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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

第42回 平衡機能検査技術講習会レポート 今井 尚子

看護課の千姫 今井 尚子 看護課の千姫 今井 尚子

 2012年7月10日(火)~14日(土)の5日間、日本めまい平衡医学会主催の第42回平衡機能検査技術講習会に参加させていただきました。
 今年は近畿大学医学部が担当とのことで、大阪での開催となりました。
 大阪の夏は、暑いと聞いており覚悟はしていたのですが、毎日30度を超える外気温。まだ涼しかった仙台とは大違いで、本当に真夏を感じた5日間となりました。

 研修は講義と実習で、平衡機能に関する知識と技術を学んできました。実習では検査を受ける側も経験させていただきました。
 それでは講習会で学んできたことをご紹介します。

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1.平衡機能とは

 私たちは普段意識せずに安全に起き上がり、安定して立ち、転ぶことなく円滑に歩くことができています。なぜこのような動作ができるのかというと、重力に対する自分の位置をとらえ、重力とのずれを感じ、元の位置に戻そうとする体内センサーが働いているからです。この身体のバランスを保つ仕組みを平衡機能といいます。

 この姿勢保持を司る体内センサーは、視覚・内耳・体性感覚の3つになります。視覚は周囲の景色と自分の姿勢を合わせ、動きや傾きの比較をしています。内耳は頭の動きや傾きを感じ取っています。体性感覚とは筋肉や腱、深部知覚のことで、筋肉の伸縮や足底面の圧力で動きや傾きの変化を感じ取っています。このなかでは視覚からの情報が最も優先されます。

 これらの感覚情報が合わさり正確に脳や脊髄に伝えられ、指令が各器官に伝えられることで反射的、または意識的に姿勢を保持することができているのです。
 では内耳はどのように頭の位置を感じ取っているのでしょうか。

2.内耳の構造について

(図1) (図1)

 耳は外耳、中耳、内耳の3つに大きく分けられます(図1)。この中で内耳が平衡感覚に関わります。

 内耳は前方の蝸牛とその後方の前庭部分に分かれ、蝸牛が聴覚を、前庭部分が平衡(バランス)を司っています。この2つは隣接しているため、平衡機能と聴力は密接に関わってきます。

・前 庭

 前庭は三半規管と耳石器という器官からなり、どちらも内耳液(リンパ液)で満たされています。三半規管が頭の回転を、耳石器が直線の動きを感じ取っています。

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・三半規管

(図2) (図2)

 三半規管(図2)はその名の通り3つの半円状の管からなり、互いに垂直に位置しています。その位置によって外側(水平)半規管、前半規管、後半規管と呼ばれています。各半規管内には膨大部と呼ばれる部分があり、この中の膨大部稜という部分に毛の生えた感覚細胞が存在します。この感覚毛はクプラというゼラチン状の物質でまとまり膨大部内を横切って反対側に接しています。頭が動くと内耳液も動きクプラが傾きます。これによって感覚細胞が刺激され各方向の回転を感じます。

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・耳石器

 耳石器は、主に左右の直線の動きを感知する卵形嚢と、前後・上下の直線の動きを感知している球形嚢と呼ばれる器官で構成されています。エレベーターなどで感じる重力は、後者の球形嚢が関係しています。耳石器も毛の生えた感覚細胞で構成されていて、感覚毛の上に耳石(平衡砂)がくっついています。耳石は炭酸カルシウムの小粒子からなります。頭の動きにより粒子がずれることで、耳石器の感覚毛が刺激され各方向の直線の動きを感じます。

 内耳は堅い側頭骨の内側にあり直接みることができないため、なかなか分かりづらいのですが、これらの感覚情報が前庭神経から小脳や大脳に伝わり、頭の動きや傾きを把握することができているのです。またこの情報は眼筋の運動核や迷走神経核など各神経核へも伝えられます。このため眼球運動や自律神経とも密接に関わってきます。

3.眼球運動について

 頭や身体の動きなどによって内耳が刺激されると、内部では内耳液が動き(内リンパ流動)、感覚細胞を刺激します。その刺激情報が脳から眼筋に伝わることにより、神経反射によって眼球が動きます。例えば頭を左に動かすと眼球は右に、頭を右に動かすと眼球は左に動きます。これを前庭動眼反射といいます。その後眼球を正面に戻そうとする動きをします。これはものを見るとき、眼の中心で物体を正確に捉えようとするための動きとなります。

 この一連の働きにより、私たちは動いている中でも視点を定め、横や正面の一点を見つめることができています。また視線を他のものへと移すこともできるのです。
 通常は刺激がなくなるとこの眼球運動は治まります。また刺激のない場合、運動は起こりません。

 疾患などによって伝達経路などが障害されるとこの運動が治まらず眼球が動揺したままとなります。これを眼振といいます。このため視点が定まらずめまいを感じることになります。

 病気ではないめまいもあります。人の体内センサーは日常生活のある程度の刺激に対しては対応できるようになっているのですが、体をぐるぐる回されたり、強く揺らされたりすると、その過剰な刺激が内耳に伝わり眼球の動揺が治まらず眼振を起こします。この為めまいを感じることになります。また、この刺激情報は自律神経にも伝えられるため、汗が出てきたり、吐き気などの気持ち悪さも感じたりします。遊園地の乗り物やアトラクションなどで経験したことがある方もいるのではないでしょうか。

4.めまい疾患の種類

 めまいは脳が原因のめまい(中枢性めまい)と内耳が原因のめまい(末梢性めまい)に大きく分けることができます。その他、低血糖や起立性低血圧、循環器疾患など全身状態が原因のものもあります。

 めまいの感覚としては、フラフラする、立ちくらみがする、フワフワした浮遊感、気が遠くなるような感じ、頭がグルグル回る、立っていられない、など色々あります。例外はありますが、回転性のめまいは末梢性に多いといわれています。

(1).末梢性めまい

(図3) (図3)
(図4) (図4)
(図5) (図5)
(図6) (図6)

 内耳、前庭神経が原因で起こるめまいのことを末梢性めまいといいます。前庭と蝸牛は隣接しているため、疾患によっては共に障害され聴力の低下や耳鳴りを伴うことがあります。
 主な疾患をいくつかご紹介します。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)

 これは、末梢性めまい疾患の中で最も多い疾患です。当院にも多くの患者さんが来院されています。何らかの原因により耳石器から剥がれた耳石が頭の向きによって三半規管の中を動くことにより引き起こされるめまい症で、頭を特定の位置にするとめまいが誘発されます。三半規管の中でも後半器官が原因で起こる事が最も多いといわれています。難聴などの蝸牛症状は伴いません。

 治療法としては当院でも行っているエプリー法(図3~6)などがあります。これは眼の動きを見ながら頭を動かして剥がれた耳石をもとの位置である耳石器に戻す方法になります。

メニエール病

 これは内リンパ水腫が原因とされているめまい疾患になります。難聴、耳鳴りなどの蝸牛症状を伴います。

前庭神経炎

 ウイルス感染などにより片側の前庭神経が障害を受けることによって起こるめまい症になります。難聴などの蝸牛症状は伴いません。

突発性難聴に伴うめまい

 突然おこる難聴で原因ははっきりとはしていないのですが耳の中の血流障害などが考えられています。蝸牛とともに前庭が障害を受けた場合にめまいを伴うことがあります。

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(2).中枢性めまい

 脳や神経系の疾患が原因で起こるもので、聴神経腫瘍、脳腫瘍、脳梗塞、脊髄小脳変性症などがあります。
 めまいの多くは末梢性のものといわれています。しかし中枢性めまいは疾患によっては生命にも関わることがあるため早急な対応が必要となります。
 めまいがどこの障害で起きているのかを把握し、鑑別診断をするためにも平衡機能検査が重要となってきます。

5.平衡機能検査の種類

 めまいを調べる検査には、大きく分けて、A:眼球の動きをみる検査と、B:身体のバランス(平衡機能)をみる検査があります。当院でも行っている検査をいくつかご紹介します。

A.眼球運動に関する検査

(図7) (図7)
(図8) (図8)
(図9) (図9)
(図10) (図10)
(図11) (図11)

注視眼振検査・自発眼振検査

正面・上下・左右方向をじっと見たとき(注視)と注視をしていない状態(暗所)での眼振の有無、程度を調べる検査になります(図7)

頭位眼振検査

 頭をゆっくりと左右前後に動かした際の眼振を調べる検査になります。座位と仰向けの状態を調べます(図8)

頭位変換眼振検査

 仰向けから座位になるなど急激に頭を動かした際の眼振を調べる検査になります。左右、正面方向の起床、臥床の状態を調べます(図9)
 これらの検査は疾患や障害部位によって異なる眼振や異常な眼球運動が現れるため、めまいの鑑別診断をする上で重要となります。

視刺激検査

 動いているもの(指標)を見たときの眼の動きをみる検査になり、次のような種類があります。

追跡眼球運動検査(ETT)

 目の前の動く指標の動きを捉えることができているかを調べる検査になります(図10)

視運動性眼振検査(OKN)

 連続して目の前を通過する指標を、次々と捉えることができているかを調べる検査になります(図11)

視運動性後眼振検査(OKAN)

 連続して目の前を通過する指標を見た後の、眼振反応をみる検査になります。
 これらの検査も障害部位によって眼の動きや眼振に違いが現れます。

温度刺激検査(カロリックテスト)

 これは外耳の温度を変化させて内耳の外側半規管に刺激を与えることによって誘発される眼振をみる検査になります。刺激には冷水や温水などが使用されます。眼振を誘発させるため、めまいを伴う検査となります。内耳障害がある場合は眼振反応が見られないこともあります。前庭機能の左右差を調べることで、障害側の推測を行っています。

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B.体平衡に関する検査

(図12) (図12)
(図13) (図13)

 これは平衡障害の有無や程度、障害部位などを調べる検査になります。

重心動揺検査

 直立姿勢での身体のゆらぎ(動揺)を調べる検査になります。重心動揺計という機械台に立ってもらい、開眼、閉眼状態での足底面の揺らぎを計測します(図12)。開眼時は一点を見つめてもらいます。またフワフワしたマットの上に立ってもらい検査をすることもあります。通常でも目を閉じると身体は揺らぎやすくなりますが、平衡障害のある場合それが大きくなります。また疾患によって動揺に違いがみられたりします。

書字検査

 これは文字を縦に書いてもらう検査となります。当院ではカタカナのアイウエオを使用しています。開眼状態と目隠しをした遮眼状態を調べ、その文字のずれ具合をみています。内耳の障害の場合文字が左右どちらかにずれていきます(図13)

 これらの検査のほかにも蝸牛状態を調べるための聴力検査や血圧の変動を見る検査などがあります。またMRIによる画像診断も鑑別診断をする上で重要となります。

 以上、講習会で学んだことからいくつかご紹介させていただきました。

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6.まとめ

(図14) (図14)

 めまいを診断し、治療、経過観察をしていくためには平衡機能検査が重要となります。しかし検査の中にはめまいを誘発するものもあり、患者さんにとっては決して気持ちの良いものとは言えません。私たち検査を行なう側はそのことを常に念頭に置き、患者さんが安全に、安心して検査に臨めるように十分な配慮と注意のもとに検査を行なう必要があります。また正確な検査結果を得るためにも正確な知識と技術が必要不可欠であることを実感しました。

 今回の講習会は実際関わっている検査の意義、重要性を再認識すると共に、学びを深める良い機会となりました。まだまだではありますが、最終日の試験ではなんとか無事修了証書をいただいて参りました(図14)

 今回の学びを今後に活かしていけるように努めていきたいと思います。

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7.最後に

 今回、個人的にはかなり久しぶりの大阪となりました。観光とまではいきませんでしたが、せっかくなので会場から比較的近かった大阪城を拝見し、たこ焼きを食べまして、私なりに大阪を体感してきました。
 それにしてもやっぱり夏の大阪は暑かったです。

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