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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

~シリーズ 学校健診その9~

 耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって30年余り。今回は昨年9月にfmいずみで放送された内容を紹介する。

An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

An.:
三好先生、前回は昔のヨーロッパにはブラック・ジャックは存在せず、それどころか外科医そのものがいなかったというお話を伺いました。
Dr.:
ヨーロッパには手塚治虫がいませんでしたから、ブラック・ジャックが存在しなかったのは分かりますけどね(笑)。昔の西洋医学には、外科という領域は存在しませんでした。
An.:
しかし出島の話題の際には、江戸時代の日本の医学は漢方主体で、いわば内科系。そこへシーボルトがやってきて、メスさばきも鮮やかに切開などの外科の技術を披露したと伺いました。なので西洋の医学は外科が主体だったんだろうと思っていましたが、江澤の勘違いだったんでしょうか?
Dr.:
前回も少し触れましたが、ヨーロッパの古くからいる内科医のドクターは、大学で医学を修め、分厚い書物の知識を脳みそに詰め込んで、ふんぞり返って診断し、厳かに薬を調合して処方するものでした。そして、彼らがメスを持つことはなかったんです。クリミア戦争が始まり、戦地で多くのけが人が出ました。抗生物質がなかった当時、大けがを放置すれば出血や感染などで死亡する恐れがありましたが、内科的処置しかできないドクターはこれらのけがに対応できませんでした。
An.:
昔のヨーロッパでは大戦争も少なくなかったと聞いていますが、けが人はまともな治療を受けられなかったんですか?
Dr.:
前回の放送でもお話ししましたが、けが人の切開や切断などの手術は理髪師、つまり床屋さんの仕事だったんです。
An.:
先生、それは本当なんですか?
Dr.:
今でも床屋さんの店の前には、シンボルとしてぐるぐると回るねじりん棒がありますよね。
An.:
はい、見たことがあります。
Dr.:
あのねじりん棒は、何色でしたっけ?
An.:
ええっと、確か赤と青と…そうそう白でした。
Dr.:
あれは何を意味しているかご存じですか?
An.:
え? あれには意味があるんですか?
Dr.:
あれこそが昔、床屋さんが外科医を兼ねていた名残なんです。赤色は、何を表しているでしょうか? 外科と関係があって、体をメスで切開したときに出てきますよ。
An.:
もしかして血液や血管ですか?
Dr.:
その通り。赤色は動脈を意味しています。それでは青色は?
An.:
静脈ですね!
Dr.:
江澤さん、座布団10枚です。それでは、白色は何でしょうか?
An.:
床屋さんが外科医の仕事をして、動脈や静脈と関係があるとしたら、もしかして治療に必要な包帯ではありませんか?
Dr.:
江澤さん、ハワイへご招待です。床屋さんは今でも外科医を担当していた、いにしえの看板を掲げ続けているんです。
An.:
へー。とてもびっくりしてしまいました。そんな歴史を表していたんですね。
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メスも扱う床屋のオペラ

セヴィーリアの理髪師 セヴィーリアの理髪師
Dr.:
床屋さんが外科医を兼ねていたその記録として、イタリアのオペラ作曲家ロッシーニの作品の中に「セヴィーリアの理髪師」というオペラがあります。
An.:
江澤も、その名前は聞いたことがあります。素晴らしい名作だという評判も聞きました。
Dr.:
その中には、主役のフィガロという床屋さんが、整髪やひげそりだけじゃなく、外科治療の一種である瀉血(しゃけつ)をしていたことについて描かれています。
An.:
瀉血とは?
Dr.:
血管を切開し、悪い血液を除去するという民間療法の一つです。
An.:
それが、オペラの中に出てくるんですね?
Dr.:
第1幕で主役のフィガロが登場するシーン。そこで歌われるのが「おいらは町のなんでも屋」という、有名なアリア(詠唱)のごく短いものです。「フィーガロ、フィガロ、フィガロ、フィーガロ」という歌ですよ。
An.:
聞いたことがあります!
Dr.:
その歌の中に「こちらではひげをそってくれ」という本来の床屋さんの業務だけでなく「メスもはさみも用意されている」といった外科医の業務を意味するフレーズが入っているんです。
An.:
フィガロは外科的な仕事もしていたんですね。
Dr.:
しかもこのオペラの登場人物には、フィガロとは全く別に、ドクトル・バルトロという内科医と思われる人物も含まれています。
An.:
じゃあ、やはり内科医は外科の仕事をしなかったんですね。
Dr.:
外科技術を習得するための解剖実習が困難だったのは、日本だけではなく西洋も同じだったんです。
An.:
そういえば幕末の日本でも、同じような歴史があったんですよね。
Dr.:
次回はそのお話です。お楽しみに。

~読者の声~

 ここでは、『げんき倶楽部杜人』編集部に寄せられた読者の声を、ご紹介させて頂きます。

57歳 男性 青葉区在住39歳 女性 青葉区在住
「三好耳鼻咽喉科クリニック」(泉区)の三好先生によるめまいの話は、身近な問題で参考になりました。 「3443さん通信」が面白く、耳が悪くないのに先生に会ってみたいと思っています。
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