3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

第77回聴力測定技術講習会レポート

看護課のじょっぱり 北川 悦子 看護課のじょっぱり 北川 悦子

 2013年2月4日(月)~8日(金)の5日間、第77回聴力測定技術講習会に参加させていただきました。

 この講習会は日本聴覚医学会によって毎年開催されており、今年は全国から119名(看護師・言語聴覚士が各19名、検査技師81名)が参加しました。
講義内容は、各病院の先生方による講義と実習、病院見学などでした。ただテキストを読むだけとは違い、講義を受けることで理解も一段と深まりましたし、参加した方々との交流もあり、とても有意義な研修でした。

 研修期間の東京は3月上旬の気温の日あり、はたまた真冬の日ありと、気温の差が多かった数日間でした。
#

はじめに

 耳の疾患や異常を診断・治療する上で、聴力測定はとても重要です。ただ聴こえるか聴こえないかを検査するだけでは、正確な測定はできません。どうして音がきこえるのか聴こえの仕組みを理解し、正確な測定をするための正しい知識と技術を学んできました。

 今回の講習で学んできたことをいくつかご紹介します。

1. 耳の構造と聴こえの仕組み

(図1) (図1)

 耳の構造は大きく三つにわけられます(図1)。

(1)外耳(耳介・外耳道)

 頭の両側に付いている耳と呼ばれる所から、鼓膜までの部分で、音を集めて鼓膜に伝える役目をしています。

#

(2)中耳(鼓膜・鼓室・耳管)

 鼓膜の内側は頭の骨の中にあり、空間になっています。この空間は鼓室と呼ばれていて、空気が入っています。
 鼓室の中には耳小骨と呼ばれる小さな三つの骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)があり、それぞれ関節で連結して、鼓室の中に浮かんでいるような形で存在しています。
 ツチ骨が鼓膜の内側に付着しており、アブミ骨の底が内耳(過牛)の前庭窓という部分に収まっています。
 外耳で集められた音が鼓膜を振動させ、ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨を伝わって内耳に届けられます。
 耳管は鼓室と鼻の奥の上咽頭をつなげる細い管です。
 この管は通常は閉じていますが、物を飲み込む時やあくびをする時に開いて、鼓室内の圧が外の圧と同じになるように調整しています。
 内外の圧が同じときに鼓膜の動きが最も良くなります。

(3)内耳(前庭・三半規管・過牛)

(図2) (図2)

 体のバランスをつかさどる(耳石器・三半規管)機能と、音を伝える(過牛管)機能を持っていて、めまいと聴こえが密接に関わっているところです。
 内耳はリンパ液で満たされています。
 音を伝える過牛管は、かたつむりのような形をしています(図2)。中には有毛細胞という感覚細胞が一万個以上あり、音の高低を区別し神経に伝え、神経から脳に送ります。
 これらの機能が正常に働くことによって、音を正確に認知し、コミニュケーションをとったり音楽を楽しむことができます。
 聴こえの仕組みのどこかに問題が生じると、聞こえが悪くなります。これを難聴といいます。

#

2.難聴の種類

 難聴はその原因がある部位によって、大きく三つにわけられます。

(1)伝音難聴

 外耳や中耳(音を伝える部に原因があるものを伝音難聴といいます。
 この難聴をきたす疾患として、耳垢塞栓・鼓膜穿孔・中耳炎などがあります。

(2)感音難聴

 内耳や神経(音を感じ取る部分)に原因があるものを感音難聴といいます。
 この難聴をきたす疾患として、騒音性難聴・メニエール病・老人性難聴・ストレスなどによる心因性難聴・腫瘍などがあります。

(3)混合性難聴

 伝音・感音の両方に原因があるものを混合性難聴といいます。

3.音について

 自然界には色々な音が存在しています。
 音は空気を振動させながら波のように伝わります。この空気の振動を音波といいます。

 音の高さで波の幅が違うため、音の高低を周波数(1秒間に波の周期が何回あるか)といいヘルツ(以下、Hz)という単位で表します。また、音が伝わる時には、その強弱によって、空気の圧力も変化します。これを音圧といい、デシベル(以下、dB)という単位で表します(図3)。

(図3) (図3)
#

4. 聴力検査・マスキング

 人の耳で聴こえる周波数の範囲は16Hzから2万Hzとされていますが、聴力検査では通常125Hzから8千Hzまでの7種類の周波数が使用されます。
 耳で聴くことができる最も小さな音の強さを聴覚閾値といい、この値を測定しているのが純音聴力検査です。
 7種類の各周波数ごとにどれ位の大きさから聴こえ始めるかを調べます。また、音を更に強くしていくと痛覚など聴覚以外の感覚が生じ始めます。この最も大きな音の強さを最大可聴閾値といいます。

(図4) (図4)
#

 人の耳の最大可聴閾値は120~130dBといわれています。純音聴力検査では最大120dBまで測定できます。
 純音聴力検査では通常、次の二種類の聴こえの検査をします(図4)。

(1)気導聴力検査

 耳にヘッドホンをつけて音を聞いた場合(図4上)。

(2)骨導聴力検査

 耳の後ろの骨にマイクのようなものをつけて音を聞いた場合(図4下)。
 骨にマイクをつけて音を聴かせるのは、外耳や中耳を通さず、骨を振動させることで内耳に直接音を伝えるためです。

 外耳や中耳に障害があり難聴がおこっている場合(伝音難聴)は、耳から伝わる時の聴力が悪くなっていますが、骨から伝わる時の聴力は正常です。
 内耳や神経に障害があり難聴がおこっている場合(感音難聴)は、耳から伝わる場合も骨から伝わる場合も、聴こえが悪くなります。
 この二種類の聴こえの違いが、障害部位の判断をする最初の目安となります。そのため正確に聴力を測定する必要があります。

 聴力測定をする際は、左右の聴力を片耳ずつ測定しますが、左右の聴力に差がある場合などは、聴こえにくい方の耳の検査音が、聴こえやすい反対側の耳で聴こえてしまうという現象(陰影聴取又は交差聴取といいます)が起きてしまいます。
 この現象を防ぐため、検査をしていない方の耳にその聴こえを遮る程度の大きさの雑音を流して検査をします。これをマスキングといいます。

 純音聴力検査では、検査を受ける方に聴こえたことを合図してもらいながら行うため、検査方法に対する理解や本人の集中力、静かな環境が必要です。検査を受ける方になるべく負担を掛けないよう、スムーズに検査を進めていきたいと思います(図5)。

(図5) (図5)
#

5. ティンパノメトリー

 鼓膜の動きを調べる検査です(図6)。耳に耳栓をして圧力を加え、その圧力の変化による鼓膜の動きから、鼓膜と中耳の状態を調べます。
 中耳炎などで中耳内に水や膿が溜まっていたり、耳管の機能が低下している時など、鼓膜の動きが悪くなります。他に耳小骨に障害があっても、鼓膜の動きに異常が出てきます。

(図6) (図6)
#

6. 耳音響放射(0AE)

 音を聞かせた時、過中の有毛細胞が放射する電気エネルギーを検知することで、聴こえを測る検査です。
 耳に耳栓をして音を聞かせ、反応を測ります。当院でも乳幼児を対象によく行っています。
 聴こえたという合図を必要としない検査で、痛みもなく短時間で終了しますが、泣いていると反射をとらえられないため、測定できないという問題があります。

7. 語音聴力検査

 言葉の聞き取り、聞き分けの能力を調べる検査です。
 音が認識出来ていても、それが何を意味しているのか判断できなければ意味がありません。
 その人が十分聞き取れる大きさの音から言葉を聞いてもらい、音を徐々に小さくしていき、正確に聞き取れているか判定します。
 この検査は補聴器を検討する時などに重要となります。
 これらの検査の他にも聴こえに関する検査は色々あります。検査をいろいろ組み合わせて、耳の疾患や難聴などの診断がされています。

8. 実習

 研修会場で一班6人のグループに分かれ、純音聴力検査・マスキング・語音聴力検査・ティンパノメトリーの検査のやり方を、互いに検査し合いました。約二百名の受講生の他に講師の先生、手伝いの講師の先生方、機械のメーカーの人達など大勢が一室に集まり、ものすごい雑音の中での検査であったため、受講生の検査値は結構悪いものでした。

9. 病院見学

(図7) (図7)
(図8) (図8)

 研修の4日目は一班8名のグループに分かれて、講義をしていただいた先生方等の病院に見学に行きました。
 私が行った病院は、横浜市にある昭和大学藤が丘病院でした(図7)。

 二人ひと組で外来の診察を見学したり、聴力検査の見学をしました。
 最終日は、社会保障等についての講義を受けた後試験を受け、なんとか無事に合格証書(図8)をいただき、5日間の研修は終了しました。20数年ぶりに学生に戻ったような数日間で、とても楽しかったです。

 最後に、このような勉強の機会を与えてくださった院長先生に、感謝申しあげます。

#