3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

~シリーズ 学校健診その5~

~シリーズ 学校健診その5~

 耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」。三好彰院長は、30年余り、耳鼻咽喉の診療に携わる。今回は、昨年8月にfmいずみで放送された内容を紹介する。

An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

#
An.:
前回は滲(しん)出性中耳炎で鼓膜に換気するためのチューブが入っていると、プールで泳ぐときに中耳腔に水が入ってしまうと伺いました。それだと学校の授業で水泳のある子どもたちは困るのではないでしょうか。
Dr.:
その点について、全国の耳鼻科医がどう考えているのか約300人にアンケートを取った結果、水泳を全面禁止にしたのは3割ほどでした。
An.:
へぇ~。それでは中耳炎でも泳ぐのは問題ないという見解が普通なんですね。
Dr.:
ただし、水泳時の耳栓の使用とスイミングキャップの併用が条件です。
An.:
普通は鼓膜が邪魔して水は中耳腔まで流れ込まないんでしたよね。
Dr.:
鼓膜にチューブが差し込まれていると…。
An.:
プールの水は簡単に中耳腔まで流れ込んでしまう。
Dr.:
そこで耳栓をして、耳管の通りを邪魔すると…。
An.:
プールの水は、中耳腔まで流れ込まなくなります。
Dr.:
耳栓がきちんと耳の穴を閉鎖してくれるので、水泳中は水が中耳腔に入り込まず、中耳炎が悪化することもありません。
An.:
分かりました。耳鼻科医は滲出性中耳炎で鼓膜にチューブが入っていても、水泳には差し支えないと判断しているんですね。
Dr.:
耳栓が完全に耳の穴をふさいでいないと意味がありませんけれど。
An.:
それで、スイミングキャップが役立つんですね。
Dr.:
完全に密閉できる耳栓を使用し、さらにスイミングキャップで覆うと、鼓膜にチューブが入っていても耳管はふたをされた状態になります。ただし、完全に密閉する耳栓は、条件が少し難しいです。
An.:
「完全」というのは、やはり難しいような気がします。
Dr.:
理想を追求するなら一人一人の耳型を取り、耳栓を特注するのが一番なんですが。それかイヤー・パティというシリコーン製の耳栓を使うといいです。
An.:
中耳炎の子どもにも、水泳を楽しんでもらいたいですからね。

調査の実態

白老町 学校健診 白老町 学校健診
Dr.:
今回は学校健診シリーズの続きで鼻の病気を説明します。学校健診では、耳鼻科医が鼻の穴を鼻鏡という器具を使用してのぞくだけですから精密診断はできません。健診では、おおよその見当をつけて耳鼻科医の受診を勧めます。
An.:
でも先生のことですから、鼻の穴をのぞき込んだだけでも…。
Dr.:
その子の将来の運勢が分かったりして(笑)。
An.:
手相や運勢は見ないんですね。せっかく将来の大物がいるかもしれないのに。
Dr.:
ところで北海道白老町の学校健診では、腕の皮膚の状態を診てアトピー性皮膚炎かどうか健診しています。日本では、今のところ皮膚科の学校健診は行っていません。アトピー性皮膚炎が増えたといわれますが、その実態を誰も知らないんです。
An.:
それは意外。それなりの調査と裏付けを取っていると思っていました。
Dr.:
そこが重要です。こうした病気の動向は、実は医療機関を受診した患者さんの傾向を見て、判断されることが多いんです。中耳炎やスギ花粉症の増減も、病院を訪れた人の診断を観察し、その情報が提供されるのがほとんどです。
An.:
それでは病気の実態は、よく分かりませんね。
Dr.:
江澤さん、例え話です。ある町の住民たちの食事の趣向を知るためには、本当なら各家庭を訪問して全ての食事内容を聞き取り調査しないといけません。
An.:
それはそうですよね。
Dr.:
町の食堂で、そこに食事に来る住民の注文を観察するとします。その場合、注文はカレーが多いかラーメンが多いか、見ているだけで住民の食事の趣向が分かりますか。
An.:
そりゃ先生、家庭での普段の食事を見ていないと分かりません。
Dr.:
医療機関の事情も同じです。病院でそこで病名を調べただけでは…。
An.:
住民の健康状態は、実際の内容は異なる可能性もありますね。
Dr.:
そうです。病院を受診する患者さんは、何か体に異変を感じてから医者に行こうと思います。つまり、自覚される前の病気の実態を医者は誰も知らないことになります。アトピー性皮膚炎も、病院へ来ない子どもの皮膚を観察しないとアトピーが増えたかどうか分かりません。
鼻の中を診て(左)アトピーもチェックします(右) 手相は見ません 鼻の中を診て(左)アトピーもチェックします(右) 手相は見ません
An.:
でも現実的に難しいのでしょうか。
Dr.:
私たちがこれまで努力してきたのは、そうした病気の頻度を何年も観察し、原因を知ることです。そんなことをしながら、私たちはスギ花粉症などのアレルギー性鼻炎の実情を論文にしてきました。
An.:
その結果も次回、お伺いできるんですね。とても楽しみです。
#