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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

~シリーズ 学校健診その10~

 耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって30年余り。今回は昨年9月にfmいずみで放送された内容を紹介する。

An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

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An.:
三好先生、前回は先生が学校健診をしている北海道白老町に、先生のご先祖様が蝦夷地警備の責任者として赴任していた幕末のころのお話でした。その時代、世界は激動していて、ウクライナのクリミア半島周辺でクリミア戦争が起こり、赤十字で有名なナイチンゲールが活躍していたんですよね。ただし、当時は医学が発達していなかったために、医師はけが人に対して極めて未熟な対応しかできなかった。なぜなら、そのころのお医者さんは内科が中心で、戦闘の負傷者に対する外科手術は床屋さんが担当していたから、と伺いました。
Dr.:
内科医が医学の中心だったのは、外科手術の基礎となる解剖学の知識が不十分だったからです。
An.:
江戸時代、同じように体の構造が分からなかった日本では漢方医学が主流だったと聞いたことがあります。しかし、長崎の出島にやって来たオランダ人の中にシーボルトといった西洋医学の名医がいて、見事なメスさばきを披露した。それを受けて、当時の日本人は西洋医学を「蘭方」と呼び、蘭方を学ぼうと日本中から長崎に人が集まった。そのようなお話だったと記憶しています。
Dr.:
その通り。江澤さん、相変わらずさえていますね。
An.:
私は、西洋医学では外科的な治療がとても発達していて「外科こそ世界の医学の主流だ」とされていたんだと思っていましたから。それに西洋医学が、もともとは内科主体だったという事実にもびっくりです。
Dr.:
戦争の負傷者の治療に外科の医療技術が必要になったから、戦場に出た床屋さんたちが切開や切断などの外科的手技を身に付けていったわけなんです。
An.:
その意味では、徳川幕府の鎖国政策は国内で戦争が発生する可能性を限りなくゼロに近づけたんですから、外科的医学の発展は難しかったということがいえそうですね。
Dr.:
江澤さん、いいところに気が付きましたね。日本で外科が発展したのは戊辰戦争の時ですが、外科の進歩のためには十分な解剖学の知識が必要でした。
An.:
解剖学を抜きにメスを持つのは、地図を見ずに未知の土地を走るようなものですよね。先生、もしかしてこの後は「解体新書」の話題になるのではありませんか?
Dr.:
さすが1を聞いて10を知る江澤さん。その通りです。
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日本の外科学変えた解体新書

Dr.:
解体新書は、ドイツ人医師の医学書をオランダ語訳した「ターヘル・アナトミア」を基に、日本の蘭学者たちが日本語に翻訳した医学書です。これを機に正確な解剖学の知識が日本で広まり始め、本格的に外科学が普及していきました。ですから、解剖学が未発達だった時期にシーボルトが開いていた医学塾の「鳴滝塾」では系統的な医学の講義はされていなかった、というかできなかったんです。
An.:
へー。そうだったんですか。
Dr.:
系統的な医学の講義はありませんでしたが、病人の症状を見て病名を付け、対処法を教えてその技術を伝えるというとても臨床的な実地訓練が学べる場だったといわれています。
An.:
臨床医学は、現場ですぐに役に立つ医療技術の集大成ですものね。日本の医師らにとって、シーボルトの指導はとてもためになったでしょうね。
Dr.:
しかし、例えば外国語を勉強する場合でも、日常会話から覚えるのとABCから学ぶのとでは違います。日常会話が成り立つぐらい話せるのも重要ですが、シェークスピアの作品に親しめるぐらいの読解力があれば達人の域といえます。
An.:
医学でもそれは同じで、日常的なけがを治療したり一般的な診療を行ったりするのと、その背景にある人間の体そのものを理解しているのとでは、かなりレベルが違うということですね。
Dr.:
さすが江澤さん。幕末の日本における西洋医学の導入の本質を鋭く指摘していますね。そして、平和だった日本が江戸時代に再び戦争に直面したのが、皆さんご存じ、戊辰戦争です。
An.:
三好先生の、ご先祖の時代なんですね?
Dr.:
それまでの時代にはなかった銃が頻繁に戦闘に使用されるようになり、負傷兵のけがは刀による切り傷ではなく、銃弾によるものになりました。当時の医師らは、軍医としてけがの治療に携わりますが、それまでの治療法では銃弾の傷は治りません。人体に食い込んだ銃弾を摘出しなければ、状態は悪化する一方なんです。
An.:
それには、切開や切断などの外科的知識が必要ですね。
Dr.:
当時の日本には、オペラ「セヴィーリアの理髪師」の中で外科業務に当たっていた理髪師のフィガロのような人はいなかったんです(笑)。お話は次回に続きます。
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~読者の声~

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 ここでは、『げんき倶楽部杜人』編集部に寄せられた読者の声を、ご紹介させて頂きます。

60歳 男性 柴田町在住39歳 女性 青葉区在住
めまいについての話を読み、友人で長い間めまいで悩んでいる人がいるので、げんき倶楽部が参考になればと思い差し上げました。  いつも3443通信を楽しく読んでいます。