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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

眩暈・めまい・メマイ……のお話(3) ロンドンで有名な病気 三好 彰

 「ロンドン」で有名になった病気がある。ロンドンの風土病ではない。良性発作性頭位めまい症(BPPV)という、めまいの1種である。
 なぜ「ロンドン」で有名かと言うと、ピンと来る方もおられるかも知れない。
 そう。なでしこジャパンの澤穂希選手が、ロンドン・オリンピックの直前にめまい発作を起こし、急遽帰国をすることになった、あの病気である。

 有名人が病気になると、自分もその病気かと心配になるのは、日本人の性らしい。
 東京オリンピックの年に、池田・元首相が下咽頭癌で亡くなったときには、「のどがおかしい」という患者が激増した。
 そのジンクスは今回のロンドン・オリンピックでも、再現された。めまいの患者が、突然増えたのである。

 もちろんめまいという病態は、さまざまの背景要因からなっている。めまいを自覚する病人が、とても不安になるのは良く判る。
 だけど今回増加しためまいは、やや性質が異なる。「澤選手と同じじゃないかと思って」、外来を受診するケースが少なくないのである。

 幸いBPPVは下咽頭癌ではない。多くは内耳の、左右どちらかの後半規管に耳石が紛れ込んでいるだけなので、エプリー法といういわばめまい体操みたいなことを、外来で実施するだけで楽になる。
 実際、救急車で朝一番に搬入された重症のめまい患者が、その場でなされたエプリー法によって、お昼頃には自分の足で立って帰る。そんな一見奇妙な光景が、当院では日常的なそれになっている。

『仙台市医師会報』No.582より 『仙台市医師会報』No.582より
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 願わくば、せっかくロンドン・オリンピックで有名になったこの病気の治療法。澤選手のエピソードと同じくらい知れ渡り、最短ルートで治癒を迎えられるよう、一般市民にも理解が広まってくれれば、と思う。