3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

ラジオ3443通信花粉症特集2

◆早期受診が花粉症対策のカギ

An.:
三好先生、今年もいよいよ2月に入り、スギ花粉飛散の予感に怯える毎日が、続いています。
前回の放送では、スギ花粉をなるべく吸い込まないようにする、さまざまの工夫を教えて頂きました。
Dr.:
そうですね。スギ花粉症はアレルギー反応で、つまりは抗原抗体反応ですから。原因物質であるスギ花粉を避けることができれば、結果である発作を起こさず、かなり楽にシーズンを過ごすことができます。
An.:
花粉対策の心がけの次は、早めの医療機関受診と伺いましたが、具体的にはいつ頃治療を開始すれば良いでしょう?
Dr.:
仙台市では、花粉が連続して飛散するようになるのは、3月初旬からです。でもまとまった数でなくとも、花粉がわずかでも空中に存在すると、結構スギ花粉症発作を起こす方はおられます。
An.:
鼻の粘膜がスギ花粉に対して、過敏反応を起こすから、なんですね。
Dr.:
さすが1を聞いて10を知る江澤さん。
お話ししましたように、前の年に大量のスギ花粉を浴びていると、その年の花粉飛散が少なくっても、鼻の粘膜の過敏性のせいで、早い時期から敏感に反応を起こすことがあります。
An.:
その意味では、花粉飛散の少ない今年の春も、決して油断はできないんですね?
Dr.:
何の病気でもそうなんですけどね、江澤さん。一度こじらせてから治療を始めるのと、病気の初期に治療を受けるのとでは、どちらが治り易いでしょう。
An.:
そりゃあ先生。風邪だって、ソレっぽいと思った瞬間に卵酒を呑んで、暖ったかくして早めに寝てしまえば、治りは早いんですもの・・・・・・。
Dr.:
スギ花粉症も同じ理屈でですね、花粉を大量に吸い込んでしまってから治療するより、ごく初期に治療を開始する方が、はるかに軽く済みますよね。
An.:
それじゃ先生、いつ頃スギ花粉症の治療は始めたら良いでしょう?
Dr.:
薬剤を中心に治療するなら、2月半ばまでに受診して頂きたいですね。
An.:
それじゃそろそろ、スギ花粉症に怯える方は、治療を受けた方が良いんですね。
でも、今頃から4月半ばまでお医者さん通いというのも、少しツライものがあります。とくにこのシーズン、お医者さんはスギ花粉症患者でもの凄く、混みあうものですから。何回も通院する意欲が、やや減退しそうで・・・・・・。
Dr.:
その方の症状にも依りますが、当院ではシーズン前にいらしたスギ花粉症の方には、シーズンの終了するまで、長めに内服薬やスプレーを処方することにしています。
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An.:
それなら、シーズン中何回もお医者さん通いをしなくとも、済みそうですね。
Dr.:
スギ花粉症のお薬の中には、ひどく眠気の強いお薬もあって。やはり運転をなさる方には、危険の伴うことがゼロじゃありません。私自身そうなんですけどね、大抵の花粉症薬で眠くなるものですから・・・・・・。
An.:
そう言えば、三好先生も去年からスギ花粉症の被害者ですものね。
Dr.:
他人事じゃあ、ありませんね。
An.:
この頃は、効き目が強くって眠気の少ないお薬もあるって、江澤は聞いたことがあります。
Dr.:
理論上ではそうなんですけど、なにしろ相手は人間ですから。
An.:
理屈通りに行かないことはある、かも知れませんね。
Dr.:
少なくとも自分自身が眠くなるお薬は、危険性を考えると患者さん全てに、無条件で処方するのはどうかと・・・・・・。
An.:
先生も患者さんも、診療しながら居眠りしてたりして・・・・・・(笑)。
Dr.:
あんまり、見栄えの良いものではありませんから。
An.:
見栄えで治療をするわけではないんでしょうけど(笑)。
Dr.:
でも薬の副作用は、少ない方が良い。私はそう考えて処方しています。
スギ花粉症のシーズン中に、春一番など風の強い日があると、花粉飛散がひどくなり、症状も辛くなりますが。そのときはそのときで、短期間だけ強めの内服を処方したりすることもできます。
An.:
副作用の危険性を冒してまで、最初から強めのお薬を長めに処方するのは、考えもの。そういう治療方針なんですね?
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Dr.:
1を聞いて10を知る江澤さん。それこそが、私の言いたいことだったんですよ!
An.:
それに加えて、先生お薦めのレーザー手術や高周波手術も、併用したら効果が上がりそうですね。
Dr.:
私なりに、スギ花粉症の皆さんにお薦めしているのは、次のような内容です。
まず、スギ花粉の状況を熟知し、花粉そのものを避ける工夫をすること。
次に、スギ花粉症のシーズン前に、予防策のすべてを済ませておくこと。
レーザー手術や高周波手術も、できるだけシーズン前に終えておいて、その上で内服薬の長期処方を受けておくこと。
シーズン中は、花粉対策を万全にして、日常生活も規則正しい健康的なそれを心がけること。
スギ花粉症の方はシーズン中、鼻の粘膜が腫れて鼻づまりから、夜間の睡眠が浅くなりがちです。
もともと睡眠時無呼吸症候群を合わせ持っている方は、余計に症状がひどくなりますから、そうした配慮も必要です。
そして、春一番などで大量に花粉が飛散したなら、医療機関で適切な処置を受けることです。
シーズン前からの、予防と内服でもコントロールし切れない大量飛散では、短期間の集中治療が役に立ちますからね。
An.:
先生、本日も有益なお話しを、誠に有難うございました。
次回はそれでは、スギ花粉が増えた理由や、スギ花粉症が国民病になった経緯(いきさつ)について、お話しを聞かせて頂きます。
Dr.An.:
有難うございました。

◆国民病と呼ばれた時期

An.:
三好先生、スギ花粉症って、日本人の国民病って言われるそうですね。
それじゃあきっと、病気の歴史もすっごく長くって・・・・・・。日光の有名なスギ並木の植えられた、江戸時代からの病気なんでしょうね?
Dr.:
そうそう、日光にスギ並木ができた頃には、日本人の大半が悩まされていた・・・・・・と言いたいところなんですが。
実はまるっきり違います。
An.:
えっ、違うんですか!それじゃあ、いつ頃から、スギ花粉症は国民病になったんでしょうか。
Dr.:
スギ花粉症の歴史は意外に浅くって、ですね。日光の耳鼻科医が1963年に発見し、翌年に論文発表したのが始まりですから。
An.:
それじゃあ、学問的に正式に認められたのが1964年ですね。案外スギ花粉症って、最近の病気なんですねぇ。
Dr.:
もちろん、スギ以外の植物による花粉症は、もっと古い頃に発見されています。
そもそも、花粉症自体のルーツは英国にありまして。
An.:
えっ!日本じゃなかったんですね。
Dr.:
19世紀の始め頃英国の農民が、牧草を刈り取って乾燥のためサイロに収納する際、人によっては鼻からのどにかけて、焼け付くような痛みと痒みが生じ、くしゃみ・鼻みず・鼻づまりの止まらなくなることが、知られていたんです。
An.:
それって、何かの症状そっくりですよね。日本人の国民病とか・・・・・・(笑)。
Dr.:
そして当時この症状は、熱っぽくなることが原因だったんでしょうか、「枯草熱(こそうねつ)」つまり牧草の枯草(かれくさ)による熱であろうと、想像されていたんです。
An.:
と言うことは、アレルギーではなく、ウィルスかなんかの感染症だと、誤解されていたのかも知れませんね?
Dr.:
さすがは江澤さん。実はその当時、まだアレルギーという概念はなかった。いえいえ、アレルギー疾患の存在さえ、知られていなかったんです。
An.:
だから枯草熱も、感染症と考えられちゃったんですね。
Dr.:
この枯草熱が病気の1種であることを、医学面で世界初めて報告をしたのが、英国のボストークという学者で、同じく英国のブラックレーはそれがイネ科の花粉に関連していることを、証明したんです。
An.:
ようやく、花粉症は花粉による病気であることが、判って来たところですね?
でも、アレルギーだとは知られてなかったんですね。
Dr.:
今でも、英語では花粉症のことを、"Hay fever"つまり枯草熱と称しているくらいでいからね。
An.:
枯草熱、すなわち花粉症がアレルギーだと理解されるようになったのは、いつ頃からなんでしょうか?
Dr.:
花粉症とはまったく別の研究経路をたどって、20世紀始めにアレルギーの研究が開始されました。
そしてその過程で、枯草熱や花粉症もアレルギーの1種であることが、確認されたんです。
An.:
そう言えば三好先生、枯草熱ってアメリカにもあるって聞いたことがあります。
Dr.:
枯草熱は花粉症のことですが、地域によって植物相が違いますから、違う花粉による花粉症の発生することは、珍しくありません。
An.:
英国の花粉症はイネ科のカモガヤによるものでしたよね、先生。じゃ、アメリカの花粉症は何が原因なんですか?
Dr.:
アメリカでは、ブタクサって名前の雑草が原因で、花粉症が起こり易いようです。
このブタクサ花粉症は、1872年に学会発表されていて、アメリカの全人口の数%が悩まされている、との報告があります。
で、実は日本でもスギ花粉症より早く、ブタクサの花粉症が発見されているんですよ。イネ科のカモガヤなど牧草の花粉症だって、スギ花粉症発見と同時期に確認されてます。
An.:
そんなウソみたい。それはいったい、どうして、なんでしょうか?
Dr.:
明治維新後、日本でもそれまで行なわれていなかった牧畜業が、全国各地に広まりました。
江澤さん、江澤さんは島崎藤村ってご存じですよね?
An.:
ええ、つい先日もfmいずみで、番組に出演して頂きました(笑)。たしかテーマは、「千曲川(ちくまがわ)のスケッチ」でした。
Dr.:
その「千曲川のスケッチ」は、明治32年に藤村が仙台市から小諸に移り住んで、執筆したんですけどね。小諸では牧畜業が盛んだったことについて、数多くの描写がなされています。
An.:
それじゃ、明治のその頃には日本でもたくさん牧場ができて・・・・・・。そうか、それじゃ日本でも牧草が至る所で、花粉を飛ばしますよね。
Dr.:
イネ科植物は牧草として、明治初期には日本全国に野生化していたことが知られています。またブサクサは、あのペリーが幕末に日本着任の際に、荷物の梱包材料として浦賀に持ち込み、これも全国に広がったとされています。
An.:
黒船襲来と同時なんですね(笑)!
Dr.:
吉田松蔭など、黒船を目前にした維新の志士たちが、全国に志を馳せるときに、バラ蒔いていたりして(笑)。
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An.:
文明開化とともに、カモガヤやブタクサの花粉が、日本全国に広がったんですね!
Dr.:
そのせいで、花粉症のことを現代病と称するわけじゃないんですどもね(笑)。
An.:
ブタクサやカモガヤの花粉症が、それらの植生の拡大とともに増加したことは、良く判りました。
では、国民病であるスギ花粉症の場合は、どんな事情があったんでしょうか。
Dr.:
次回の放送は、そのお話しです。
An.:
次回もお話しが楽しみです。
Dr.:・An.:
有難うございました。