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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

三好耳鼻咽喉科クリニック開院20周年特別企画~難聴児問題の昔と今3~三好 彰

 ここでは引き続き、院長が1975年、岩手医大在学中に作成した「難聴児の社会保障」というレポートをご紹介いたします。

「難聴児の社会保障(3)」

考 案 Ⅲ

 緒論において述べた様に、難聴児を持った親がどこの役所へ行けば何をしてもらえるのか、実はこれらの役所をまわってみても、最初のうちは我々にもさっぱり判らなかった。その理由としてはなによりも、役所同士がお互いに何をしているほか良く知らないということが挙げられる。「その問題はあの役所で扱っているのではないでしょうか。」「その様な障害者は、あの役所に行っているんじゃないでしょうか」といった返答が各役所で聞かれたのも、それを裏付けている様に思う。

 児童相談所で話を聞いたときにも、上記の様なことが問題点として挙げられていたが、もう1つ、担当者の話の中で問題となると思われた事項に、住民の声が直接役所に届いてこない。ということがあった。つまり、組織化された声として(どれだけ多くの人が、何を望んでいるのかが明らかになる)住民の意思が伝えられることがなく、役所側としても何をしたら良いのかよく判らないので困っている、それが判ればそれなりのことはする、というのである。そしてこういった仕事(福祉など)については全て役所にまかせるというのではなく、できるだけ積極的に障害者や住民が参加して欲しいし、その為にも役所への要望が組織化されたものであっていて欲しい、ということであったわけだが、仙台のヒアリングセンターが実際にそういういう過程によって成立して来た(くわしくは後述)だけにこの問題は特に盛岡において重要であると考えられる。

 ところで、この児童相談所では難聴児は余り来所しないといっていたが、実際に幾つかの症例について話を聞いてみた限りでは、難聴児と判ってから児童相談所へ行くよりは、言葉がないことから、知能面での遅れを心配されて児童相談所へ行き、色々と検査を受けているうちに、他の病院等で難聴児判定されることが多い様である。現在のところ難聴児の為の検査機器がほとんどない児童相談所では正確な判断は難しいのであろう。

 なお、近いうちにEEGオージオメーター(脳波オージオメーター)を購入する予定になっているという。

 補聴器の交付に関する権限は、全面的に福祉事務所にある。前述の様な機序で手帳が交付されると、福祉事務所に申請して補聴器をもらうことができるわけだが、この際全額公費負担になるわけではなく、その世帯の収入額によってある程度は私費になる。これについては表Ⅱを参照して欲しい。

開院20周年記念講演会の様子

開院20周年記念講演会の様子

 県庁児童婦人課では、福祉事務所から送られて来た資料に従って手帳の交付を決定している。この決定は文字通り書類に従ったもので、難聴の型(計算すれば聴力損失は60dBに達しないが、特に傾斜が激しくて会話がほとんど不可能になる型があることはオーディオグラムⅠ並びに平均聴力損失算出法から、容易に想像のつくところである)は全く考慮されない。難聴に対する専門的知識もない公務員に、そこまで考慮してくれることを要求するのは無理なのかも知れないが、聴力検査をする側はそういった事情を知らずに(役所側では、細かい配慮は病院でしてくれているものと思っているし、病院側では役所側で考えてくれているものと信じ込んでいる)書式に従ってオーディオグラムを書いてやっているだけなので、このままでは先に述べた様な型の難聴児はそれこそ永遠に手帳の交付を受けられないことになってしまう。この様な状況を解決する為には、役所側に十分な知識を持った専門家をおくことも大切だが、役所側では病院側がそれなりのアドバイスをしてくれるなら考慮できるとも言っているのだから、まず検査する病院がそういった事情をよく考えて、適切なアドバイスをすれば良いのではないだろうか。

 ケースワーカーを我々がのぞいてみたのは、今まで述べた様に、患者、病院、役所の3者を結びつけるものがあまりにも少ない、そんな状況を少しでも改善し、何も知らない患者の便宜をはかってやることがケースワーカーにはできるのではないかと考えたためである。そして、結論から先に言ってしまえば、ケースワーカーが実際にそれだけの機能を有していたにもかかわらず、その存在が余り知られていなかった為に手続きを繁雑にしていた面は確かにあったのである。例えば手帳交付申請書に障害の程度等の診断を記入してくれる病院でその書類を備えつけていない為に、患者としては病院(難聴の診断)→役所(書類をもらう)→病院(書類に記入)→役所(申請)と完全な二度手間であったのを、病院内のケースワーカーで書類をもらう(ケースワーカーには備えつけてある)ことによって、ほとんどの手続きを病院内ですませることができ、極めて簡単に申請をすることができる、などということもあるのである。そればかりではなく、難聴児に対する社会保障の説明、申請の方法の説明、担当する役所についての説明、自己負担金の徴収額の説明等はケースワーカーでうけることができる。

 問題は、我々がケースワーカーの内容を知らなかった様に、医者や患者がケースワーカーの存在そのものを知らない(医大の関係者なら知っているだろうが)ことである。特に医者は、患者がどんな点で困っているのかよく知らない為に、ケースワーカーの必然性そのものにうといということもある。

 そこで我々は、ケースワーカーのパンフレットを桜城小「きこえの教室」並びに「ことばの教室」のPTA会場でケースワーカーの担当者にケースワーカーの内容について説明してもらい、患者側からのケースワーカーの利用を活発にしてもらうことにしてきた。それと供に、医大耳鼻科の村井先生にお話しして、医大で難聴と診断された場合(特に保障の適用を受ける資格のある場合)には、ケースワーカーで書類をもらって来る様、指導していただくことにした。ただでさえ忙しいケースワーカーがさらにいそがしくなってしまうのを見るのは心苦しいが、実際にケースワーカーを利用すれば、患者にとってはずいぶん便利になるだけに、その利用がさらにふえる様になれば、医大側もケースワーカーの増員を考えるだろうと、今はいささか楽観的に考えることにしている。

:盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律施行令
(経緯の範囲及び算定基準)

第1条 :都道府県が、盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律(以下「法」という)。

第2条 :第1項の規定によりその全部又は一部を支弁すべき経緯の範囲及びその算定基準は、次の各号に揚げる経費について、それぞれ当該各号に揚げるところによる。

1.教科用図書の購入費
 学校の種類別及び学年別に文部省令で定める教科ごと各一種類の教科用図書の価額。ただし、特定の教科については、文部省令で定めるところにより、二以上の種類の教科用図書の価額。
2.学校給食費
 学校給食法(昭和29年法律第160号)第6条第2項に規定する学校給食費又は、盲学校、聾学校及び養護学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律(昭和32年法律第118号)第2条に規定する学校給食に要する経費で同法第5条第1項に規定する経費以外のものの額
3.通学に要する交通費
 児童又は生徒が、最も経済的な通常の経路及び方法により通学する場合の交通費の額
4.帰省に要する交通費
 学校附設の寄宿舎に居住する児童又は生徒が、年3回以内、最も経済的な通常の経路及び方法により帰省する場合の往復の交通費の額
5.付添人の付添に要する交通費
 学校附設の寄宿舎に居住する児童又は生徒が、年3回以内帰省する場合及び小学部第1学年から第3学年までに在学する児童が通学する場合に要する付添人の最も経済的な通常の経路及び方法による付添人の交通費の額
6.学校附設の寄宿舎居住に伴う経費
 寝具その他文部省令で定める日用品等の購入及び文部省令で定める範囲の食費の額
7.修学旅行費
 児童又は生徒が、小学部、中学部又は高等部を通じてそれぞれ一回参加する修学旅行に要する経費のうち、修学旅行に直接必要な交通費、宿泊費及び見学料の額
8.学用品の購入費
 児童又は生徒が通常必要とする学用品の購入費の額

(後略)

B.盛岡における難聴児症例並びに問題点

a.問題点

 我々が最初に各施設をまわった際に、現在どんな問題点があるのか挙げてもらった。 ここではどの施設でどんな問題点を挙げてくれてか列挙して、考察を加えてみたい。

i)補聴器センターにて

ⅱ)桜城小「きこえの教室」にて

ⅲ)聾学校にて

仙台経済圏の情報誌『仙台経済界9-10月号』に、開院20周年記念行事の記事が掲載されました

難聴児をテーマに20周年記念行事開催
三好耳鼻咽喉科クリニック

 三好耳鼻咽喉科クリニック(仙台市泉区 三好彰院長)は今年開院20周年を向かえ、これを記念して6月20日にパレス平安(青葉区)にて講演会と絵本『かっぱの太ちゃん』出版記念パーティーを開催した。

 三好院長が「今回のテーマは難聴児教育です。耳鼻科医としては耳の機能に関心を持つことが多いですが、本当に重要なのは、その人が持って生まれた使命を全うして生きることができるかどうかだと思います」とあいさつ。

 第一部では、田中美郷帝京大学名誉教授が「もしも、あなたに耳の不自由な子どもが生まれたら・・・」と題して講演した。田中氏は難聴が思考力、コミュニケーション力としての言語を獲得する重要性を強調、手話や読み書きなど、親が積極的にホームトレーニングを行なうことで子どもの可能性を育むよう導いていこうと呼び掛けた。

 第二部は、先天性難聴の北野太造氏が三好院長の指導により成長していった様子を描いた絵本の出版記念パーティー。青年となった北野氏が家族とともに三好院長に感謝の言葉を述べ、大きな拍手が沸き起こった。来賓として秋葉賢也衆議院議員、三邉武幸昭和大学藤が丘病院副院長が祝辞を述べた。

『仙台経済界』2012年9月~10月号より転載

『仙台経済界』2012年9月~10月号より転載
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