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日本医学ジャーナリスト協会 特別講演 「医療・介護の課題と改革の方向」講師:厚生労働副大臣 秋葉 賢也 氏

日本医学ジャーナリスト協会 特別講演 「医療・介護の課題と改革の方向」

この度、医学ジャーナリスト協会(院長が幹事)主催の特別講演にて、院長が後援会長を務め2012年末の組閣にて厚生労働副大臣および復興副大臣となられました秋葉賢也氏をお招きして、今後の医療・介護についてご講演頂きました。

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自らも健康維持に努める

 秋葉賢也氏は地元仙台開催のハーフマラソンに出場されるなど、厚生労働副大臣として大変お忙しい中でも、積極的に健康づくり運動のPRに取り組んでおられます。
 初参加とは思えない力強い走りで杜の都を駆け抜けられ、見事完走した際には、「50歳を過ぎて初挑戦しても走ることが出来る。運動を始めようか迷っている人は自信を持って取り組んでほしい。」とコメントされました。

 現在、日本の平均寿命は、男性80歳、女性86歳、全体では83歳と世界最長水準で、1985年に世界一の長寿国となって以来、実に30年近くに亘って首位を維持してきました。
 WHO(世界保健機関)の統計を見ても、加盟国194ヶ国の平均値が73歳ということなので、日本は世界の平均と比べても10年長いことになります。

 このように日本人の平均寿命83歳というのは大変喜ばしいことですが、2010年に厚生労働省で発表しました「健康寿命」によると男性70歳、女性73歳を過ぎると、体の具合が芳しくない状態や、なんらかの病気を抱えている率がぐっと上がるというデータがあります。

 健康寿命とは、介護を受けたり、病気で寝たきりになったりせず、自立した健康な状態での長寿を目指そうという意味であり、本当の意味での長寿を目指すために、寿命と健康寿命の差をいかにして少なくしていくかが大切なのです。

 日本で収入格差があるのに世界最長水準の寿命なのは、諸外国から見ると不思議な事です。日本は収入に関係なく皆が同じ高度な医療を受けられることが平等とされていますが、アメリカでは高度な医療は富が豊かな人のためにあり、そうでない人は自分が支払える分の医療を受ける事こそ平等と言います。

表:年齢別の年間一人あたりの医療費(3割負担)
年  齢1人当たりの医療費(年間3割)
20歳~64歳約16万円
70歳~74歳約55万円
75歳以上約90万円
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 大けがや脳梗塞など日本ならすぐに救急車が駆け付けて、適切な病院へ搬送してもらえる状態です。国が変わると、目の前で苦しんでいようが、まず保険に加入しているか、医療費の支払い能力があるかの確認作業から始まるのですから、本当に恐ろしい事です。 アメリカでは、およそ5割の人が医療費の支払いが出来ず自己破産に追い込まれていますが、日本ではどんなに高額な先端医療を受けても、所得に応じて月の支払限度が低く抑えられています。

 このような、国民にとって大切な欠かすことの出来ない制度は、なんとしても守っていかなければならないし、より良い制度にしていくためにも、1人1人が健康な食事や運動を意識し継続する事で、ガンや心疾患などの生活習慣病に罹らないようが大切です。
 そうすることで医療費の負担を抑えることにも繋がるのです。

子供の健康の現状

 次に、現代の子供の健康状態についてですが、仙台市で整形外科の院長をされている先生のお話によると、昔は、転倒などで手足をすりむいたり、腕や脚を骨折して搬入される子供が多かったのに、現在では反射的に受け身をうまく取れないがために、なんと顔面から血を流して運ばれてくる子供が多いそうです。
 長年子供たちの状態を見ている先生もこれには嘆いておられると聞き、大変驚きました。

 もしかして、子供達の運動機能が相当低下しているのではないかということから、仙台市教育委員会協力の下、小学1年生から中学3年生までの運動機能の抽出検査をされたところ、以下の三項目が出来ないお子さんが多数見つかったとの事です。

  • (1) 肩を耳に付けるようなバンザイ
  • (2) 直立の状態から前屈で床に手をつける
  • (3) 踵を浮かせずにしゃがみこむ

 もし身近にこの三種類が出来ないお子さんがいたら要注意かも知れません。

 体が柔らかいはずの子供が、バンザイ・前屈・しゃがみこみを出来ないなんて、大変に驚きまして、バンザイが出来ない子供なんて、院長先生、本当にいるんですか? と聞き返してしまいました。
 お子さんにバンザイをして下さいと言うと、Yの字になってしまう子もいるそうで、肩甲骨は本来様々な方向に動くよう出来ていますが、背中の上の方をしっかりと伸ばして支えることができないと肩甲骨が動きにくくなり、腕全体の可動域も小さくなってしまうことから起こる現象なのだとか。

 しゃがみこみに関しては洋式トイレの普及が挙げられており、最近は大型商業施設だけでなく、駅などの公共機関でもお手洗が綺麗に整備されています。
 公共施設でも学校に至っては、和式トイレの存在すら知らず小学校に入学して使い方が分からなかったり、しゃがんだ状態を保てないなどが原因でお手洗いに行くことを我慢してしまい、大惨事になることも珍しくないのです。
 そういう事にならないように保育園や幼稚園では小学校入学前に和式トイレの練習をするよう保護者に伝えたり、学校でも徐々に洋式に切り換えているのです。

 そんな環境の変化もあり日常生活において「しゃがむ」という姿勢が必要なくなってきたことからの現象なのかも知れません。

 また、それに追い打ちをかけるように東日本大震災の影響で、宮城県・福島県では校庭や公園などのスペースは全て仮設住宅へと変わり果ててしまいました。
 こうした事態も重なりどんどん遊具が姿を消すのと反対に、ゲーム機などは日々進化し、外で元気に遊ぶこと自体が減って、いつの間にか関節や体が固まってしまうと危険を回避する能力が備わらなくなってしまうのだそうです。

 こういった状態が続くとゆくゆくは医療費の高騰に繋がっていくだろうと、大変深刻な状況と考え、直ぐに文部科学省に連絡し、バンザイ・前屈・しゃがみこみだけなら1人1分で終わるのだから、学校健診の時に是非取り入れて欲しいとお願いしました。
 ところが、現在の健診だけでさえ保護者からクレームが入るなどで、ものすごい時間を割かれているので、到底実行に移すのは難しい、という結論に至りました。

 現時点では、子供たちが今後こういった影響をなるべく受けなくて済むように、大型商業施設などの敷地を60ヶ所近く借りて遊具を設置したりするなど、子供の遊ぶ場所の確保にも努めております。

日本の医療機器の現状

 最後に、日本の成長戦略としても要の、医療機器や医薬品についてです。

 現在、医療機器は毎年6000億円の輸入超過で、医薬品に至っては1.3兆円~1.5兆円も輸入超過している状態です。
 医薬品に関しては、国内にも吸収・合併を繰り返し生き残った医薬品メーカーが380社近くあるが、世界のトップ10にも入れず伸び悩んでいる状態なのです。

 つい先ほども東京女子医大を訪問し、そこでは細胞シートでの再生医療の研究という、まさに医学と工学が連携した、最先端の研究が行なわれていました。
 日本の医療が世界の中で存在感を保っていくためには、「何より人づくりが大事」と、現場の先生方もおっしゃっていて、医療・工学・バイオそれぞれの研究が別々に行われたのでは、なかなかスピードアップ出来ないとのことでした。

 新薬を1つ開発するために約1000億円のお金が必要になるが、最近話題のiPS細胞などの再生医療を発展させていく方が少ない費用で研究出来るので、民間の会社と政府が協力し、積極的に実用化やその発展を図り、これからの医療分野の活性化に務めて参りたいと存じます。

 文責:秘書課 葛西 沙保里

懇親会にて 懇親会にて
院長(中)と秋葉副大臣(右) 院長(中)と秋葉副大臣(右)
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