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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

三好耳鼻咽喉科クリニック開院20周年特別企画~難聴児問題の昔と今 7~三好 彰

ここでは、№221に引き続き院長が1975年、岩手医大在学中に作成した「難聴児の社会保障」というレポートをご紹介いたします。

「難聴児の社会保障(7)」

考案Ⅷ

 Y・S君は石鳥谷町に住んでいる為に、近くに専門医が居らず難聴の発見、治療が遅れた。又、教育機関も近くには十分なものが無く、就学期には非常に苦労した様である。

 それにしてもY・S君入学を引き受けるかわりに寄付してくれることをほのめかした小学校校長が居た、などということはほとんど信じられない位であるが、身障者手帳による乗車賃割引のことすら知らない運転手が居る様では、あながちあり得ないことではあるまい。

 盛岡に比してすらも岩手県の地方では、社会保障、福祉といったものに対する認識が薄いことを改めて知らされた思いである。そういった地方の難聴児に対して、いくら市内だけで手一杯であり学区外であるからといって、盛岡市教育委員会の取っている態度は冷たすぎるであろう。

 なるほど、現在の制度はそうなっているのかも知れないが、かつては盛岡市内の青山ですら学区外であったこと、現在では市内は全て学区内になったことなどを考えると決して改善して行けない制度ではないのだから、もう少しゆとりを持って考えてやって欲しいと思わざるを得ない。

 Ⅱで書いた様な、付添割引をいやがる運転手が余りに多いので、最近では母親は付添の場合にも全額を支払っているそうである。こういった無知な運転手に対して、しかしその無知を嘆いてばかりいても仕方の無いことである。雇用者に対しての役所側からの(個人からのでは限度がある。現にY・S君の母親も何度かバス会社の方に文句を言ったが、余り効果はなかったそうである)アピール等が、もっと具体的になされてもいいのではないだろうか。それにしても、そういった社会福祉の知識すらまともに持っていない様な運転手達が、「弱者救済」を唄ってストライキをやるのかと思うと滑稽なぐらいである。

 Ⅲは本文では省略したが、鉄道を利用しての通学等では、まわりの人の温かい思い遣りに支えられて、元気に通学しているそうである。障害に対して無理解な人達ばかりではない。ということはすばらしいことだと思う。

C、仙台における難聴児症例並びに問題点

 前項では盛岡における難聴児教育の問題点、難聴児の症例等を扱ったが、盛岡では専門医や診断・治療施設の不足あるいはそういったものの知名度の不足が問題を一層複雑にしていることが明らかになった。それでは、数年前からヒアリングセンターの建設等、難聴児の治療、教育に力をいれている仙台では、どんなことが問題になっているのだろうか。先に述べた様なアンケートなどで調べた結果をここでは扱うことにする。

a、ヒアリングセンターについて

 福祉がより良いものになる為には、役所側の努力ばかりではなく、組織化された住民側の声が必要であること、しかし日常生活に困難を感じていながらも身障者やその家族というものは、生きて行くのに精一杯で現状の改善等に対して意外に無関心であることは、前項で述べた。しかしそれでは誰が難聴者の意見をまとめ役所側、施設側への橋渡しとすれば良いのであろうか。

 仙台のヒアリングセンター建設に際して、中心となって各方面に働きかけたのが耳鼻科の一開業医であったことはその問いに対する最良の答えの一つであると考えられる。

 開業医であれば民官いずれにも偏することなく、しかも障害者の実情に詳しい為に、それなりの対策をとり得るからである。もちろん、だからといって開業医全てがそういったことをできるわけではなく、相当の専門的知識治療の経験等を有していなければならないだけに、そのまま盛岡でもまねをするわけにはいかないだろうが、可能性の一つとして検討してみるだけの価値は十分にあるものと考えられる。

 それではヒアリングセンターは仙台においてどの程度役に立っているのだろうか。盛岡と比較しながら、その利点を考えて行ってみたい。

 ヒアリングセンターの業務内容は次の通りである。

(i)一般検査・相談

 普通聴力検査、乳幼児聴力検査、言語検査、知能検査、精神発達検査、補聴器相談、教育相談等であり、ある程度、社会保障の説明等も行っている。

(ⅱ)検診

 三才児検診、仙台市立小学校1年生聴力検査、仙台市立小学校児童生徒精密聴力検査、人間ドック聴力検査、集団聴力検査等であり三才児検診の結果は表X(図5)に挙げられている通りである。

(図5) (図5)
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(ⅲ)聴能、言語訓練

 検診や検査を受けて異常の発見された者や、他からの紹介によって来所したり直接来所して異常のあると認められた者は週1~3回の訓練を受けられる。

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