうか?

Dr,: 屋内にも、花粉は入り込んで来ますし。密閉度の高い家屋が好ましいとは思いますが、うっかり換気のために窓を開け放しにしないよう注意してください。

An,: 寒かった日々の後だけに、暖かい空気を室内に十分入れたいとは思いますが……。

Dr,: そういうときは、花粉情報を活用してくださいね。

An,: 花粉の屋内への侵入を防ぐには、どうしたら良いでしょうか。

Dr,: 外出から戻ったら、衣服に花粉の付着していることを頭に入れ、屋内に入る前に花粉をふるい落としてください。
うっかりしがちなんですけどね、布団は屋外で干さないようにしてください。花粉の固まりになった布団に潜り込んで、夜中にスギ花粉症発作を起こす人もゼロではありません(笑)。

An,: 気密度のかなり高い住宅でないと、それでも家屋内に花粉は入り込みますよね?

Dr,: 屋内の花粉は床に落ちますので、掃除して除去しようとして、掃除機をかけると……(笑)。

An,: 花粉が、床から空中に舞い散るんですね?

Dr,: 排気をうまく処理できる掃除機も開発されてますから、機種の選定に一工夫してください。

An,: 床の花粉を巻き上げない掃除法って、あるんでしょうか?

Dr,: 実はネ、ここだけの秘密なんですけどね。

An,: 何でしょう(笑)?

Dr,: 床にお茶がらを散らして、箒でそっと掃くと、床の花粉が舞い散らずに、きれいに除去することができます。お茶がらじゃなくって、古新聞を水に浸して細かく千切って。それを掃いても良いんですけどね(笑)。

An,: 手ぬぐいで姉さん被り(かぶり)かなんかして……(笑)。

Dr,:  江澤さんは、似合うかもしれませんね。なにしろ、医学の最先端の実践ですからね(笑)。

An,: そうやって、花粉への接触をできるだけ減らして、ですね。
次にできることは、どんなことでしょう?

Dr,: 花粉対策の心がけの次は、早めの医療機関の受診でしょうね。

An,: いつ頃、受診したら良いでしょう。シーズンになると、医療機関はすごく混みますし。

Dr,: 薬剤を中心に治療するなら、2月半ばまでにいらして頂きたいですね。

An,: でも、シーズン中何回か通院しなくっちゃあなりませんものね。

Dr,: 当院では、シーズン中に通院せずに済むよう、内服薬や点鼻薬を2~3ケ月分処方します。シーズン前からの内服でかなり効果が期待できますし、シーズン中花粉飛散が予想より多かったときだけ、受診してもらえば良いわけです。

An,: 三好先生のところは、土日曜日や祝日も診療してますものね。

Dr,: ただそういう日には、鼻血やめまいの発作など、救急車搬送の方も少なくありません。お互いに嫌な思いをしないためにも、シーズン前の受診をお考え頂きたいと思います。

An,: 本日は、どうも有難うございました。