3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

ラジオ3443通信 学校健診特集3

80話 水泳と中耳炎

詳細は、当院ホームページのデジタルコミックをご覧ください。 詳細は、当院ホームページのデジタルコミックをご覧ください。
An.:
三好先生、話題は中耳炎のお話しのさなかなんですけどもね。自分が子どもの頃、江澤は中耳炎じゃ水泳はできないって、聞いた憶えがあるんですけど。先生、ホントなんでしょうか?
Dr.:
中耳炎って病名を聞くと、そのインパクトがとっても強くって、ですね。すべての中耳炎じゃ水に入れないって、そんな印象を持ちがちです。
An.:
そう言えば中耳炎にも、いくつか種類があるんでしたよね。
Dr.:
急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎と、大きく3つに分類した中でプール禁止なのは、急性中耳炎と慢性中耳炎の耳垂れのひどい時期。まず、この2つです。
An.:
それ以外はどうなんでしょうか?先生。
Dr.:
滲出性中耳炎では、その治療のために鼓膜に穴を開けて、中耳腔換気のためのチューブを入れてあることがあって、その場合は要注意です。そうでなければ、大部分の滲出性中耳炎ではプールOKです。
 慢性中耳炎でも、耳垂れの無い状態が続いているならば、工夫次第で水泳可能です。
An.:
江澤は小さい頃、お年寄りから注意されまして。
「江澤ちゃん。頭っから水に飛び込むと、中耳炎になっちゃうからね。水に飛び込んじゃあ、いけないよ。」
 そんな、お話しでした。
Dr.:
ははぁ、江澤さんはきっと、すっごく活発な子どもさんだった!?
An.:
いいえ、三好先生。江澤はとってもおしとやかな、よい子でした(笑)。
Dr.:
そのお年寄りはきっと、頭っから水に浸かると、耳の穴つまり外耳道から水が中に入り込んで、それで中耳炎になる。そんな風にご自身も子どもさんの頃、聞かされて育ったんでしょう。
An.:
だけど三好先生。お風呂だって、思いっきり頭まですっかり入ってしまうと、耳からお湯が中に入るんだって、わたしお年寄りから聞きました。
Dr.:
江澤さん、耳の中って、どういう構造でしたっけ?
 耳の穴を外から順番に、考えて見てください。まず、耳の外側の耳たぶですね。
An.:
その次は先生、耳の穴があって、内部に繋がっています。
Dr.:
それを外耳、耳の構造のうちの一番外側の部分、と呼びます。
その次には、江澤さんお得意の、fmいずみの微妙なサウンドつまり空気の動きを感じ取る……。
An.:
三好先生、そこには鼓膜が存在します。
Dr.:
鼓膜の内側を中耳腔と呼び、中耳炎の発生する部分でもあります。  と言うことは江澤さん、中耳炎の現場と耳の穴との間には、薄い1枚の膜が張っていてですね。お風呂に頭から飛び込んでも、お湯は中耳腔には届かない。そういうことに、なりますね。
An.:
じゃあ、江澤が教わったお年寄りの長年の知恵は……?
Dr.:
現代と異なり、不衛生だった時代の日本では、ハナ垂れさんばかりではなく、耳垂れのある人も少なくはありませんでしたから。おそらく、小児期に急性中耳炎を患い、鼓膜にキズのついたまま、放置していた人も少なくなかったのではないかと。
An.:
鼓膜に穴の開いたままの人が、頭からお風呂にザブッと入ったり、プールで飛び込んだりしたら……。三好先生、鼓膜の穴から不衛生なお湯や水が中耳腔に入り込みますよねぇ。ああ、そうか。だから中耳炎が……。
Dr.:
病気の発生を考える場合、時代の状況を頭に入れることは重要です。
 だって、スギ花粉症でさえ。
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An.:
江戸時代にもスギは存在したけれど、日本国中に植えられたのは、第二次世界大戦後の復興期でした。だから、戦後スギ花粉症は日本人の国民病になったんでしたもの、ね。
Dr.:
ですから現在では、不潔なお湯や水が耳の中に入って中耳炎を起こすことは、まずありません。
 でも、もちろん急性中耳炎の人は、プールはダメですよ。
An.:
そりゃ先生。急性中耳炎の人は、そもそも風邪の真っ最中だから。
Dr.:
慢性中耳炎で、耳垂れがさかんに出ているときも、良くありません。
An.:
耳そのものが、バイ菌の感染中ですもの、ね。清潔にしておかなくっちゃあ。
Dr.:
慢性中耳炎とか小さいときの鼓膜の穴の名残とか、そういう状態でも工夫次第で水泳はできるんです。
An.:
滲出性中耳炎の治療で、鼓膜に換気チューブが入っていても、と伺いましたが。でも先生、滲出性中耳炎で鼓膜に換気チューブを入れるって、どういうことなんでしょうか。
Dr.:
滲出性中耳炎の中耳腔は、空気の入れ替えのできない密閉した部屋みたいなもんだ。そういう話題に、以前触れたことがあります。
An.:
そういった部屋は、現実問題として湿り気が多く、ジメジメし易い。そんな内容でしたよね。
Dr.:
そして中耳腔も、空気の入れ替えつまり換気ができないと、ジメジメすると言いますか滲出液が溜って来る。そうしたご説明も、お聞き頂いたと思います。
An.:
そう言えば滲出性中耳炎って、のどや鼻の奥と中耳腔を繋ぐ耳管が、うまく開かなくって……。中耳腔が、閉鎖空間になっちゃっているんでしたっけ?
Dr.:
耳管の機能を回復させて、中耳腔の換気をうまく行なうと、中耳腔の滲出液が排液されて、鼓膜は元通り動くようになります。
An.:
聞こえも良くなるんですね?
Dr.:
その目的のために、治療法の1つとして鼓膜に換気用のチューブを、留置します。
An.:
それで、換気が長続きするんですね?
Dr.:
ただし、水泳やお風呂ではそのチューブの管理に、注意が必要です。
An.・Dr.:
お話しは次回に続く、です(笑)。

81話 水泳可能な中耳炎

An.:
三好先生、前回のお話しで、中耳炎にもいくつかのタイプがあって、水泳可能な中耳炎と、そうじゃない中耳炎が存在する、とのことでした。
 復習の意味で先生、水泳不可能な中耳炎はどんなタイプでしたっけ?江澤にだけこっそり(笑)教えてください。
Dr.:
急性中耳炎はもちろんダメですよね。だって急性中耳炎はそもそも、風邪のまっ最中ですものね(笑)。
An.:
それ以外には、どんなタイプの中耳炎が、まずいんでしょうか?
Dr.:
慢性中耳炎でも、感染が起こっていて耳垂れが出ている時期はさけなくっちゃあいけません。
An.:
耳垂れが無ければ、鼓膜に穴の開いたままの慢性中耳炎でも、水泳ができるんでしょうか。
Dr.:
滲出性中耳炎における水泳対応と併せて、ご説明しましょう。
An.:
滲出性中耳炎って、鼓膜内外の気圧調節に関わる耳管の働きが不十分で、鼓膜の内側のスペースつまり中耳腔に炎症の発生している状態でしたよね、先生。
Dr.:
そのために、鼓膜の内側に炎症性の液体が貯まってしまって、鼓膜の動きが鈍くなるものですから、中耳腔の換気つまり空気の入れ替えをして、液体を耳管経由で外へ押し出してやります。
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An.:
滲出性中耳炎の場合には、耳管がうまく開かなくって、炎症がひどくなるんでしたよね。確か、子どもではアデノイドというのどのリンパ組織が大きくって、耳管がつまり易くなっていて、お年寄では耳管を開く筋肉の筋力低下が、関係していたんですよね。
Dr.:
この耳管を、中耳腔の換気担当のドアに例えます。締め切った部屋では空気が澱み、このためにジメジメして来ます。実際の中耳腔も耳管閉鎖状態では、炎症性の液体が貯まって来ているんです。
An.:
すっごく、イメージし易いです。
Dr.:
それでは江澤さん、締め切ってジメジメしていた室内の空気を入れ替えてサッパリさせるためには、どうしたら良いでしょうか?
An.:
ええっと、まず閉じていたドアを開けます。でもそれだけでは、空気が部屋の奥深くまで流れこんで来ませんので……。どうしたら良いのかしら?
Dr.:
部屋の換気なら、反対側にある窓を開けてやれば……、ホラ江澤さん。
An.:
ああ、そうですね!ドアから窓へ、あるいは窓からドアへ、空気がスーッと流れますよね。そうか、それで換気がうまく行くんだ。
Dr.:
それと同じ理屈で、ドアに相当する耳管の反対側の鼓膜に、小さな穴を開けたり、そこに空気の通る管つまり換気チューブを差し込んでおけば……。
An.:
そのチューブが窓の役目を果たしてくれるので、閉鎖腔だった中耳腔も空気の入れ替えが楽に行なえるって、ワケですね?
Dr.:
さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。
An.:
アレッ、でも先生。耳管はそもそも、アデノイドや耳管筋の筋力低下で、半ドア状態くらいにしか開かないんじゃないかしら。鼓膜にチューブが入って窓ができても、そんなにスースー空気が通り抜けて行くもんでしょうか、ね?
Dr.:
江澤さん、実際に締め切った部屋で実験をすると判ります。耳管に例えられる半ドアでも、対側に全開の窓が開いていると、空気の流れはどうなるでしょう?
An.:
ああ、なるほど。半ドアでも対側の窓が全開だったら……。空気はすっごく滑らかに、部屋全体を通り抜けますよね、なるほど。
Dr.:
中耳腔でも、同じことが起きてると、考えなくっちゃあ。
An.:
それで、滲出性中耳炎の原因だった耳管の詰まりが、解決するんですね。あっ、それで水泳のときには逆に困っちゃうことになるんだ。プールの水が鼓膜の中へ入ってきちゃうもの。
Dr.:
現実には、鼓膜の外に少し空気の層があって、プールの水もそれを押し退けて鼓膜の中までは、入って来にくいもんですけどね。
 でも、頭っからプールの中まで全身潜ってしまうと、プールの水も鼓膜の内側、つまり中耳腔まで届くんです。
 江澤さん、チューブの挿入された鼓膜と耳管は、水面に突き刺したストローと似たような条件です。
 江澤さんが、ジュースをストローで飲むとき、ストローの上の口を指で押さえていたら、ジュースはストロー内に入って来ますか?
An.:
いえっ、ジュースはストローの下の口の位置に、留まったままです。でもその手を外すと、ストロー内の水面はグラスのジュースと同じ位置まで、上がって来ます。
Dr.:
耳管の内側も、同じです。水泳時、口から息を吸い鼻から吐き出してます。プールの水は、鼓膜に穴が無ければ、耳管ののどの入り口で停止して、耳管内部には入りません。
An.:
でも、もしも換気チューブが鼓膜に入ってたら……。
Dr.:
プールの水は、耳管を通り抜け、中耳腔は水だらけになるでしょうね。
An.:
それじゃ、三好先生、プールの水が耳の中へ入らない、魔法でもあるんでしょうか?
Dr.:
次回は、耳鼻科医だけが知っている、その魔法について、お話しします。

82話 水泳時の中耳炎対策

An.:
三好先生、前回は滲出性中耳炎で鼓膜に換気目的のチューブが入っていると、プールで中耳腔に水が入ってしまう、とのお話しを伺いました。
 それって、スイミング・スクールならともかく、学校の授業で水泳のある子どもさんたちは、すごく困っちゃうんじゃないかって、心配になります。
 実際のところは、どうなんでしょうか。
Dr.:
その点について、全国の耳鼻科医がどう考えているのか、アンケートをとったことがあります。
 江澤さん、日本の耳鼻科医は、滲出性中耳炎の子どもさんのスイミングに、どう対応しているのか、その鋭い第六感で当ててみてください。
An.:
スイミングって、すごく子どもの心身の発達に役立ちそうな気がします。
 お医者さんたちが、その利点をまるっきり無視することは、なさそうな感じがするんですけど。
Dr.:
さすが江澤さん、今回もベスト・アンサーですね(笑)。
 300人くらいの耳鼻科医にアンケートを送ったんですけど、ね。
 回答のあった238人の耳鼻科医で、水泳を全面禁止としたのは、約3割の78回答だけだったんです。
An.:
へぇーっ。それじゃ中耳炎でも、水泳は問題ないと。それが耳鼻科医の、フツーの対応なんですね?
Dr.:
もちろんそれには、条件が附いていましてですね。
An.:
条件ですって?それは先生、何でしょう?
Dr.:
それは、水泳時の耳栓の使用と、スイミング・キャップの併用、なんですよ。
An.:
江澤は、水泳している子どもさんの、そんな姿を見かけたことがあります。
Dr.:
それがなぜ、滲出性中耳炎でチューブ挿入をしている子どもさんの、耳に良いのか。
 江澤さんなら、お判りですよね?
An.:
ええっと、先生少し待ってくださいよ。
 水泳で耳に水が入るのはぁ……。口から息を吸って鼻から吐いてやる呼吸で、うっかりプールの水を大量に吸い込むと、ですね。耳管を通った水が、中耳腔に流れこむためでしたよね?
Dr.:
それはストローで、グラスのジュースを吸い込むようなものですから。
An.:
そうそう、普段は鼓膜が邪魔して水は中耳腔まで流れこまないんでしたよね。
Dr.:
だけど、鼓膜にチューブが差し込まれていて、耳管がスースー通じていると……。
An.:
プールの水は簡単に、中耳腔まで無抵抗で流れこんじゃう。
Dr.:
そこで出口に耳栓をして、耳管の通りを邪魔してやると?
An.:
先生!プールの水は、中耳腔まで流れこまなくなっちゃいます!
Dr.:
さすが、1を聞いて10を知る江澤さん!耳栓が、きちんと耳穴を閉鎖してくれるなら、水泳中にも水は中耳腔に入り込まず、中耳炎が悪化することもありません。
An.:
それで判りました。耳鼻科医の先生たちは、滲出性中耳炎で鼓膜にチューブが入っていても、スイミングは差し支えないと、そう判断してるわけですよね?
Dr.:
そのためには、耳栓が完全に耳穴を塞いでいなくっちゃあ、意味ありませんけどね。
An.:
それで、スイミング・キャップの併用が役立つんですね!
Dr.:
耳栓も完全な密閉型を使用して、その上にキャップでそれを被ってしまうなら、鼓膜にチューブが入ってても耳管は蓋をされた状態になります。
An.:
それで子どもさんたちは、あんなスタイルでスイミングするんですね。
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Dr.:
ただし、ここでお話しした完全密閉型の耳栓は、少し条件が難しいですよ。
An.:
先生、「完全」っいうのは、いつでもどこでも、やっぱり難しいような気がします。
Dr.:
理想を追求するなら、ね。江澤さん。  一人ひとり耳型をとって、耳栓を特注するのが一番なんですけどね。
 それができなきゃ、イヤー・パティって呼ばれる、シリコーン製の耳栓を使って頂けると、結構役立ちます。
An.:
そしてその上から、キャップをしっかり被るんでしたよね。
Dr.:
そうです。滲出性中耳炎で鼓膜にチューブが入っている子どもさんたちも、それでスイミングに打ち込んでもらうことができます。
An.:
良いことをお聞きしました、三好先生。
 江澤も、中耳炎の子どもさんたちに、存分に水泳を楽しんでもらいたいですから、ね。
Dr.:
耳栓っていえばね、江澤さん。笑い話のような実話がありまして。
An.:
事実は小説よりも奇なり、でしたものね。
Dr.:
インターハイの水泳大会が仙台で開催されたときに、選手として出場する高校生がですね。耳栓が手元になかったらしくって、ですね。チューインガムを耳に入れて、水泳大会に出たんですよ!
An.:
チューインガム?それで?
Dr.:
自分で取れなくなっちゃって、ですね。耳の中にガムを入れたまま、急病人扱いで当院を受診しまして、ね(笑)。
An.:
ガムは普通、口で噛むものですから、ね(笑)。耳で噛むのは、さすがの江澤にも、不可能です。
Dr.:
江澤さんにできないことが、一般の高校生にできるわけは、ありません(笑)。
 まぁ、無事にガムを耳から摘出することができましたから、ね。笑い話で済むんですけどね。
An.:
リスナーの皆様には、そんなエピソードもお聞き頂いて、二度と三好先生を困らせたりしないようにしてくださいね(笑)。
 三好先生、今回も暑い夏にふさわしい、おもしろい話題を有難うございました。
Dr.:
次回のお話しも、楽しみにしていてくださいね。

83話 私たちの疫学調査の意味

An.:
三好先生、学校健診のお話しシリーズということで、前回まで中耳炎のお話しを伺いました。急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎と解説して頂き、プールのシーズンでしたから、中耳炎でも水泳が大丈夫なのかどうか、子どもさんにとっても切実な話題をお聞きしました。
Dr.:
今回は学校健診シリーズの続きでして、鼻の病気のご説明です。
An.:
ハナ垂れ小僧さんは学校の成績の下がることも、ありそうですから。学校健診では、しっかり見つけてもらわなくっちゃあ。
Dr.:
と言いましても、学校健診では耳鼻科医が鼻の穴を鼻鏡という、機器を使用して覗き込むだけですから、精密診断はできません。健診の場では、おおよその見当をつけて耳鼻科医受診を勧めます。
An.:
でも三好先生のことですから、鼻の穴を覗き込んだだけでも……。
Dr.:
その子どもの、将来の運勢が判ったりして(笑)。
 手相も見てみれば、そこまで判っちゃうかもしれませんが、あいにく手相の学校健診は無いものですから。
An.:
手相や運勢は、見ないんですね(笑)?
 せっかく将来の大人物が、健診を受けた子どもさんたちの中にいるかも知れないのに。
#  
Dr.:
後で話題にしますけれども、ね。実は私たちの北海道白老町の学校健診では、腕の皮膚の状態も診てるんです。
An.:
先生はそれで子どもの運命が判っちゃうんですか?
Dr.:
いえいえ、それはアトピー性皮膚炎の健診なんですけどね。
 日本では、今のところ皮膚科の学校健診はやってないんですけど、ね。でもホントにアトピー性皮膚炎が増えたって、大騒ぎされるわりには、その実態を誰も知らないんです。
An.:
えっ、それは意外!江澤も、アトピーが増加しているってのは、聞いたことがあって。それは当然、それなりの調査が実施されて、裏付けのしっかりした事実なんだと思ってました。
Dr.:
それが実は、いわゆる「ジョーシキのウソ」ってやつでして。
An.:
まさか実際には、調査はなされていなかったなんてことは……?
Dr.:
そこがとっても重要なんです、江澤さん。私たちの、スギ花粉症などアレルギー性鼻炎に関する調査もそうだったんですけどね。
 ある種の病気の、その時代の、例えば日本人の頻度を知るためには、ホントは厳しい条件を満たした調査を、実行しなければいけないんですが……。
An.:
実際は、行なわれていない、とか?
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Dr.:
実は、こうした病気の動向は医療機関を受診した患者さんの傾向のみを見て、判断されることが多いんです。
 これまでお話しして来た、中耳炎やスギ花粉症の増減なんかも、病院などを訪れた人の診断名の変化を観察して、話題提供されることがほとんどなんです。
An.:
でもそれじゃ、病気の実態は良く判りませんよねぇ。
Dr.:
さすがは江澤さん。良いところに気がつきますね!
An.:
エヘヘ、それほどでも……。
Dr.:
江澤さん、例え話です。
 ある町の住民たちの食事の嗜好、つまり好き嫌いを知るためには、本当ならばその町全体のご家庭を訪問して、朝ご飯・昼飯・夕食とすべて、内容を聞き取り調査してまわらなきゃ、判りません。
An.:
それはそうですよね。
Dr.:
ところが、町にある食堂で待ち構えていて、そこに食事に来る住民の注文を観察するとします。
 その場合、注文はカレーが多いかラーメンが多いか、それを見ているだけでその町の住民の食事内容が、判断できるでしょうか?
An.:
そりゃ先生、ご家庭での普段の食事を見てなきゃ、そんなの判りませんよ。
Dr.:
病院など、医療機関も事情は同じです。
 病院で待ち受けていて、そこでの病名を調べただけじゃあ……。
An.:
そうか!住民の健康状態の実際は、それとは異なる可能性もありますね。
Dr.:
さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。そう!その通りなんですよ。
 病院を受診する患者さんは、なにか体に異変を感じてから、医者に行こうと思うわけですから。痛いとか痒いとか、そう思わなくっちゃ、医者に見せようなんて考えません。
 つまり自覚される前の病気の実態を、医者は誰も知らないってことになります。
An.:
先生、江澤もやっと、先生のおっしゃっていることの内容が理解できました。
 自覚症状のない、病院を受診することのない、一般住民の健康調査を実施しておかなければ、病気の全体像は把握できないってことですね!
Dr.:
江澤さんは、ご謙遜が過ぎますよ。それこそ、私たちの疫学調査の意味なんです。
 アトピー性皮膚炎についても、病院へ来ない普通の子どもさんたちの皮膚を観察しなくっちゃ。アトピーが増えたかどうかなんて、判りゃしません!
An.:
でもそれは、現実にはとっても難しいってことでしょうか?
Dr.:
私たちがこれまで努力して来たのは、そうした病気の頻度を何年も観察して、実際のところ病気の頻度はどうなのか、増えたのか・減ったのか・その原因は何か、それを知るためなんです。
An.:
判りました、三好先生。先生がこれまでやって来られたことの、重さと難しさを。
Dr.:
まあそんなことをしながら私たちは、スギ花粉症などアレルギー性鼻炎の実情を、論文にして来たんです。
An.:
この番組では、その結果もお伺いできるんですね?
Dr.:
本日は時間切れですが、お話しの中でご説明して行きます。
An.:
次回が、江澤は毎回、とっても楽しみで堪りません!