3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

健康情報誌「わかさ」に、耳鳴りについての記事が掲載されました

慢性化した耳鳴りを脳に自然な音として慣らし 入眠時の妨げもないと音響療法が徐々に普及

健康情報誌「わかさ」に、耳鳴りについての記事が掲載されました。
本号では、雑誌に掲載された取材内容の前編を、ご紹介致します。

耳鳴りがあっても気にならなくなる

 六十代の女性のAさんは、十年近くメニエール病(内耳にリンパ液が過剰にたまり、めまいを引き起こす病気)の治療を受けていました。しかし、一年前から右耳に難聴が起こり、耳鳴りもひどくなってきたそうです。

 それまでに治療を受けていた病院では、「ほかに有効な治療はなく、耳鳴りとうまくつきあっていくしかありません」といわれたとのこと。とはいえ、しだいに強くなっていく耳鳴りに耐えられず、毎日がつらいと訴えて私たちのクリニックに転院してきました。

 実際に、耳鳴りや難聴そのものを完治させるのは困難で、現状では治療法の確立されていません。しかし、耳鳴りを脳に自然な音として順応させる訓練をすれば、四六時中鳴り響いていると感じる不快な音をやりすごせるようになり、日常生活の苦痛も軽減できます。

 その方法として、近年、耳鼻科の治療で徐々に取り入れられているのが、雑音や音楽を聞き流すことで耳鳴りから注意をそらす「音響療法」です。

特殊器具を使った音響療法で七~八割に有効

 ふだん私たちは、さまざまな音に囲まれて暮らしていますが、すべての音を意識しているわけではありません。

 脳は、無意識のうちに「重要ではない音」と「重要な音=注意しなければならない音」に聞き分けています。例えば、会話や危険を知らせる音などは重要な音としてとらえ、そのほかの音は無視してもいい音として意識に上がらないようにしているのです。

 ところが、耳鳴りがする人の脳では、耳鳴りを「重要で注意しなければいけない音」として拾ってしまいます。それを「重要ではない、無視していい音」と認識させて注意をそらすのが、音響療法です。

 以前、耳鼻科で行われていた音響療法の一つに、マスカ―療法がありました。これは補聴器型の機器(マスカ―)から耳鳴りが聞こえなくなるほど大きな雑音を数時間聞くことで、耳鳴りを遮断する治療法です。

 しかし、マスカ―療法は即効性が期待できるものの、効果は数分から数日と一時的です。しかも、現在では機器が国内で販売されていないため、マスカ―療法を行う病院は多くありません。

 一方、最近、普及しはじめている音響療法にTRT療法があります。TRT療法では、まずカウンセリングによって「耳鳴りは慣れることができる」ことと「耳鳴りに慣れるにはどうしたらいいか」を中心に説明を受けます。そのうえで、耳鳴りよりも小さくて心地のいい雑音が出る補聴器型の小型機器(TCI)を耳に装着して、耳鳴りに慣らしていくのです。

 TCIを一日に六~八時間ほど装着して過ごすと、三ヶ月後くらいから耳鳴りの苦痛が徐々に軽減されていき、一年以上が過ぎると七~八割の人になんらかの改善効果が現れます。

 そして、その効果はほぼ永続的に続くといわれていますが、TCI本体の購入は全額自己負担(約六万三〇〇〇円)になり、TRT療法を行う病院も限られているのが実情です。

自宅で手軽に行える簡易式の音響療法

 そこで、私たちのクリニックでは、患者さんが自宅でも簡単に行える音響療法として「音響セラピー」をすすめています。  音響セラピーとは、就寝前などのリラックスしているときに、かすかな音量でラジオ番組や音楽のCDをBGM(背景音)として聞き流す方法で、TRT療法と同じく、脳に耳鳴りを慣れさせるのが目的です。

 私たちの場合は、患者さんにほぼ月一回来院してもらい、話をうかがうとともに検査・診察も含めて音響セラピーを続けるためのサポートをしています。

 最初に紹介したAさんも音楽CDによる音響セラピーを試し、三ヶ月後には日中の耳鳴りがあまり気にならなくなり、四ヶ月を過ぎたころから寝つきもよくなったと報告してくれました。Aさんは現在でも音響セラピーを続けており、生活に支障が出ない程度まで耳鳴りは改善しています。

 このように、音響セラピーはスピーカー付きのオーディオ(CDデッキ)かラジオさえあれば、自宅でも簡単に取り組めます。次の記事では具体的なやり方を紹介します。耳鳴りに悩んでいる人は、ぜひ試してみてください。

#
#