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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

ラジオ3443通信 学校健診特集10 雲南の旅

106話 日本住宅の歴史

シーサパンナのタイ族の高床式住宅 シーサパンナのタイ族の高床式住宅
An.:
三好先生、前回は雲南省西双版納地域の住宅が、奈良の正倉院を連想させること。高床式住宅の建て方が、日本の在来工法と呼ばれる建築様式の基礎になっていること。そういったお話を伺いました。この在来工法の住宅は、温度と湿度の高い亜熱帯気候の風土に根付いていた工法で、外気の通り抜け易い家屋構造が特徴だとか。
Dr.:
江澤さん。江澤さんは「徒然草」って書物のことを、憶えていますか?
An.:
先生、もちろん憶えています。高校の古文の授業で、暗記させられましたもの。
Dr.:
そうそう。「つれづれなるままに、日ぐらし硯に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば。あやしうこそ物狂ほしけれ。」
 この出だしは、江澤さんお得意ですよね。
An.:
三好先生、江澤は授業で、この「徒然草」は清少納言の「枕草子」や鴨長明の「方丈記」と併せて、日本3大随筆の一つと呼ばれるって、聞きました。
Dr.:
さすがは江澤さん。今日もエンジン全開ですねぇ(笑)。
 その徒然草の第55段にですね、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。」という、1節があるんですよ。
An.:
先生、それ未だ憶えてます。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、耐へ難き事なり。」 わぁ。江澤は高校の授業風景まで、思い出してしまいました。
Dr.:
これを書いた吉田兼行、いわゆる兼行法師が住んでいたのは京都です。
 私は、京都大学大学院の非常勤講師を勤めていたこともあって、京都の気候は知ってますが、あそこは盆地ですので、夏はすごく暑いんです。
An.:
中国の3大ストーブ・シティ、みたいな感じでしょうか?
Dr.:
それを和風にしたような、そんな感覚ですね。
 いずれにしても夏は蒸し暑く、冬は寒いんです。
 そんな夏の一夜を過ごすために、市民は京都市内を流れる鴨川に、納涼のための座席を作りまして。川床とか納涼床とか呼ばれるんですけど、そこで酒を酌み交わすんです。
An.:
まぁステキ! 江澤も一度、夏の京都で夕涼みをしてみたいです。
Dr.:
でもあれは実際には狭くって、隣の客とひざを突き合わせながら、蒸し暑い中で酒を呑むので……。風流ではありますけども、少し窮屈な思いもしますよね。
 とはいえ、夏の京都を涼しく過ごすための工夫として、やっぱり体験する価値はあると思います。
An.:
兼行法師が指摘したように、京都の住まいは夏を快適に、という目的で考えられているんでしょうか。
Dr.:
基本的には、源氏物語以来の住居とその思想は共通していまして。家屋は風が通り抜け易いように、できています。
An.:
それが、亜熱帯気候の住宅の特徴なんですね?
Dr.:
外気が通り抜けるものですから、夏は快適ですが冬はとっても……。
An.:
寒そうですねぇ。
Dr.:
伝統的な日本の暖房はホラ、火鉢とか、1ケ所のみをちょっと暖めるだけですので。冬の京都では、寒かったみたいです。
 今でも記録に残っている京都の冬の過ごし方では、江澤さんのようなレディの前でお話しするのは、はばかられますが……(笑)。 火鉢の上に跨がって下半身を暖めるとか、それが当時の「戯画」つまりマンガで記録に残されているんですよ(笑)。
An.:
マンガですか!
Dr.:
で、開放型住宅と呼ばれるその住宅の作り方が、「在来工法住宅」つまり床を作り柱を立て、屋根を載せてそれから「ハンギング・ウォール」と称するんですけど。つまり源氏物語時代の「御簾」、まぁカーテンみたいな感じの壁を作るんです。
An.:
在来工法住宅の壁は、亜熱帯気候の住宅のカーテンの名残なんですね?
Dr.:
日本の都は基本的に、京都が中心でしたから。洗練されたライフ・スタイルは、京都風がいちばんと信じられていました。
 ですから、地方でも住環境は京都に似たものとなりがちです。
An.:
在来工法の開放型住宅が日本中にあるのは、そのためなんですね?
Dr.:
ですがこの夏向きのしゃれた住まいは、例えば仙台のような冬のつらい地域には向いていません。
 暖房も火鉢だけでは、ちょっとつらいものがあります。
An.:
仙台市ですらそうなんですから、もっと北では、なおさらですよね?
Dr.:
戦前のサハリンつまり樺太では、それでも日本人はこうした開放型住宅に住み、外から冷たい外気が入り込む環境で、焚火にあたりながら震えて冬を過ごしたそうです。
An.:
それは寒そう!
Dr.:
ですから現地のロシア人たちからは、日本人が一冬の間に焚く薪の量で、1軒の家が建ってしまうって、とっても笑われたんですって。
An.:
ということは、ロシア人の家屋の構造は、日本人の開放型住宅とは大分違うんですね?
Dr.:
さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。ロシアや樺太のロシア人住宅は、ログ・キャビンと称して丸太木組みの頑丈な家屋です。この住宅は冷たい外気を弾く構造になっていて、どんな冬でも寒くないようにできています。
An.:
ログ・キャビンの家なんですね。暖かそうですね。なんだか江澤もそのことばの響きに、憧れっちゃいますぅ。
Dr.:
次回は、南方の亜熱帯気候に適した住宅である開放型住宅と、ロシアのような北方に最適なログ・キャビンの家について、お話しします。
Dr.・
An.:
ありがとうございました。
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107話 日本とロシアの住宅事情

ロシアのログ・キャビン ロシアのログ・キャビン
An.:
三好先生、前回は雲南省の調査旅行のお話から、高床式住宅・正倉院とお話が進み、日本の住宅の在来工法と呼ばれる開放型住宅の特徴と、ロシアなど北方の寒い大地に適したログ・キャビン型住宅について、教えて頂きました。  本日のお話はどんな話題になるんでしょうか? 楽しみです。
Dr.:
江澤さん、私が子どもの頃住んでいた家も典型的な在来工法、つまり開放型住宅だったんです。
 毎年年末になると、大掃除をするんですけれど。障子の張り替えをしたりして、ですね。そうそう、江澤さんは、障子の張り替えって、憶えていますか?張り替える前に、子どもたちが古い障子の紙に思いっきり穴を開けて遊んだりして。
An.:
障子の張り替え。ありましたねぇ。
 どうせ新しい障子に張り替えるんですから、子どもたちが好きなように穴を開けたりして……。
Dr.:
普段は障子に穴を開けたりすると、ひどく怒られるんですけど。その日だけは、勝手に穴を開けても良いんですからね。
 日頃の反動みたいな気分で、たくさん穴を開けました。
An.:
で、障子を新しいのに張り替えて、と。
Dr.:
大掃除ですから、畳も替えるんですけど、ね、江澤さん。畳を上げると、その下に何がありましたっけ?
An.:
ええっと、たしか古新聞が敷いてあって。そうそう、ついついその古新聞に読み耽ってしまって、掃除の手が止まっちゃうんですよ。
Dr.:
私もですね。古新聞の「サザエさん」なんかに目を取られまして、ですね。
 江澤さん。話を戻しましょう(笑)。
An.:
先生も、サザエさんがお好きだったんですね(笑)。
Dr.:
畳を上げますと、ですね。古新聞が敷いてあって、それをめくると木の床がありました。その木の床は、密着していなくって隙間があるものですから。年末の寒い時期の冷たい空気が、「あら床」と呼ばれるその木製の床の下から、ひゅうひゅう吹き込んでいたことを思い出します。
An.:
ってことは。床下は、空気がすうすう通っていたんでしょうよね?
Dr.:
あら床の隙間からは、地面が見えていましたものねぇ。
 で、その床下の空間は家全体の支えとなっている太い柱の間で、広いスペースがあって。ときどきネコが入り込んで、鳴き声が聞こえたりして。
An.:
お話を伺いますと、そういった日本式の開放型住宅は、いかにも家の中全体を風が吹き抜け易いようにできていたことが判ります。
Dr.:
つまり、雲南省なんかの高床式住宅に共通する、夏を過ごし易い家の典型なんです。
 ただ、そういう家は冬でも外気が吹き抜けて、お茶の間にいてもすごく寒かった記憶があります。
An.:
ストーブを焚いても、部屋が暖まらないんですね?
Dr.:
ですから、私の家のお茶の間には掘りごたつがありまして。ストーブでは寒いので、家族全員がその掘りごたつに集まるんです。
An.:
光景が、目に浮かびます(笑)。
Dr.:
春になってそのこたつを片付けると、こたつの形添いにみかんやお菓子が並んでいて……(笑)。
An.:
人間がそこに住み着いていたことが、判っちゃう?
Dr.:
つまり古代の遺跡みたいなもので(笑)。
An.:
それが高床式住宅に通じる、日本の南方型の開放型住宅なんですね?
Dr.:
でその建て方が、そのまま伝統的に受け継がれているのがね、在来工法と呼ばれる家屋なんです。
An.:
北方型のロシア式建築は、それとはかなり異なるんでしょうね?
Dr.:
ログ・キャビンとご説明しましたけれど。ロシア等の北方型住宅は、冷たい大地の上にそびえ立っている大木を切り倒して、横に木組みをして。先ず壁を作るんです。
An.:
在来工法はたしか、柱を立て床を作り、屋根を乗せてから、ハンギング・ウォールと呼ばれる壁を作るんでした。
Dr.:
ですから在来工法の家は、別名「柱で建てる家」と表現されるんです。
An.:
その言い方ですとロシア式の家は……。
Dr.:
そう! 「壁で建てる家」と表現できます。それを現在では、いかにもしゃれた呼び方で「ツー・バイ・フォーの家」と言ってるんです。
An.:
それ、聞いたことがあります(笑)。
Dr.:
この北方型住宅は密閉式ですので、昔の私の家のように、真冬に家中を冷たい外気が吹き抜ける、なんて悲惨なことはありません(笑)。
An.:
それなら、暖房も効きそうですね。
Dr.:
ただし住まいには、その方式によって住むためのルールが異なってきます。
 南方型住宅つまり高床式住宅にはそれ向きの住み方があり、北方式つまりロシア型と言いましょうか「ツー・バイ・フォー」の家にも、住むための知恵があります。
An.:
そこに住む人間が、健康に生活を楽しむためのルールなんでしょうね。
Dr.:
これは後ほど詳しくご説明しますが、現代病とも言えるアレルギー疾患が増加した背景に、この住宅と生活習慣の齟齬が存在するんです。
An.:
先生、そんなことがあったんですね! 江澤はちっとも知りませんでした。
 人間が健康に生活を楽しむための、住宅に適応した住まいのルール、ぜひとも江澤に教えてください。
Dr.:
本日は時間がきてしまいました。
 まだまだ続くお話の中で、江澤さんにはご説明しましょう。お楽しみに!
Dr.・
An.:
ありがとうございました。
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