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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

~花粉症発祥地の治療体制とは~

耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」。三好彰院長は、30年余り、耳鼻咽喉の診療に携わる。今回は、5月にfmいずみで放送された内容を紹介する。
An.…江澤アナウンサー、 Dr.…三好院長]

テムズ川を泳ぐコレラ菌 テムズ川を泳ぐコレラ菌
An.:
三好先生、英国は花粉症発祥の地ということで、きっと日本よりも花粉症対策が優れているんでしょうね。
Dr.:
英国は家庭医制度、いわゆるGeneral Practitioner(GP)のシステムが発達していて、全国民がこうした一般医に診てもらうのは無料なんです。
An.:
それなら、花粉症もたちまち治してくれそうですね。
Dr.:
ところが、事実は小説よりも奇なりという言葉が、ここでも当てはまります。GPは、地域住民の健康管理の全てを把握しています。しかし住民が、風邪といった一般的な病気で体調を崩すと、ごく弱い薬を処方して終わり。感染病といった手のかかる病気なら、すぐに専門医を紹介し、予約することになります。
An.:
効き目の強い薬を処方しないのには何か理由があるんでしょうか?
Dr.:
それには疫学調査が関係しています。
An.:
確か、病気の発症の頻度や広がり方で、発生原因を突き止めていく学問のことですよね。
Dr.:
その通りです。そしてこの疫学調査が世界で初めて行われたのが、英国を代表するテムズ川で大流行したコレラに対してでした。当時、ロンドン市民は生活排水も流されるテムズ川の水を飲んでいました。1832年から1849年ごろの話です。
An.:
ドイツのローベルト・コッホがコレラ菌を発見したのが1880年ですよね。ということは、ロンドン市民の場合、原因がコレラ菌とは分かっていなかったはずですね。
Dr.:
しかし、ロンドン市民はテムズ川の水を飲むのは危険と考え、飲用水を採取する場合は生活排水が流入する場所よりはるか上流から、上水道として別のルートで確保することに決めたんです。それにより、コレラの流行は激減しました。
An.:
日本医学のルーツ、ドイツ医学では、原因と結果との関係を明確に証明し、それから治療方針を決定しようとします。
Dr.:
それに対して英国で発展した、より実際的ともいえる疫学的発想の医学では、原因追求と並行して危険因子の除去をまず行います。それでも治療効果が現れない場合、感染症でも花粉症などのアレルギーでも、専門医の予約となるんです。
An.:
それはすごく合理的ですね。
Dr.:
しかし、ひどい感染症だと専門医の予約は少なくとも半年待ちとなります。その間は風邪薬と「お大事に」の言葉だけ。どんなに必要でも、速効性のある抗生物質といった有効な薬をGPは処方してくれません。
An.:
ということは、英国発祥のカモガヤ花粉症も?
Dr.:
耳鼻咽喉科専門医自体が極端に少ないものですから、予約診療となると半年先も厳しいかもしれませんね。
An.:
花粉症発現の地なのに、その恩恵を受けていないように感じますね。
Dr.:
逆にいえば、日本にお住まいのスギ花粉症の方は、自分たちがどんなに恵まれた医学環境に囲まれているのかをご存じではありません。日本は英国とは異なり、かゆいところに手の届くような医療が成されていますからね。

子どもがなりやすい花粉症

An.:
先生、スギ花粉症は例年4月半ばで収束しますが、5月以降に注意したい花粉症も、もちろんあるんですよね?
Dr.:
はい。5~7月には、これまで延々と話してきたナポレオン戦争の結実ともいえるカモガヤ花粉症が、シーズンを迎えます。
An.:
復習になりますが、カモガヤについて教えてください。
Dr.:
高さ数10㎝のイネ科の雑草です。道端や川沿いなどに生え、fmいずみから七北田川に向かって歩くとたくさん伸びているので、すぐに分かりますよ。
An.:
あれですか。子どもの背丈くらいある雑草ですよね。
Dr.:
一般的に、子どもは花粉症になりにくいといわれていますが、カモガヤ花粉症は子どもにもよく見られます。
An.:
子どもは花粉症にならないといわれているんですか?
 ダニやハウスダストによるアレルギーは、子どもでも少なくないのに。
Dr.:
花粉症などのアレルギー疾患は、抗原抗体反応といって…。
An.:
アレルギーの原因物質に対する過敏反応のことですね。
Dr.:
さすが1を聞いて10を知る江澤さん。その通りです。それでは抗原の多い、もしくは抗原にさらされる時間の長い方と、少ない、もしくは時間の短い方とでは、どちらが花粉症になりやすいでしょう?
An.:
前者ですか?
Dr.:
そうです。ハウスダストは、年中そこいら中にありますが、スギ花粉症でいえば1年のうち2カ月程度しか発生しませんよね。
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An.:
なるほど。それで子どもは花粉症になりにくいんですね。しかし、カモガヤは子どものすぐ近くにあるので予防策が必要。近寄らず、吸い込まないというのが大切ですね。
Dr.:
そういえば、今となっては笑い話なんですがカモガヤ花粉症のシーズンに、犬の散歩をすると鼻が変になると話す方がいました。
An.:
まさか犬のせいだと思っていたとか!?
Dr.:
犬を手放そうかと真剣に悩んでいました。真相をご説明して愛犬は無事でした(笑)
An.:
勘違いしていらっしゃったんですね。先生、きょうも楽しいお話をありがとうございました。
Dr.:
花粉症のお話は、ひとまず終了です。次回からは新シリーズをお届けします。お楽しみに。