3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

ラジオ3443通信 

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げんき倶楽部~日本の国民病のルーツは外国にあった~

耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」。三好彰院長は、30年余り、耳鼻咽喉の診療に携わる。今回は、昨年12月から1月にfmいずみで放送された「花粉症」に関する内容を紹介する。
An.…江澤アナウンサー、 Dr.…三好院長]

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An.:
三好先生、スギ花粉飛散の予感におびえる毎日が続いています。前回の放送では、スギ花粉をできるだけ吸い込まないようにする、さまざまな工夫を教えていただきました。
Dr.:
スギ花粉症は、アレルギー反応、つまりは抗原抗体反応です。原因物質のスギ花粉を避けることができれば、発作を起こさず、かなり楽にシーズンを過ごすことができます。
An.:
花粉飛散の少ないことしの春でも、決して油断はできないんですよね。
Dr.:
どんな病気であれ、一度こじらせてから治療を始めるのと病気の初期に治療を受けるのとでは、治療に要する時間は違いますよね。
An.:
風邪かもと思ったときに、卵酒を飲んで温かくして早めに寝てしまえば、治るのは早いです。
Dr.:
スギ花粉症も同じ理屈で、花粉を大量に吸い込んでしまってから治療するより、ごく初期に治療を開始する方が、はるかに軽く済みます。薬剤での治療が中心となる場合、スギ花粉症の薬の中には、眠気を引き起こすものもあり、運転をされる方には、危険を伴う可能性があります。私自身もそうで、大抵の花粉症薬で眠くなるんですよね。
An.:
そういえば、三好先生もスギ花粉症の被害者でしたね。
Dr.:
スギ花粉症のシーズン中に、春一番など強い風の日があると、花粉飛散が増え、症状もつらくなりますが、そのときはそのときで、短期間だけ強めの内服薬を処方したりすることもできます。
An.:
副作用の危険性を冒してまで、最初から強めの薬を長めに処方するのは考えもの。そういった治療方針なんですね?
Dr.:
1を聞いて10を知る江澤さん。それこそが私の言いたいことだったんです!
An.:
先生お勧めのレーザー手術や高周波手術も併用したら、効果が上がりそうですね。
Dr.:
私なりにスギ花粉症の皆さんにお勧めしているのは、次のような内容です。まず、スギ花粉の状況を熟知し、花粉そのものを避ける工夫をすること。シーズン中は、花粉対策を万全にして、規則正しく健康的な日常生活を心掛けること。スギ花粉症の方は、鼻の粘膜が腫れて鼻が詰まり、夜間の睡眠が浅くなりがちです。もともと睡眠時無呼吸症候群を併せ持っている方は、余計に症状がひどくなりますから、そうした配慮も必要です。そして、春一番などで大量に花粉が飛散したら、医療機関で適切な処置を受けましょう。シーズン前からの予防と内服でもコントロールし切れない大量飛散では、短期間の集中治療が役に立ちますからね。

ルーツは意外にも英国

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An.:
スギ花粉症は、日本人の国民病といわれるそうですが、いつからそうなったんですか。
Dr.:
スギ花粉症の歴史は意外に浅く、栃木県日光の耳鼻科医が1963年に発見し、翌年に論文発表したのが始まりです。もちろん、スギ以外の植物による花粉症は、もっと前に発見されています。そもそも、花粉症自体のルーツは英国にあるんですよ。
An.:
日本じゃなかったんですか?
Dr.:
19世紀の初めごろ、英国の農民が牧草を刈り取って乾燥するためサイロに収納した際、人によっては鼻からのどにかけて、焼け付くような痛みとかゆみが生じ、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりが止まらなくなるのが知られていたんです。当時この症状は、熱っぽくなることが原因だったからか「枯草熱(こそうねつ)」、つまり牧草の枯草(かれくさ)によるものであると想像されていたんです。
An.:
ということは、アレルギーではなく、ウイルスか何かの感染症だと誤解されていたのかもしれませんね。
Dr.:
さすが江澤さん。実はその当時、まだアレルギーという概念も、アレルギー疾患の存在すら、知られていなかったんです。
An.:
だから枯草熱も、感染症とされたんですね。
Dr.:
この枯草熱を病気の一種だと世界で初めて医学の観点から報告したのが、英国のボストークという学者。同じく英国のブラックレーは、それがイネ科の花粉に関連していることを証明したんです。
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An.:
ようやく、花粉症は花粉による病気であることが分かってきたんですね。では、花粉症がアレルギーだと理解されるようになったのはいつごろなんですか?
Dr.:
20世紀初めにアレルギーの研究が開始され、その過程で枯草熱や花粉症もアレルギーの一種であることが確認されたんです。
An.:
そういえば、枯草熱はアメリカにもあると聞いたことがあります。何が原因なんですか?
Dr.:
アメリカでは、ブタクサという雑草が原因で、花粉症が起きやすいようです。このブタクサ花粉症は、1872年に学会発表されていて、アメリカの全人口の数%が悩まされているとの報告があります。実は日本でもスギ花粉症より早く、ブタクサの花粉症が発見されています。また、イネ科のカモガヤといった牧草による花粉症も、スギ花粉症発見と同時期に確認されています。
An.:
それは一体どうしてでしょうか?
Dr.:
イネ科の植物は牧草として、明治初期には日本全国に野生化していたことが知られています。またブタクサは、あのペリーが日本着任の際に、荷物の梱包(こんぽう)材料として浦賀に持ち込み、全国に広がったとされています。
An.:
文明開化とともに、カモガヤやブタクサの花粉が、日本全国に広がったんですね! 次回は、日本の花粉症に関するさまざまな事情について、お話をよろしくお願いします。